旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
ヒル魔が根城にしていたのは大学近くのマンションだった。
本日は進入部員の歓迎会だ、と騒ぐ先輩連中から二人は抜け出してここへとやってきた。
まもりは逡巡したが、バイトの話と言われると強く出られない。
部活の日程を見ていたら望んだようなバイトには出られないことがすぐわかったから。
校舎からさほど離れていない位置の高層マンションにまもりは瞬く。
「ここ?」
「ここ」
エレベーターで最上階へ。その間、何か変な仕掛けが出たりしてこない。
「・・・なんだか普通ね」
やや拍子抜けして案内された室内に足を踏み入れると。
そこは雑多な物にあふれていた。
高校を卒業してからすぐここに来たとしても、そんなたいした時間は経っていない。
「・・・やっぱりヒル魔くんの部屋ね」
「ア?」
「カジノになる前の部室もすごい状態だったじゃない? やっぱり掃除苦手なのね」
「だからハウスキーパーで雇ってやるっつったろ」
彼もそれは否定はしなかった。
まもりはとりあえず目に付いた本を積み上げる。それ以外にも汚れ物やら食器やらがいくつも山になっていて、これは片付け甲斐がありそうだ。
「バイト代は日当×日数で計算、食料品や消耗品購入の実費は俺が出す。テメェは掃除を中心に家事一切を担う」
「日当はいくら?」
ヒル魔が提示した額は、自分が働いて得ようと思っていた額より少なかった。
まもりは眉を寄せて思案する。
「・・・作った料理とか、余ったら貰って帰っていい?」
それなら食費も浮くし、バイト代と差し引きしてどうにかやっていけるだろう、と踏んだのだ。
「それならここで一緒に食ってけ」
「え」
「光熱費やら水道費やら考えればそっちの方が得だろ」
「え・・・いいの?」
「なんならここに住むか?」
部屋なら余ってるぞ、ととんでもないことを言われて、まもりは飛び上がって後ずさる。
「いやいやいやいや、そんなこと出来ません!!」
「ホー」
あからさまなからかいだろうとにらみつけたが、ヒル魔は平然としたままだった。
結局、まもりが危惧したとおり、ほとんど学校と自宅とヒル魔の部屋との行き来だけで日々が過ぎる生活になってしまった。
部活で走り回るヒル魔たちに比べたら運動量は少ないが、色々とこまごました仕事をこなすのと、慣れない環境にストレスも溜まる。
「んもー! また脱いだら脱ぎっぱなし!」
部活を終えてヒル魔の部屋を訪れたら、そこには脱ぎ散らかされた衣服。
些細なこととはいえほぼ毎日ともなれば、いかに忍耐力のあるまもりとはいえ苛立ちは増す。
「せめて洗濯籠に入れておいてくれたらいいのに!」
「随分とでかい独り言デスネ」
足音も立てず、ヒル魔が傍らに立つ。
「誰かさんが聞いてくれたらそれでいいんですけどねー」
嫌味ったらしくそう言って、まもりは手早く洗濯機を回し、食事の準備に取り掛かる。
キッチンに足を踏み入れたらば、ヒル魔もついてきた。
けれど何をするわけでもないようだ。
「どんな小さなことでも積み重なると面倒なのよ!」
「ホー」
「ヒル魔くんと結婚する人は大変よ、きっと。毎日イライラしちゃって」
「ホホー」
「ああでも、気に入った人は大事にするからそうでもないかしら」
「・・・ホホー」
事前に作っておいた味噌漬けのタッパーを取り出す。
そこに漬け込んだ肉の味噌を洗い流し、キッチンペーパーで拭き取る。
付け合せの野菜を切って肉と共にフライパンに並べると、いい香りが立ち上る。
強火で焼き目をつけてから酒を振り、フライパンの蓋をして弱火にする。
「・・・で、どうしたの。何か用?」
一連の作業をしている間も、ヒル魔はじっとこちらをうかがっていて自室に戻ろうとしない。
「コーヒーでも淹れる?」
「おー」
その言葉にやっと踵を返してキッチンから離れたヒル魔に、まもりは苛立ちの篭ったため息をついた。
<続>
本日は進入部員の歓迎会だ、と騒ぐ先輩連中から二人は抜け出してここへとやってきた。
まもりは逡巡したが、バイトの話と言われると強く出られない。
部活の日程を見ていたら望んだようなバイトには出られないことがすぐわかったから。
校舎からさほど離れていない位置の高層マンションにまもりは瞬く。
「ここ?」
「ここ」
エレベーターで最上階へ。その間、何か変な仕掛けが出たりしてこない。
「・・・なんだか普通ね」
やや拍子抜けして案内された室内に足を踏み入れると。
そこは雑多な物にあふれていた。
高校を卒業してからすぐここに来たとしても、そんなたいした時間は経っていない。
「・・・やっぱりヒル魔くんの部屋ね」
「ア?」
「カジノになる前の部室もすごい状態だったじゃない? やっぱり掃除苦手なのね」
「だからハウスキーパーで雇ってやるっつったろ」
彼もそれは否定はしなかった。
まもりはとりあえず目に付いた本を積み上げる。それ以外にも汚れ物やら食器やらがいくつも山になっていて、これは片付け甲斐がありそうだ。
「バイト代は日当×日数で計算、食料品や消耗品購入の実費は俺が出す。テメェは掃除を中心に家事一切を担う」
「日当はいくら?」
ヒル魔が提示した額は、自分が働いて得ようと思っていた額より少なかった。
まもりは眉を寄せて思案する。
「・・・作った料理とか、余ったら貰って帰っていい?」
それなら食費も浮くし、バイト代と差し引きしてどうにかやっていけるだろう、と踏んだのだ。
「それならここで一緒に食ってけ」
「え」
「光熱費やら水道費やら考えればそっちの方が得だろ」
「え・・・いいの?」
「なんならここに住むか?」
部屋なら余ってるぞ、ととんでもないことを言われて、まもりは飛び上がって後ずさる。
「いやいやいやいや、そんなこと出来ません!!」
「ホー」
あからさまなからかいだろうとにらみつけたが、ヒル魔は平然としたままだった。
結局、まもりが危惧したとおり、ほとんど学校と自宅とヒル魔の部屋との行き来だけで日々が過ぎる生活になってしまった。
部活で走り回るヒル魔たちに比べたら運動量は少ないが、色々とこまごました仕事をこなすのと、慣れない環境にストレスも溜まる。
「んもー! また脱いだら脱ぎっぱなし!」
部活を終えてヒル魔の部屋を訪れたら、そこには脱ぎ散らかされた衣服。
些細なこととはいえほぼ毎日ともなれば、いかに忍耐力のあるまもりとはいえ苛立ちは増す。
「せめて洗濯籠に入れておいてくれたらいいのに!」
「随分とでかい独り言デスネ」
足音も立てず、ヒル魔が傍らに立つ。
「誰かさんが聞いてくれたらそれでいいんですけどねー」
嫌味ったらしくそう言って、まもりは手早く洗濯機を回し、食事の準備に取り掛かる。
キッチンに足を踏み入れたらば、ヒル魔もついてきた。
けれど何をするわけでもないようだ。
「どんな小さなことでも積み重なると面倒なのよ!」
「ホー」
「ヒル魔くんと結婚する人は大変よ、きっと。毎日イライラしちゃって」
「ホホー」
「ああでも、気に入った人は大事にするからそうでもないかしら」
「・・・ホホー」
事前に作っておいた味噌漬けのタッパーを取り出す。
そこに漬け込んだ肉の味噌を洗い流し、キッチンペーパーで拭き取る。
付け合せの野菜を切って肉と共にフライパンに並べると、いい香りが立ち上る。
強火で焼き目をつけてから酒を振り、フライパンの蓋をして弱火にする。
「・・・で、どうしたの。何か用?」
一連の作業をしている間も、ヒル魔はじっとこちらをうかがっていて自室に戻ろうとしない。
「コーヒーでも淹れる?」
「おー」
その言葉にやっと踵を返してキッチンから離れたヒル魔に、まもりは苛立ちの篭ったため息をついた。
<続>
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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