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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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推定未来

(ヒルまも未来話)
※どのシリーズにも属するようなしないような。


+ + + + + + + + + +
まもりの目の前に差し出されたのは、古びた写真だった。
「うっわぁああ!! かわいい!!」
シュークリームを見たときばりの歓声を上げて、まもりはその写真に食いついた。
「ンなモン見てなにが楽しいんだか」
「楽しいわよ! うわあ髪の毛黒い!」
まもりが見ているのはヒル魔の幼少の頃の写真だ。というか、まだ生まれたばかりの頃の。
おくるみに包まれた姿は今の彼からは想像も出来ないほど小さく弱弱しく、そうしてかわいらしかった。
「耳はこのころから尖ってたのね」
「そうそう形変わらねぇだろ、耳なんて」
「そっか。そうよね」
まもりはいちいち感心しつつ、時折ヒル魔と写真を見比べる。
幼い頃の彼と、今の彼と。
今も変わらない部分と、変わってしまった部分を探すかのように。
「ヒル魔くんの髪、やっぱり黒なのね。ねえ、戻さないの?」
「今更戻す気はねぇな」
まもりはヒル魔の髪に触れる。あれだけ土埃や汗や泥にまみれ、炎天下に晒されていても不思議と柔らかい。
こまめに美容院に通わないとこれだけの金髪を保てないから、きっとこれは美容師の努力の賜物だろう。
「指、このころから長かった?」
「サアネ」
握りこんだ幼い手は指先の様子を伝えない。
けれど輪ゴムでくくったようなぷにぷにした節の手足を見るだけで勝手に目じりが下がってしまう。
「いいなあ、かわいいなあ・・・抱っこしたい~!!」
まもりがヒル魔の写真にあまりに食いつくので、彼はひょいとその写真を取り上げてしまった。
「あん! ちょっと、もっと見せてよ!」
「煩ぇ」
ヒル魔は嫌そうにその写真をしまいこんだ。
「なんで?」
「本物が目の前にいるんだからそんな声出すな」
「本物、って・・・」
まもりは目の前の金髪悪魔をしげしげと見つめ、それから声を上げて笑った。
「だ、だって! 今のヒル魔くんとは全然違うじゃない!」
判りやすく渋い顔をする彼に、まもりの笑いは収まらない。
「でも、そんな状態で大丈夫?」
「ア?」
まもりは自らの腹を撫でた。
そこは、月を経るたびに次第に大きく満ちていく。
今はさほど目立たないけれど、確実に数ヵ月後には。
「本物が目の前に現れるのよ?」
性別なんてまだわからないし、どちらに似るかは判らない。
丁度よく混ざるかもしれないし、案外祖父母に似て自分たちには似なかったりするかもしれない。
けれど、数ヵ月後には今見た写真のような赤ちゃんが生まれ出てくるのだ。
「私、きっと夢中になるわ。そうしたらどうするの?」
それにヒル魔は片眉をぴんと上げた。
「そりゃ問題ねぇ」
腕を伸ばし、まもりを抱き込む。間違っても腹を圧迫しないように、優しく。
労わりの満ちた腕に、まもりは瞳を細める。
「どっちも俺のもんだ。自分のもんに嫉妬するかよ」
「あら。写真は違うの?」
「当たり前だろ」
振り返ったり戻ったりすることの出来ない写真の過去と、これから生まれてくる子供との未来と。
比較なんてするだけ野暮だ。
未来に思いをはせるのはかまわないが、過去に思い入れをもたれてもどうしようもないから。
そもそもヒル魔がまもりに写真を見せた理由からして、子供の頃の自分をかわいがって欲しい、というわけではない。
「テメェが俺に似たガキなんて想像つかねぇっつーから見せただけだ」
「うん、ヒル魔くんに似ててもあれなら安心ね」
どっちに似ても怖くないわ、という言葉に。
「ソリャヨカッタ」
わざとらしい片言で応じれば、ありがとうと言う優しい笑顔。
当たり前のようにまもりがヒル魔の腕にいて、互いの血を分けた子供に恵まれて。
「ねぇ。私、ヒル魔くんと結婚してよかったわ」
「ホー。それはそれは奇遇デスネ」
俺も今丁度そう思ったところだ、と。
呟いてヒル魔は笑みにゆるくカーブを描いた唇に同じような己のそれを触れ合わせた。

***
某所の企画に提出しようとして書いてみたはいいけど、なんだか趣旨が違ったなと思って提出を見合わせた作品その1。まだボツにしたのが結構あるのでちょいちょい出そうと思ってます。サルベージサルベージ。
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