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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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橙に滲む夏(3)



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いつぞやとはまた違う空家の三和土にある下駄に足を入れ、外に出る。
カラコロと軽快な音が響いた。
「・・・うわあ!」
路地裏から見える表通りには、数多くの提灯が見て取れた。
「あれ、ずっと続いてるの!?」
「そうだ。神社まで続いてる」
前回はミサキと境内に向かう横道を進んだので、参道を通るのは初めてだ。
まもりは息を呑み、きょろきょろと周囲を見回す。
「来い」
「うん」
二人は手をつなぎ、人ごみの中に紛れる。
神社はごく緩やかな坂を上った先にある。
まっすぐに神社を見上げると、軒先に下がった提灯の明かりが橙に滲んでとても綺麗だ。
「お祭りって、夜だけなの?」
「いや。山車やら神輿やら出る」
「ふうん」
神である清十郎の誘いも夜からだったし、見所は夜なのだろうかとまもりは考える、
そんな彼女の手を引き、ヒル魔が指差した先には。
「食い物の店が出るのは夜のほうが多いぞ」
「わ! なんだか美味しそうな匂いがする!」
「へいらっしゃい!」
いくら提灯が灯っていても、薄暗い夜店の店先。
ぱちぱちと音が立つ炭に炙られ、何かの魚が焼かれている。
「二匹」
「まいどありー!」
「ヒル魔くん、これ何?」
「鮎だ」
渡されたそれは熱々で、まもりは火傷しないようにはふはふと口元を動かす。
「美味しい!」
「そーか」
「あ、あそこ! あそこは何?!」
「アレは射的だな。的に矢を射る」
「的に当たるとなにかあるの?」
「景品がもらえるんだとよ」
「へえ・・・やってみたい!」
まもりは瞳を輝かせる。とりあえずそれ食え、と言い、ヒル魔ははしゃぐまもりと共にゆっくり坂道を歩いていく。
射的屋でヒル魔はただならぬ強さを見せつけ、店の親父に冷や汗をかかせた。
実際には高得点が出ないように微妙に細工を施した弓矢だったのだが、相手がヒル魔ではこの親父も運が悪い。
店の商品をほぼ全て手に入れられるだけの点数を得た彼は、それでもまもりが瞳を輝かせて所望したごく小さな張子細工だけを手にしてその場を去り、親父を心底安堵させたりした。
その他に夜店ならではの安価な根付を売り出す店や、よく冷えた水菓子を出す店などが所狭しと立ち並んでいる。
存分に寄り道をしながら、二人は祭りを楽しむ。
昼間の暑さが嘘のように、夜風はひんやりと涼しい。
竹垣にくくりつけられた色とりどりの風車がその風にからからと音を立てて回っている。
子供が買い求めてはしゃぐ姿に瞳を細め、まもりはそれらを見上げる。
「かわいいわね」
「欲しいか」
「え? ううん、欲しくはないわ」
ただ見ていて綺麗だなって思っただけよ、と口にするとヒル魔は軽く肩をすくめた。
「全く、女ってのはちょいちょい道歩いちゃカワイイカワイイ言うもんだよなァ」
「そんなことないわよ」
「そうか? 今の風車屋の前にも根付屋やら射的の景品やらであれれこれカワイイって散々言ってただろうが」
その都度ヒル魔には欲しいかと問われたが、全てがほしいわけでもない。
「欲しくもねぇもんにカワイイっつう感覚がわからねぇ」
「かわいいものはかわいいじゃない」
「そうは思わねぇなァ」
「ええ? これだってカワイイでしょ?」
まもりが取り出した先ほどの景品である小さな張子細工は、子狐の人形が二つ並んだ飾り物だった。
ヒル魔には大してかわいいとも思えないちゃちなもの。
ひょいと持ち上げて間近に見るが、どこをどうみてもただの張子でしかない。
「どこが」
「小さいし丸いし、顔がケルベロスみたいだし」
「ホー」
そういうもんか、とヒル魔はそれをまもりに返し、彼女はそれを大事そうに巾着の中へとしまった。

<続>
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同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
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