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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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あざやかにキスを(上)

(ヒルまも未来)
※どのシリーズにもあり得そうななさそうな(曖昧)


+ + + + + + + + + +
ずうん、と重くのしかかられるような苦痛にうめく。
肌が刺激を厭ってぴりぴりとしている。
この体を覆うのは肌触りが気に入って買ったタオルケットのはずなのに。
舌が腫れたかのようにしびれ、普段なら気にならないような匂いが気に掛かる。
気分もささくれ立ってひどく苛立つ。
「うう・・・」
唸るような声に応じるように扉が開いた。
こちらを伺うのはヒル魔。
いつまで経っても部屋から出てこないことを不審に思ったようだ。
「姉崎」
逆光になったシルエットばかりが際立つ。
眩しさにまもりは眉をひそめ、タオルケットを頭から被って彼に背を向ける。
「来ないで」
声も尖る。タオルケット越しにくぐもった声であっても間違いなく彼の耳に届いただろう。
けれど扉が閉まる音がしない。
それどころか、いつの間にやら近寄ってタオルケットを剥ぐ手。
「やっ」
「いくら調子悪いっつったって、少しは飯喰え」
「嫌」
まもりは手負いの獣のように張り詰めた空気を纏ってヒル魔を睨む。
普段からは想像も出来ないようなその機嫌の悪さに、さしもの彼も嘆息するしかない。
「ったく、毎月毎月・・・」
「嫌なら見なきゃいいでしょ」
口を利くのも億劫だ、とまもりは再びタオルケットにくるまってベッドに戻る。
「女なのよ、仕方ないの」
腹が重く、腰が痛く、頭も痛い。
どろりとした血が胎内から湧き出てあふれる感触が気色悪くてたまらない。
「高校の頃はンな調子じゃなかったろうが」
「年とると段々そうなるの!」
イライラする。
ひどく気分が悪かった。
「もう、煩い!! 出て行って!!」
まもりはベッドの上にあったロケットベアのぬいぐるみを掴んで闇雲に投げる。
「・・・チッ」
ヒル魔は舌打ちするとわざと足音を立てて室内から姿を消した。


年齢を重ねるごとに段々と生理が重くなるようになった。
起き上がれないほどになることは滅多にないが、今回は前回より遅れて来たせいでひどく重かった。
ふと目が覚めると、時刻はもう夕刻だった。
いくらなんでも寝すぎだ、とも思うが、外を見て納得する。
雨が降っていた。こうなるとだるさは倍増する。
まもりは不機嫌に眉を寄せたまま、のろりと体を起こす。
喉が渇いていた。腹はそう減ってない。
体がべとついてたまらない。シャワーが浴びたかった。
着替えを手に扉を開ける。それに気づいて、ヒル魔がぴんと眉を上げた。
「ア? 目ェ覚めたか」
「・・・ううん」
寝ていたはずなのに疲れ果てた様子のまもりに、ヒル魔は眉を寄せる。
「飯食え」
「食べたくないの。・・・ごめん、今日は何か出前でも取って・・・」
まもりはふらふらとシンクに近寄り、コップに水を満たす。
それを一気に飲み干すとグラスを残し、何か言いたげなヒル魔を残してバスルームへと向かった。


熱めのシャワーで目を覚まし、ほんの少し気分が回復する。
何か軽いものであれば口に出来るだろうか、と考えるがどうにも食べたいものが浮かばない。
着替えてリビングに顔を出せば、ヒル魔はそこでパソコンをいじっていた。
「ヒル魔くん、ご飯は?」
「適当に食った。それよりもテメェだ」
再三食べろと言うのは、昨日からろくに食べてない自分を心配しているからだと頭では理解している。
けれど食欲も食べたいものもないのに口に入れられない、とまもりは困る。
そんな様子の彼女に、ヒル魔は立ち上がり、冷蔵庫から何かを取り出した。
「え」
テーブルに置かれたのは、桃缶。
昔ながらの黄色い桃が半分に割られた状態でシロップ漬にされている、あの缶詰だ。
「これなら食えるだろ」
「・・・うん」
缶に手を伸ばしたまもりを制し、ヒル魔はどこからともなく取り出した缶きりでキュコキュコと音を立てて蓋を開ける。
缶切りとヒル魔、なんて似合わない取り合わせ。
今時ぱこんと開くタイプではないのか、と思いながらその様子を眺める。
それはまもりがまだ幼い頃、調子の悪いときに決まって出されるデザートだった。


<続>
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