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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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悪魔の算段

(ヒル魔とまもりと泥門デビルバッツ+α)
※15000HITお礼企画作品

+ + + + + + + + + +
泥門高校が関東勢として開催至上初クリスマスボウル制覇、という偉業を達成したのは冬。
その後泥門高校には入学希望者が殺到し、アメフト部は部員不足に悩んだ去年とは真逆の、選手同士がしのぎを削る理想的な環境を手に入れた。
しかし当然の事ながら、あまりに多すぎては部活として機能しない。
そのため、引退したとはいえ部員をふるいに掛けるため、蛭魔妖一から全員に三泊四日で合宿を行うと声掛けがあった。 

春先。平日、早朝。春の大会に支障がないように組まれた合宿日程。
授業も何も関係ないと言わんばかりの日程だが、その辺はあの手帳が活躍したことだろう。
「今年はヘルタワーじゃないんだね」
「そんなに何回も貸し切れるもんでもないんじゃねぇの」
「でもヒル魔だしなあ」
二年生たちは去年の今頃に行われた東京タワーでの部員選抜を思い返す。
あの時はやる気があるヤツだけを選ぶ、という単純明快な代物だったが、今回はやる気があるから泥門高校に来た、という連中ばかりなのだ。それを振り落とすのだから、どんな拷問が待っているやら。
「手っ取り早いのはデスマーチだけど、さすがに日本じゃ無理だよね」
「しかも三泊四日って、どうすんだろ」
一年生たちは何も知らず、わくわくした顔で荷物片手に待っている。
と、そこに現れたのは相変わらずの黒ずくめ、蛭魔妖一。
「おー、揃ってるか」
「全員揃ってるぞ。で、どこ行くんだ」
部長職を継いだのは十文字。
セナを推す者もいたが、総合的に見て適任だろう、ということで彼が収まったのだ。
「富士山」
その一言に、一年生たちはぐるりと周囲を見渡した。
バスがあっただろうか。それとも電車で移動するのか?
二年生たちは察して肩をすくめる。
エンジン音が響いて、校内に入ってきたのはデコトラデビルバット号と軽自動車。
ちなみに軽自動車の運転手はムサシだ。 誕生日が一番早いだけあって免許の取得も一番だ。
「荷物はこの中に入れてね」
デコトラの荷台から顔を出したまもりに、二年生たちはすぐさま上着を脱ぎ、荷物を次々とデコトラへ積んでいく。
「え?」
「え、荷物だけですか?」
きょとんとする一年生たちの前で、マシンガンが唸りを上げる。
「おらテメーらぼさっとしてねぇでさっさと準備しろ! 荷物はデコトラ、上着は脱げ!」
「ひぇええ!!」
慌てて上着を脱ぎ、荷物を運びながら一年生たちは顔を見合わせる。
二年生は平然としているが、もしかして、これは。
「さすがにデスマーチとはいかねぇが・・・予行練習だ」
にやり、と笑うヒル魔に一年生たちは顔を引きつらせる。嫌な予感がする。
「じゃあ出発するぞ! 新マネージャーどもはトラックで水分補給、潰れたヤツは捨てていく!」
十文字がその後を引き継いで声を上げた。
「富士山まで全員走るぞ!!」
げぇええ!! という悲鳴を上げる一年生たちを置いて二年生たちはさっさと走り出した。
慌てて一年生たちもその後に続く。
「本気ですか?! 富士山まで270㎞くらいありますよ?!」
「ハ? そんなもんなのか。じゃあ三日でギリギリか?」
「ハァアア? 270㎞くらい大した距離じゃねぇよ」
あっさりと言われて、一年生たちはますます驚愕する。
「ハァ、それにしてもトラック押さないだけマシだな」
「フゴ!」
「銃撃されないし、暑くないし、これならただのマラソンだしな!」
「うん、石蹴りしないでいいなら楽だよ」
「アハーハー! 僕は天才だから余裕だよ!」
笑う余裕さえある二年生たちに、一年生たちは早くも青ざめている。
背後には軽自動車に乗り込んで銃を片手にこちらを伺うヒル魔もいるのだ。
予想外に厳しいらしい泥門高校の合宿は始まったばかり。

徹夜で走るハメになった一年生たちは、予想以上の厳しさに次々と悲鳴を上げ倒れていく。
それでも歯を食いしばってついてくる者も結構多かった。
山道を走る間、額にライトを付けて走る姿はさぞ異様だろう。
対向車は皆一様に唖然とした顔で通り過ぎ、後方から追い抜く車はなにをはた迷惑な、と思いつつ横目で現状を見て、そうして呆然と走り去った。 
「おー、けっこう頑張るな」 
楽しげなヒル魔にまもりが後ろから口を挟んだ。
「マネージャーの子、一人泣いてたわよ」
こちらはムサシ・ヒル魔・まもりの三人が乗っている。
「なんでだ?」 
ムサシの疑問にまもりは肩をすくめた。
「こんなに厳しい練習させるなんて信じられない、って」
あれじゃもう続けられないわね、と冷静にまもりは切って捨てた。
この一年でまもりはただ無性に甘い、というのから時には厳しさも必要、というスタンスに変わっていた。 成長したな、とムサシは眉を上げるが、特には口にしない。
「そんな糞甘ェ考えのヤツはウチの部活にはいらねぇな」
最終的に何人になるかは知れないが、これで残ったのなら生半可な扱いではへこたれないだろう。
データを整理するヒル魔の後ろからまもりの呟きが聞こえる。 
「今年の夏はまたデスマーチやるのかしら」
「あんなもんは必要ねぇよ」
速攻で切り返したヒル魔に、まもりは小首を傾げる。
「アレは俺たちに後がなかったからやっただけだ。今年の連中には必要ねぇよ」
「ふーん」
「それよりも二人とも、今一人倒れたぞ」 
冷静にムサシが車を止めた。
「回収だ」
「うん」
タオルを片手に、まもりが車を降りて駆け寄った。

ぐったりと倒れ込む一年生たちに、新米マネージャーたちがたどたどしく冷えポイを手渡していく。
二年生たちも疲労困憊ではあるが、まだ余裕があるように感じられる。
やはりアメリカでデスマーチをやったかやらないかはかなり違うのだろう。
「足のまめが潰れた人や靴擦れの人がいたら手当てするので声を掛けてね」
てきぱきとその間を縫っていくまもりによろよろと手を挙げる一年生。
すぐさま駆け寄って手当をし、世話を焼いて忙しなく動き回る。 
「姉崎先輩! わ、わたしも手伝います!」
「私も!」
その様子をただ見ているだけだった新米マネージャーたちのうちの何人かはまもりの後ろについて仕事を得ようとしている。
「カルガモみてぇだな」
「ホントだ」
本日の宿泊場所はどこぞの公共施設らしく、むき出しのフローリングに毛布だけ。
これって避難場所じゃないんですか、という誰かの呟きにヒル魔は手帳を一振りして不敵に笑った。
屋根があるし室内でよかったね、と笑う二年生たちに一年生たちは最早ついて行けない。
新マネージャーたちはデコトラ内のベッドを優先的に使えるよう配慮された。
ところで三年生三人の寝床だが。
「ここには宿直室みてぇな場所があってな。そこに泊まる権利を賭けようじゃねぇか」
「私は車でいいわよ」
「俺も」
まもりもムサシも気を遣って辞退するが、ヒル魔はぴんと片眉を上げた。
「ア? じゃあくじ引きだ、文句はねぇだろ」
ヒル魔が手にしたのはスタンダードな紙縒型のくじだ。
「はずれたら車な」
「うん」
「ああ」
ムサシとまもりが引くと、まもりの手のくじには赤い印がついている。
「あら。ごめんね、ムサシくん」
「いやいい。ゆっくり休めよ」
「おー」
立ち上がるまもりに、なぜかついて行くヒル魔。
「・・・なんでヒル魔くんがこっちに来るの」
駐車場は外よ、と指さされて、ヒル魔はにやにやと笑う。
「オヤ? 宿直室は二人泊まれるんデスヨ」
「常識的に考えて! 女の子と同室で泊まるなんて! あり得ないでしょ!」
「だって俺もあたりだしナァ」
ひらりとヒル魔の手に赤い印のあたりくじ。
「何よそれ!? 私、車で寝るから! ちょっと、やめてよ引っ張らないで!」 
「おや糞マネ、外れた人がデスヨ」
「いやいやいやいや! これってあたりとか言わないから!」
「ケケケさ~寝ましょうネ~」
「いーやー!!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人を咎める気力がある者は誰もいない。
というか、二年生たちは生ぬるく二人を見守っているだけだし、一年生たちはまだどうしたらいいか判らないのだ。唯一突っ込めそうなムサシは馬に蹴られる、と呟いてさっさと車に行ってしまったし。
「・・・もしかしてコレがやりたくて合宿にしたのかな」 
セナの呟きに、そうだろうなあとため息をついて、皆して宿直室をぼんやり眺める。
なんだかんだで自分の好きなようにやるのだ、あの悪魔は。 

彼らが室内に入った途端にぴたりとまもりの声が止んだので、皆はそっと視線を泳がせた。


***
5/18 20:49 こんばんは~様リクエスト『合宿の部屋決めで蛭魔と同室になり(もちろん策略)焦るまもり』でした。合宿をする、という話だと原作中だとクリスマスボウルまでの間はタイムテーブルが合わず、かといってその隙間を創作で作るのはどうにも私の頭が拒否しまして、こんな話になってしまいました。東京~富士山の距離は概算で合わせましたのと、走破できるかどうかは憶測です。
リクエストありがとうございましたー!!

こんばんは~様のみお持ち帰り可。
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