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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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岡目八目

(ヒルまも)
※15000HITお礼企画作品

+ + + + + + + + + +
暦の上ではもう秋とはいえ、炎天下と呼ぶにふさわしい日。
俺は陸上部の練習そっちのけでアメフト部へと連行されていた。
とはいえ、夏休みの間に俺の方の部活の大きな大会はほぼ終わってしまっていたし、夏休み一杯を費やしたという合宿の結果がどうだったのか、見てみたいという気持ちもあったから、半ば自主的だったのだけれど。
 
皆は格段にレベルアップしていた。
ルールをまだまだ把握していない俺の目から見ても、顔つきも体つきもまるで違って見えたのだ。
なぜか主務のセナくんまで鍛えられたような顔をしていて少し不思議だったけれど、彼も男だし、練習に付き合ったりしたのだろう。
でも、一番変わったのは。
「おい、糞マネ」
「なに?」
「秋大会の開会式関係書類。コピーとっとけ」
「うん」
姉崎、前はそんな風に呼ばれたらまず呼び方について怒ったりしてたのになぁ。
そんなことは些細なことになったのか、慣れたのか。
そういえば合宿、アメリカだったもんな。
どんな場所でやったかは知らないけど、もしかしたら他に日本人がいない場所だったりしたら、あの二人だって会話するだろうし。
くだらないことだって言い合ったかもしれない。
二人の距離が縮まったようで、寄ると触ると喧嘩した去年からすると凄い進歩だ。
一体どんな練習したんだろうか。
・・・まあヒル魔のやることだから、生半可じゃないことは確かだけど。
後で誰かに聞いてみよう。
「オイ、石丸!」
呼ばれて俺はヒル魔の側に行く。どうやらパス練習らしい。
アイシールド21と、この秋から入学予定の瀧くん、モン太くんたちと混ざって走る。
その間もヒル魔の隣でボールを渡したり、手が空けばドリンクを用意したりと、姉崎はコマネズミのようにくるくると働いていた。
「糞マネ!」
「なーにー?」
干していたタオルを取り込みに行っていた姉崎が遠くからヒル魔の呼び声に答える。
「今から15分休憩!」
「はーい!」
その言葉に部員たちは、割と軽い足取りでグラウンドの端へと歩いていく。
夏休み前ならきっとその場で倒れ込むくらいの練習量のはずだ。実際俺だって結構きつい。
それなのにこの余裕。
「随分鍛えたんだなぁ」
ぽろりとこぼれた言葉を拾ったのは後ろから来たヒル魔だった。
「ケケケ、デスマーチこなして帰ってきて、この程度でばてられちゃ困るナァ」
「デスマーチ?」
聞き慣れない単語に、首を傾げていたらヒル魔が詳細を教えてくれた。
血の気が引く。
・・・やっぱり無茶苦茶だ。よくもまあ全員無事に帰ってきたもんだ。
セナくんまで走ったのか。そりゃ鍛えられたように感じるわけだよ。
「石丸くん、ヒル魔くんも飲まないとダメよ」
俺たち二人で喋っているところに、ドリンクのボトルを手に姉崎が近寄ってきた。
休憩と言ってもマネージャーは休む間じゃないんだろう。
手を抜けばいくらでも休めるが、姉崎はそういうことをしないだろうし。
そんな風に考えながら見ていたら、小走りに来た姉崎の足が、一瞬揺らいだように見えた。
「!」
咄嗟に手を出そうとして―――ヒル魔の手が姉崎の細い腕を掴んだ。
あ。
俺の方が今、姉崎に近かったんだけど。
でも俺が何かを言う前に、ヒル魔がケケケと笑った。
「テメェこそ水分足りてねぇんじゃねぇのか。腕がガサガサデスヨ」
「そんなことはありませんっ!!」
ヒル魔の軽口に、姉崎は真っ赤になって手にしていたボトルを一本投げつける。
それをひょいと避け、残った方のボトルを奪い取ると俺に寄越す。
「あ、いいよいいよ。俺はあっちを貰うよ」
遠慮して飛んでいった方のボトルを取りに行こうとしたけれど、それは姉崎が止めた。
「だめよ! あれはヒル魔くんに飲ませるわ! 石丸くんはこっちを飲んで! ね!」
「ヒデェ言い方だな糞マネ。あれ中身零れてるぞ? 砂でも俺に飲ませる気か」
「誰のせいよ、もう! 今作り直すわよ!」
「どんなドリンク作るオツモリデスカ」
「フツーのよ! フツーのっ!!」
「どーだかナァ。作るところからちゃーんと見せて貰おうか」
「えーどうぞどうぞ!」
ぷりぷりと怒りながらボトルを拾いに行く姉崎の後ろからヒル魔がついていって、更にからかいながら部室へと二人して向かっていく。
・・・ホント随分変わったなあ。
ヒル魔が他人を支えるなんて。
今日は随分暑いから、動き回っている姉崎は自覚が無くても相当疲れているはずだ。
ああやって姉崎を連れて行って部室で休ませるつもりらしい。
単純に疲れてるだろうから休め、なんてヒル魔は口に出来ないんだろうしなあ。
姉崎もそういわれて素直に休むとは思えないし。
よく見てるし判ってるなあ、さすがヒル魔。
俺は手にしていたボトルのドリンクを嚥下しながら二人を見送る。
程なくして戻ってきたヒル魔は練習再開を告げた。
俺は手にしていたボトルをベンチ側の駕籠まで戻しに行こうとしたが、ヒル魔に止められた。
「ア? 石丸、それはその辺に置いとけ」
「いやいや、そりゃマズイだろ。集めて姉崎の所に持っていくよ」
今せっかく休憩させているのに、ここにボトルを転がしておいて後で片づけさせるのも気が引ける。
「置いとけ、っつってんだ。オラ練習始めるぞ!」
ウース、と方々から聞こえる声に俺はボトルを持って行こうとした足を止めて仕方なく練習の輪に戻る。
 
しばらくしてボトルを回収しに来た姉崎を視界の端に入れたヒル魔の目が一瞬だけ、和らいだ。
顔色が目に見えて良くなっている。ちゃんと休んだか確認したかったらしい。
判りづらいような判りやすいような優しさに俺は一人感心していると。
「石丸! テメェよそ見してるんじゃねぇ!!」
途端に飛んできた怒号に、俺は思わず首をすくめる。
・・・もしかしなくても無自覚なのかな。あれほど人のことをよく見ているヒル魔なのに。
それは悪魔の弱みであるのと同時に、天使の危機を招くかも知れない。
どちらにせよ第三者は口を挟むべきではないことだ。
俺はそう結論付け、黄昏時のグラウンドを全速力で駆け抜けた。

***
コメ様リクエスト『本人も無意識にまもつんにだけ甘いヒル魔さんを第3者視点で(ヒルまも恋人未満)』でした。
石丸さんが書いてみたかったのでチャレンジしたら、説明役を買って出てくれてヒル魔さんにも臆せず話すし、まもりちゃんとも普通に接してくれる結構貴重なポジションだなあと思わせられました。すごいな石丸さん!
リクエストありがとうございましたー!!

コメ様のみお持ち帰り可。
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