旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
まもりは最後の糸を切る。そうして、今しがたまで縫っていたそれをぱっと広げた。
「どうでしょう?」
それをまじまじと見つめて、雪女のメグは笑みを浮かべた。
「うん、いいじゃないかい」
「やった! ありがとうございます!」
まもりは満面の笑みを浮かべ、ぺこりと頭を下げる。
メグは悠然と煙草をふかしている。
この部屋は相変わらず、随分と寒い。
雪女であるメグとまもりはそのままだと同じ空間に居続けることは難しい。
けれど今は。
「ケルベロスもありがとね」
ケン、と鳴くケルベロスのふかふかな毛皮に抱き込まれて、凍えることはない。
メグは人に変じることもできるが、結構疲れることらしい。
そう聞き知ってからはまもりは極力迷惑をかけまいと考えているため、ケルベロスに協力してもらったのだ。
「二枚目だったから早かったねぇ」
「そうですね! 最初にこっちに挑戦しなくてよかったです」
まもりは手にしたそれを大事に畳んで風呂敷にしまう。
「喜んでくれるといいな」
頬を染めてそんなことを言うものだから。
「まったくかわいい嫁さんだねぇ」
笑って、メグはまもりの頭を撫でた。
帰宅したまもりはいそいそとヒル魔の元に向かった。
なにやら書き物をしていたヒル魔は、その気配に顔を上げる。
「どうした」
「あのね、ヒル魔くん、これ」
「ア?」
「開けてみて」
期待に満ちた瞳に、一体何かと思いながら包みを開く。
「ホー」
そこには、男物の浴衣があった。
「テメェが縫ったのか?」
「うん。メグさんに教えてもらいながらやってみたの」
ヒル魔はその浴衣を広げる。大柄な自分に合わせて縫うのは面倒だっただろう。
まもりの手には小さな傷が見て取れた。
「上出来だ」
「ホント!?」
ぱあっと明るい顔をしたまもりに、ヒル魔の表情が自然と緩む。
「苦労したか」
「大変っていうより楽しかったわ」
だって作るうちに出来ていくし、形になるし、とまもりは嬉々として喋った。
そういえば日頃の家事は専ら洗濯と食事の用意で、形になるようなものを作る機会というのはなかったのだ。
「テメェの性に合ってるんじゃねぇか」
「そうかも。メグさんがね、今度は着物の縫い方も教えてくれるって言ってたわ」
ヒル魔はまもりの頬を撫でる。
夏の最中なのに、随分とひんやりしていた。
「あんまり糞雪女のところに入り浸って風邪ひくんじゃねぇぞ」
「はーい。気をつけます」
優しい手のひらに、まもりはくすくすと笑いながら応じる。
「お茶をお持ちしました」
雪光がすい、と姿を現す。そうしてまもりの姿を認めるとすっと眸を細めた。
「お帰りなさい。寒かったでしょう、どうぞ」
ヒル魔には井戸で冷やした麦茶、まもりには熱い緑茶。
よく判っている、と二人はありがたく湯飲みを受け取る。
「そうそう、お二人とも。先ほどミサキさんがお越しになったんですよ」
「ア? 糞生真面目が何の用だ?」
「お知らせだけだったらしく、私が受け取ったら戻ってしまいました」
これを、と差し出されたのは達筆な表書きのある手紙だった。
厚さはさほどでもない。
眉を寄せて開くヒル魔の傍らで、まもりも覗き込んだ。
<続>
「どうでしょう?」
それをまじまじと見つめて、雪女のメグは笑みを浮かべた。
「うん、いいじゃないかい」
「やった! ありがとうございます!」
まもりは満面の笑みを浮かべ、ぺこりと頭を下げる。
メグは悠然と煙草をふかしている。
この部屋は相変わらず、随分と寒い。
雪女であるメグとまもりはそのままだと同じ空間に居続けることは難しい。
けれど今は。
「ケルベロスもありがとね」
ケン、と鳴くケルベロスのふかふかな毛皮に抱き込まれて、凍えることはない。
メグは人に変じることもできるが、結構疲れることらしい。
そう聞き知ってからはまもりは極力迷惑をかけまいと考えているため、ケルベロスに協力してもらったのだ。
「二枚目だったから早かったねぇ」
「そうですね! 最初にこっちに挑戦しなくてよかったです」
まもりは手にしたそれを大事に畳んで風呂敷にしまう。
「喜んでくれるといいな」
頬を染めてそんなことを言うものだから。
「まったくかわいい嫁さんだねぇ」
笑って、メグはまもりの頭を撫でた。
帰宅したまもりはいそいそとヒル魔の元に向かった。
なにやら書き物をしていたヒル魔は、その気配に顔を上げる。
「どうした」
「あのね、ヒル魔くん、これ」
「ア?」
「開けてみて」
期待に満ちた瞳に、一体何かと思いながら包みを開く。
「ホー」
そこには、男物の浴衣があった。
「テメェが縫ったのか?」
「うん。メグさんに教えてもらいながらやってみたの」
ヒル魔はその浴衣を広げる。大柄な自分に合わせて縫うのは面倒だっただろう。
まもりの手には小さな傷が見て取れた。
「上出来だ」
「ホント!?」
ぱあっと明るい顔をしたまもりに、ヒル魔の表情が自然と緩む。
「苦労したか」
「大変っていうより楽しかったわ」
だって作るうちに出来ていくし、形になるし、とまもりは嬉々として喋った。
そういえば日頃の家事は専ら洗濯と食事の用意で、形になるようなものを作る機会というのはなかったのだ。
「テメェの性に合ってるんじゃねぇか」
「そうかも。メグさんがね、今度は着物の縫い方も教えてくれるって言ってたわ」
ヒル魔はまもりの頬を撫でる。
夏の最中なのに、随分とひんやりしていた。
「あんまり糞雪女のところに入り浸って風邪ひくんじゃねぇぞ」
「はーい。気をつけます」
優しい手のひらに、まもりはくすくすと笑いながら応じる。
「お茶をお持ちしました」
雪光がすい、と姿を現す。そうしてまもりの姿を認めるとすっと眸を細めた。
「お帰りなさい。寒かったでしょう、どうぞ」
ヒル魔には井戸で冷やした麦茶、まもりには熱い緑茶。
よく判っている、と二人はありがたく湯飲みを受け取る。
「そうそう、お二人とも。先ほどミサキさんがお越しになったんですよ」
「ア? 糞生真面目が何の用だ?」
「お知らせだけだったらしく、私が受け取ったら戻ってしまいました」
これを、と差し出されたのは達筆な表書きのある手紙だった。
厚さはさほどでもない。
眉を寄せて開くヒル魔の傍らで、まもりも覗き込んだ。
<続>
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鳥(とり)
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女性
趣味:
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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