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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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橙に滲む夏(4)



+ + + + + + + + + +
神社まで後僅か、という距離まで気づけば歩いてきていた。
「結構歩いたね」
「そうだな」
まもりはヒル魔を見上げる。
「ねえ、ヒル魔くん。私、喉乾いた」
「ア?」
ヒル魔は振舞い酒を適当にかっぱらって飲んでいたが、まもりは食べ続けるばかりで。
そういえば飲み物を口にしていなかった。
「ちょっと待て」
「うん」
彼女はあまり酒には強くない。冷やし飴か何かを飲ませるべきか、と。
一瞬。
ほんの一瞬、手を離した瞬間に。
「! ヒル魔、く・・・!」
「まもり!?」
人の波が、一気に二人を引き離し、あっという間にまもりを神社のほうへと押しやってしまった。
「っ、この・・・!」
ヒル魔は急いでその後を追うが、如何せん人が多すぎる。
彼の体はごった返す人に阻まれて思うように進めない。
しかもあの勢いの集団には血気盛んな若者たちが多かった。
あっという間に連中は境内に向かって突き進んでいってしまっていて。
このままの人の姿では走っても追いつけない。
嫌な予感というものはあたるもので、そうしてあえてまもりに言わなかった事実にヒル魔は眉を寄せる。
境内までの道はもうあと僅かしかない。
横道から先に回ろうにも、境内そのものがヒル魔の立ち入れない場所なら意味はない。
境内に入るまでにまもりを引き止めなければならない。
ヒル魔は瞬時に判断し、参道から離れ、横道を走る。
そうして、人の目がなくなったことを確認してから、一人の妖怪を呼び出した。


「は、放してください・・・!」
まもりは人波に巻き込まれ、か弱い声を上げてどうにかこの集団から逃れようともがいた。
だが、周囲の人々は一様に興奮した男ばかりで。
まもりが逃げ出そうとしても誰かがその腕を、浴衣の袖を、帯を掴んでいて動けない。
どうして、とまもりは助けを求めるように集団の周囲に視線を走らせる。
けれど人々は心得たように集団の前の道をわざわざ開けて彼らを通しているのだ。
見れば他にも女性が何人か巻き込まれているようだけれど、彼女たちは一向に騒いだりしていない。
むしろ、楽しんでいるような。
熱に浮かされているような、そんな顔をして進んでいる。
これは何かおかしい。
何かが起ころうとしている。
まもりは必死になってヒル魔に助けを求めようと、彼の姿を探した。
と、視線がどこの誰とも知れない男の一人と合う。
瞬間。
まもりの全身が総毛立った。
「あ・・・」
あの眸、見覚えがある。
いつもいつも向けられている眸だ。
そう、ヒル魔が、閨でまもりに覆いかぶさるときの――― 。
「ヒッ・・・」
まもりの喉が引きつる。
恐怖に見開かれたまもりの瞳に、男の手が伸びる。
いつもまもりを慈しみ愛する男のものではない、腕が。
「い、嫌・・・!!」
まもりの瞳が恐怖に濡れる。
それは周囲の異常な高揚を留めるには至らず。
「ヒル魔くん・・・!!」
絶望に満ちた声を上げた、その瞬間。
境内への鳥居が見えた。
そこに行けばケルベロスを呼び出せる。
まもりはぐっと歯をかみ締め、ろくに動かすのもままならない手で首もとの筒を握ろうとした。

<続>
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