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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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橙に滲む夏(2)



+ + + + + + + + + +
そこにはさらさらと流れるように書かれた文字が躍っていて、まもりには判読が難しい。
「なんて書いてあるの?」
「祭り」
「え」
「あいつの神社で祭りやるんだとよ」
しかも今日だ、とヒル魔は呟く。
「え・・・」
その言葉にまもりは記憶を辿る。
そうだ、以前人里へ降りたとき、ヒル魔は祭りともなれば人出がもっとすごいと言っていた。
「人里では夏祭りといって、大変な賑わいになるんです。花火も上がるんですよ」
雪光の補足に、まもりは小首を傾げる。
「はなび?」
「テメェ見たこと・・・ねぇんだな」
当然か、とヒル魔と雪光は視線を交わす。
『西』にも花火はあるが、彼女の住む場所は森が深く、花火が近隣の町で上がったとしても見ることは難しかっただろう。
そうそう毎日夜空を見上げるわけでもなし、気づく可能性は限りなく低かった。
「花火のほかに夜店もあって、色々賑やかなんですよ」
夜の人里も綺麗ですよ、と言われ、まもりの瞳が輝く。
けれど神社、という響きにまもりはちら、とヒル魔を見た。
「ア?」
「・・・ヒル魔くん、神社には入れないんでしょ?」
それにヒル魔はぴんと片眉を上げる。
「境内に入れねぇだけで、祭りには行ける」
「そうなの?」
「祭りは神社の中だけでやってるわけじゃねぇんだよ」
「ふうん・・・」
色々考えをめぐらせても結局は想像でしかない。
「丁度いいじゃないですか。浴衣もご用意なさったのだし、お二人で行かれては」
雪光の提案に、まもりは伺うようにヒル魔を見上げる。
彼の口角がにやりと上がったので、まもりは嬉々として自らの浴衣を取りに向かった。


浴衣を着てヒル魔の元に戻る。
彼は既に人に変じていて、まもりにもふっと息を吹きかけた。
あっという間に髪と瞳の色が変わる。
「むこうは暗くて人も多いですから、気をつけてくださいね」
「わかったわ」
「夜店には色々食べ物のお店もありますから、楽しんでらしてくださいね」
「はーい!」
まるで子供に言い聞かせる母親の口調で雪光はまもりに注意事項を述べる。
殊勝な表情で頷いて聞いているが、いざ現地に着いたら気分が高揚しすぎてしまうのではないか、と雪光は心配する。
その様子を見ていたヒル魔はちらりと雪光を見る。
「人に押されて境内に入っちまったら糞生真面目が迎えに行くまで動くなよ」
「うん」
「いざとなったらケルベロスを出せ」
「え、人里なのに?」
「非常事態なら仕方ねぇからな」
「・・・?」
一体何をそんなに警戒するのだろうか。
まもりは首を傾げるが、雪光もそれ以上は煩く言わず、二人を送り出した。
「お気をつけて行ってらっしゃいませ」


<続>
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