旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
最近、マネージャーが情緒不安定だな、とは思ってた。
多分何人かは気づいていて何かしてやろうと近寄ってみるものの、大丈夫だから、という柔らかい拒否で結局は何も出来ない。
俺はそれを間近で見ていた。
こういういかにも優等生、というヤツは絶対に弱みを見せたがらない。
弱みを見せることがイコール悪いことだと思っている。
そういう風にしつけられているし、それが最善策だと思いこんでいる。
確かに戦っている敵に弱みを見せることは敗北を意味するし、下手に見せればそれをネタに脅すヤツもいるから常に振りまけとは言わない。
でも、心配して近寄ってくるヤツらはマネージャーに好意を寄せていて。
それが恋愛なり家族愛なり種類は違えど、弱みを見せるに値する相手だとは思う。
後はそれを見せる切っ掛けが必要だ。
もう一歩踏み出せばもっと上手に甘えられるのにな。
そんな風に思っていた俺が、たまたま他の一年生連中よりも大幅に遅れて部室に顔を出したときに、声もなくただ泣いていたマネージャーを見つけたとしても、俺は驚かなかった。
その手に固く握りしめられていたのが背番号1のユニフォームだとしても。
俺を見たマネージャーの顔が、知られてしまったという驚愕と、これでやっと楽になれるという安堵の、相反する感情で白くなったのを見ても。
「・・・戸叶、くん」
俺はとりあえず部室の扉をきちんと閉めた。鍵は掛けない。密室にする必要はねぇだろ。
もし誰かが来て泣き顔のマネージャーと二人きりでいたことにあらぬ疑いをかけられちゃ、俺は下手すると来週のジャンプが読めなくなる。
その可能性を減らすために、俺はマネージャーに言った。
「顔、洗った方がいいっすよ」
「・・・」
マネージャーは酷く緩慢な動きでカウンターの裏に顔を洗いに行った。
きっと今、頭の中で色々言い訳を考えている。
『コレは違うのよ、たまたま洗濯物を畳んでいて、目にゴミが入ったから泣いちゃってたの』
そんなことを言い出しそうだと俺はちらりとカジノのテーブルに置かれている、あからさまに握りしめられて手のひらの汗が染みたユニフォームを見た。洗濯物とはもう到底呼べない、それ。
あの皺が、汗以外の染みも、マネージャーの気持ちそのものだ。
下手な言い訳を言わせる前に、俺は消耗品がしまわれている棚を探った。あ、あった。
「・・・あの、ね、戸叶くん、その・・・」
躊躇いながら言葉を探そうとするマネージャーに、俺は手にしていたそれを放る。
「え?」
「それで目、冷やした方がいいっす。腫れてっから」
「・・・ありがとう」
こんな時にも律儀に礼を言うマネージャーの手には冷えポイ。
デス・マーチで使って以来関節の冷却には欠かせない一品。
多分自分では初めて使うだろうそれ。
中の水袋をたたき割る、というその動作もふらふらと頼りない。
見かねてそれを取り上げ、手のひらの上で一叩きしてすぐ渡す。
あっという間に冷えたそれを手に、マネージャーはこちらを腫れぼったい目でじっと見ていた。
「聞かないの?」
「聞いて欲しいっすか?」
俺はマネージャーから一番離れた席に座り、鞄の中からジャンプを取りだしてぺらりと捲り始める。
途端に部室内は沈黙に包まれる。遠くから悪魔の声と銃声と、部員の悲鳴だけが聞こえる。
三分の一程まで読み進めると、マネージャーの声がした。
「・・・驚かないの?」
「特には」
ちらりとジャンプから目を上げれば、冷えポイを瞼に押し当ててマネージャーは天を仰いでいた。
細い首がひくりと蠢く。小さくしゃくり上げているようだ。
「誰かに、言う?」
「別に」
俺だってこの意地っ張りで甘え下手なマネージャーに何かしてやりたいと思っていた。
だから偶然に今回の現場を目にした俺があえて引きずり出して見せびらかすことでマネージャーを傷つけるなら、そんなことをするつもりは全然無かった。
俺だってそれなりに、仲間、の一員としてこのマネージャーが大事なのだ。
「・・・じゃあ、ちょっと聞いて貰おうかな」
「どぞ」
涙声は少しだけ明るくなった。
これで少しは吐き出せて、楽になれるだろう。
切っ掛けとなれた俺は、安堵に緩んだ顔をジャンプで覆い隠した。
おそらく今日の練習に俺は出られない。
その分、明日の罰練習は過酷になるだろう。
だが、グラウンドの隣でいつものように明るく笑うマネージャーがいるのなら、それだって悪くはないのだ。
***
5/19 8:52 まもりの~様リクエスト『まもりの完全片思いを第3者視点の話』でした。なんで彼かというと、漫画を描く人なので人のことは客観的によく見ていて、でも余計なことを言わないでいてあげられるかな、と。質問も説教もなく淡々と受け止めてくれそうだし、ということで。
リクエストありがとうございましたー!!
まもりの~様のみお持ち帰り可。
多分何人かは気づいていて何かしてやろうと近寄ってみるものの、大丈夫だから、という柔らかい拒否で結局は何も出来ない。
俺はそれを間近で見ていた。
こういういかにも優等生、というヤツは絶対に弱みを見せたがらない。
弱みを見せることがイコール悪いことだと思っている。
そういう風にしつけられているし、それが最善策だと思いこんでいる。
確かに戦っている敵に弱みを見せることは敗北を意味するし、下手に見せればそれをネタに脅すヤツもいるから常に振りまけとは言わない。
でも、心配して近寄ってくるヤツらはマネージャーに好意を寄せていて。
それが恋愛なり家族愛なり種類は違えど、弱みを見せるに値する相手だとは思う。
後はそれを見せる切っ掛けが必要だ。
もう一歩踏み出せばもっと上手に甘えられるのにな。
そんな風に思っていた俺が、たまたま他の一年生連中よりも大幅に遅れて部室に顔を出したときに、声もなくただ泣いていたマネージャーを見つけたとしても、俺は驚かなかった。
その手に固く握りしめられていたのが背番号1のユニフォームだとしても。
俺を見たマネージャーの顔が、知られてしまったという驚愕と、これでやっと楽になれるという安堵の、相反する感情で白くなったのを見ても。
「・・・戸叶、くん」
俺はとりあえず部室の扉をきちんと閉めた。鍵は掛けない。密室にする必要はねぇだろ。
もし誰かが来て泣き顔のマネージャーと二人きりでいたことにあらぬ疑いをかけられちゃ、俺は下手すると来週のジャンプが読めなくなる。
その可能性を減らすために、俺はマネージャーに言った。
「顔、洗った方がいいっすよ」
「・・・」
マネージャーは酷く緩慢な動きでカウンターの裏に顔を洗いに行った。
きっと今、頭の中で色々言い訳を考えている。
『コレは違うのよ、たまたま洗濯物を畳んでいて、目にゴミが入ったから泣いちゃってたの』
そんなことを言い出しそうだと俺はちらりとカジノのテーブルに置かれている、あからさまに握りしめられて手のひらの汗が染みたユニフォームを見た。洗濯物とはもう到底呼べない、それ。
あの皺が、汗以外の染みも、マネージャーの気持ちそのものだ。
下手な言い訳を言わせる前に、俺は消耗品がしまわれている棚を探った。あ、あった。
「・・・あの、ね、戸叶くん、その・・・」
躊躇いながら言葉を探そうとするマネージャーに、俺は手にしていたそれを放る。
「え?」
「それで目、冷やした方がいいっす。腫れてっから」
「・・・ありがとう」
こんな時にも律儀に礼を言うマネージャーの手には冷えポイ。
デス・マーチで使って以来関節の冷却には欠かせない一品。
多分自分では初めて使うだろうそれ。
中の水袋をたたき割る、というその動作もふらふらと頼りない。
見かねてそれを取り上げ、手のひらの上で一叩きしてすぐ渡す。
あっという間に冷えたそれを手に、マネージャーはこちらを腫れぼったい目でじっと見ていた。
「聞かないの?」
「聞いて欲しいっすか?」
俺はマネージャーから一番離れた席に座り、鞄の中からジャンプを取りだしてぺらりと捲り始める。
途端に部室内は沈黙に包まれる。遠くから悪魔の声と銃声と、部員の悲鳴だけが聞こえる。
三分の一程まで読み進めると、マネージャーの声がした。
「・・・驚かないの?」
「特には」
ちらりとジャンプから目を上げれば、冷えポイを瞼に押し当ててマネージャーは天を仰いでいた。
細い首がひくりと蠢く。小さくしゃくり上げているようだ。
「誰かに、言う?」
「別に」
俺だってこの意地っ張りで甘え下手なマネージャーに何かしてやりたいと思っていた。
だから偶然に今回の現場を目にした俺があえて引きずり出して見せびらかすことでマネージャーを傷つけるなら、そんなことをするつもりは全然無かった。
俺だってそれなりに、仲間、の一員としてこのマネージャーが大事なのだ。
「・・・じゃあ、ちょっと聞いて貰おうかな」
「どぞ」
涙声は少しだけ明るくなった。
これで少しは吐き出せて、楽になれるだろう。
切っ掛けとなれた俺は、安堵に緩んだ顔をジャンプで覆い隠した。
おそらく今日の練習に俺は出られない。
その分、明日の罰練習は過酷になるだろう。
だが、グラウンドの隣でいつものように明るく笑うマネージャーがいるのなら、それだって悪くはないのだ。
***
5/19 8:52 まもりの~様リクエスト『まもりの完全片思いを第3者視点の話』でした。なんで彼かというと、漫画を描く人なので人のことは客観的によく見ていて、でも余計なことを言わないでいてあげられるかな、と。質問も説教もなく淡々と受け止めてくれそうだし、ということで。
リクエストありがとうございましたー!!
まもりの~様のみお持ち帰り可。
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トガいいなぁ!!
こんにちは、ヒルです。
20000ヒットおめでとうございます。ホント、凄い勢いでカウンター回りまくってますね。まぁ、鳥さんの小説が素敵過ぎるので、当然と言っちゃぁ当然なのかもしれないですが。
今回はバトン回答に爆笑しながら「あ~・・・しょうがないんだろうけど、このヒル魔さんヒル魔さんじゃないなぁ~。」とか思ったデス
でも、回答内容は楽しかった(^^)
でも・・・・いいっすねぇ!!トガ!!
なんかまもりチャンの「弱みを見せる=悪い」が、なんか凄く理解できてしまって、ちょっと切なくなってしまいました。私優等生ではないんですけども。(笑)
トガっぽい・・・相手の負担にならないタイプの慰めって言うんですか?優しさのある適当さと言いますか、思いやりのあるダラダラ加減が凄く好きです!(意味不明?)
私もあんなふうに扱われてみたいよマジで!!(テンション高すぎてスイマセン)
なんて思いました。
2万ヒットを記念して、連載小説を書かれるということでしたので、そちらも楽しみにしています。
あまり無理をせず、お体お気おつけて楽しい小説を沢山アップしてくださいね。
楽しみにしています。
では今回はこの辺で
乱文な上に長文で読みづらい事この上なかったと思います。
失礼しました。
20000ヒットおめでとうございます。ホント、凄い勢いでカウンター回りまくってますね。まぁ、鳥さんの小説が素敵過ぎるので、当然と言っちゃぁ当然なのかもしれないですが。
今回はバトン回答に爆笑しながら「あ~・・・しょうがないんだろうけど、このヒル魔さんヒル魔さんじゃないなぁ~。」とか思ったデス
でも、回答内容は楽しかった(^^)
でも・・・・いいっすねぇ!!トガ!!
なんかまもりチャンの「弱みを見せる=悪い」が、なんか凄く理解できてしまって、ちょっと切なくなってしまいました。私優等生ではないんですけども。(笑)
トガっぽい・・・相手の負担にならないタイプの慰めって言うんですか?優しさのある適当さと言いますか、思いやりのあるダラダラ加減が凄く好きです!(意味不明?)
私もあんなふうに扱われてみたいよマジで!!(テンション高すぎてスイマセン)
なんて思いました。
2万ヒットを記念して、連載小説を書かれるということでしたので、そちらも楽しみにしています。
あまり無理をせず、お体お気おつけて楽しい小説を沢山アップしてくださいね。
楽しみにしています。
では今回はこの辺で
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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