旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
何組もの人たちを見てきた。
一目見てもうだめだと感じる二人もいれば。
大丈夫、絶対大丈夫と思える人もいる。
人の少ない、平日の午後。
間延びした職員の呼び声に、やってくる人々の手にはいろんな書類。
揺り籠から墓場まで、という言葉のとおり。
ここは人々の人生の節目に立ち会う場所。
そうして、人々の人生の縮図がここにはある。
渡される書類を一度捲ればそこには僅か数行に凝縮された人生が踊っているのだ。
その合間にある世界を思う。
言葉にならない人生がそこかしこに犇いている。
けれどそれはあくまで仕事。
一生に一度と心をときめかせる人々には悪いけれど、こちらは淡々と働くばかりなのだ。
と。
次の番号を呼んだ瞬間。
鮮やかな色彩が目の前に現れた。
金色と茶色。
「お願いします」
涼やかな声、柔らかな微笑みを浮かべた女。
その隣で毒々しく佇む男。
一瞬、息を呑んだ。
それは恐怖などではなく。
「・・・婚姻届ですね。戸籍謄本か抄本はお持ちでしょうか?」
勤めて平坦であろうとする声は、予想外に滲んだ。
終業後、フロアにはまばらに人が残っている。
ふと目に付き、書類が入っているフォルダを持ち上げた。
そこには昼間に受けたあの二人の書類が挟まっている。
同僚が気づいて声を掛けてきた。
「どうしたの」
「ああ、ほら今日の」
覗き込んで、同僚は声を上げる。
「あー、あの二人ね」
特徴的な字の男は『蛭魔妖一』、まるでお手本のように美しい字の女は『姉崎まもり』。
どちらも同じ年。
「あの二人、すごかった」
「どうすごかったの?」
「うーん・・・説明が難しいけど」
外見がどうとか、口調がどうとか、そういう問題じゃなかった。
見た目だけで言えば女は近年まれに見るくらいの美女だった。
色素が薄く、髪は赤茶で瞳は青。人工的な色合いではなかったから、天然なのだろう。
見る人全てが癒されるような、優しさも滲んでいて素敵だった。
男は金髪を逆立ててピアスという外見だったが、粗野な印象のない、随分とまっとうな『人間』だと思えた。
怖そうな外見を装っているが、見た目は恐怖の対象にはならない。
まっとうな格好をしている悪魔のほうが数多いのだから。
二人と時折絡んだ視線は、落ち着いていてとても深かった。
そうして、そんな二人が並んでいたら。
本当に、なんと言うべきか。
「一生間違いなく一緒にいるんだな、って思えた」
同僚は目を丸くする。
「そんな人、滅多にいないじゃない」
「うん。十年見てて初めてかな」
「そりゃすごい」
こんな仕事をしていれば、様々な人生模様を垣間見る。
ごく普通に、一生涯を寄り添う夫婦の少なさに愕然としたのも最初のうちだけ。
今では普通ということの難しさをよくよく知るようになった。
だから、極彩色の未来が約束された二人なんて見る機会はほぼゼロに近いのだ。
「以上で受付は終了です。ご結婚おめでとうございます」
あなたたちは間違いなく幸せになれる、そう断言できる。
仕事を忘れ、声が歓喜に滲んだのは、本当に久しぶりだった。
***
婚姻届を受付した人視点。これも某所に提出しようと(以下略)。
ひねくれすぎてる気がして却下。サルベージサルベージ。
一目見てもうだめだと感じる二人もいれば。
大丈夫、絶対大丈夫と思える人もいる。
人の少ない、平日の午後。
間延びした職員の呼び声に、やってくる人々の手にはいろんな書類。
揺り籠から墓場まで、という言葉のとおり。
ここは人々の人生の節目に立ち会う場所。
そうして、人々の人生の縮図がここにはある。
渡される書類を一度捲ればそこには僅か数行に凝縮された人生が踊っているのだ。
その合間にある世界を思う。
言葉にならない人生がそこかしこに犇いている。
けれどそれはあくまで仕事。
一生に一度と心をときめかせる人々には悪いけれど、こちらは淡々と働くばかりなのだ。
と。
次の番号を呼んだ瞬間。
鮮やかな色彩が目の前に現れた。
金色と茶色。
「お願いします」
涼やかな声、柔らかな微笑みを浮かべた女。
その隣で毒々しく佇む男。
一瞬、息を呑んだ。
それは恐怖などではなく。
「・・・婚姻届ですね。戸籍謄本か抄本はお持ちでしょうか?」
勤めて平坦であろうとする声は、予想外に滲んだ。
終業後、フロアにはまばらに人が残っている。
ふと目に付き、書類が入っているフォルダを持ち上げた。
そこには昼間に受けたあの二人の書類が挟まっている。
同僚が気づいて声を掛けてきた。
「どうしたの」
「ああ、ほら今日の」
覗き込んで、同僚は声を上げる。
「あー、あの二人ね」
特徴的な字の男は『蛭魔妖一』、まるでお手本のように美しい字の女は『姉崎まもり』。
どちらも同じ年。
「あの二人、すごかった」
「どうすごかったの?」
「うーん・・・説明が難しいけど」
外見がどうとか、口調がどうとか、そういう問題じゃなかった。
見た目だけで言えば女は近年まれに見るくらいの美女だった。
色素が薄く、髪は赤茶で瞳は青。人工的な色合いではなかったから、天然なのだろう。
見る人全てが癒されるような、優しさも滲んでいて素敵だった。
男は金髪を逆立ててピアスという外見だったが、粗野な印象のない、随分とまっとうな『人間』だと思えた。
怖そうな外見を装っているが、見た目は恐怖の対象にはならない。
まっとうな格好をしている悪魔のほうが数多いのだから。
二人と時折絡んだ視線は、落ち着いていてとても深かった。
そうして、そんな二人が並んでいたら。
本当に、なんと言うべきか。
「一生間違いなく一緒にいるんだな、って思えた」
同僚は目を丸くする。
「そんな人、滅多にいないじゃない」
「うん。十年見てて初めてかな」
「そりゃすごい」
こんな仕事をしていれば、様々な人生模様を垣間見る。
ごく普通に、一生涯を寄り添う夫婦の少なさに愕然としたのも最初のうちだけ。
今では普通ということの難しさをよくよく知るようになった。
だから、極彩色の未来が約束された二人なんて見る機会はほぼゼロに近いのだ。
「以上で受付は終了です。ご結婚おめでとうございます」
あなたたちは間違いなく幸せになれる、そう断言できる。
仕事を忘れ、声が歓喜に滲んだのは、本当に久しぶりだった。
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ひねくれすぎてる気がして却下。サルベージサルベージ。
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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