旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
桜雪奇談外伝~目覚め~
5/9にアップしたヒルまもパロ小説の続きを書いてみました。
・まもりが子供
・ヒル魔が人外
・まだまだ続くらしい
・本編じゃなくて外伝なので当然進んでない
※15000HITお礼企画作品
5/9にアップしたヒルまもパロ小説の続きを書いてみました。
・まもりが子供
・ヒル魔が人外
・まだまだ続くらしい
・本編じゃなくて外伝なので当然進んでない
※15000HITお礼企画作品
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ヒル魔がふと気づいたとき、空はとっぷりと暮れ、窓を開いて見た桜は仄白く花弁を散らしていた。
いつもなら、弟子であるまもりがとっくに彼を食卓に招いている時刻だ。
感じるはずのない空腹を覚えて、ヒル魔はそのことに一つ瞬きをした。
驚いた。
そんなことを覚えた自分も、それに驚いた自分も。
もう随分とまもりと一緒に食事を摂るようになっていて。
食事なんて必要ない身体なのに、当たり前のように感じている。
『食事は栄養源、っていいますけど、燃料じゃないんですよ』
いつもいつも、何がそんなに楽しいのか、と思うくらい楽しそうに鍋を振り、皿に盛り、箸を付ける。
仙人であるヒル魔は霞を時折食べれば問題ない。
けれど未だ人間のままであるまもりは食べなければ生きていけない。
『人は食べたものから出来ているんです』
当たり前のことなのだろうに、その言葉にヒル魔は静かに狼狽した。
何に、と尋ねられたら明確には答えられないが。
「・・・ちっ」
まもりの前では出さないように注意を払っている舌打ちをして、ヒル魔は立ち上がった。
勉強部屋にも、書庫にも、台所にもまもりの姿はなかった。
そこで更に無為に歩いて探すことなく、ヒル魔は術でまもりの気配を追う。
庭にある桜のうちの一本にまもりはいるようだ。
足音を立てずに歩くヒル魔は、遠目から見ると滑らかに滑るように桜の下を移動していく。
はらはらと散る桜は無音のはずなのに、酷くざわめくような感覚をヒル魔にもたらす。
一体何が。
まもりがこの時間までこんな所にいる理由は分かり切ってはいる。
目的の場所にたどり着いて、ヒル魔はやはりな、と静かにため息をついた。
彼女は眠っていた。
大きく張った桜の根元に背中を預け俯き、足を投げ出し、傍らにポヨを従えて昼寝していた。
膝には本が一冊。どうやらここで読書をしていたが睡魔に負けて寝てしまったらしい。
日が落ちて気温が下がっても、ここは常春の天界。
風邪を引くことはまずないが、外で寝続けさせるのはいかがなものか。
この弟子にはほとほと甘い、と自分を嘲笑いながらヒル魔は彼女に手を伸ばす。
だが。
「ん・・・」
「・・・!」
ふいに俯いていた顔が揺らめき、寝顔が露わになる。
白い面が煌々と照らす月に彩られ、長い睫が青い影を落としている。
長く伸びた髪は緩く編み込まれ、いつの間にか丸くふくらみを伴うようになった胸元へ毛先を下ろしている。
何、だ。
投げ出された足首も、小さな頭を支える華奢な首も、子供の細さではなく、柔らかな曲線を描いて無防備に晒されている。
特に手入れをしていないはずの指先の爪はつやつやと薄紅色を月光と混ぜ合わせている。
そこには見たことがない柔らかい生き物がいた。
骨張って小さかった身体はいつの間にこんなに柔らかく丸くなったのか。
季節の巡らないこの天界にも時の流れはしっかりあって、そうしてこいつは食べ続けた食事でもってちゃんと自分を育てたわけか。
こいつを拾ってから何年経った?
6年? 7年?
どれくらいこいつはここにいて、背も髪も伸びた?
ヒル魔が逡巡する間にも花弁ははらはらとまもりに降り注ぐ。
その髪に絡んだ花弁を摘んで取る際に、頬に指が触れた。
摘んだ花弁と同じような、滑らかな感触。
その奥に何を秘めているのかと探りたくなるような、押し返す肉の感触。
こいつは何で出来ている?
ぐるぐると堂々巡りを続けようとする思考を振り払おうとヒル魔は一度意識して瞬く。
未だ眠り続けるまもりを起こすのは簡単だが、今の自分自身を見られたくなくて、ヒル魔はまもりの膝裏と、背中に腕を差し込んだ。 そのまま持ち上げる。以前より格段に重くなった身体。
更に、眠る人の体重は起きているときよりも数倍重く感じる。
けれどそれをおくびにも出さず、ヒル魔は彼女を抱えてすたすたと歩いていく。
ポヨは気が付いたらしくまもりを抱えたヒル魔を一瞥すると、一足先に屋敷へと走って戻っていった。
よほど疲れていたのか、まもりはその状態でも目を覚まさない。
抱えたことで手に触れる布越しの柔らかい肉に、ヒル魔の意識が向いてしまう。
欲望を捨て、霞を食べ、孤高の存在として在るはずの仙人であるヒル魔。
たかがこの子供一人にどれだけ振り回されているのか。
目を覚ませ、と己に内心語りかけ、ヒル魔は屋敷へと向かう。
大した距離じゃないのに、身体に響く。
この弟子の、柔らかさと重さにヒル魔の神経が追いつめられていく。
これは何だ。
今腕に抱いているこのおんなは、何だ。
ふっくらと柔らかい唇を視界の端に入れてしまい、ヒル魔は急に喉の渇きを覚えた。
らしくない。
あってはならない。
警鐘と心音が鳴り響く中、ヒル魔はごくりと喉を鳴らし、そんな自分に更に一度瞬いた。
『人は食べたものから出来ているんです』
ならば俺もお前と同じ、人と同じものでできているという話じゃないか。
欲を捨てたはずの仙人が。
欲のある人と同様に。
――――目が覚めてしまった。
欲がヒル魔の中で目覚める。
鎌首をもたげたそれは、月光さえ届かない場所で熱く蠢いた。
***
まゆみ様リクエスト『桜雪奇談で、美しく成長したまもりを異性として意識してしまうヒル魔』でした。普通にどきっとしてカワイイ感じのを書くつもりが、なんでこんなに欲丸出しに・・・。正直に言えばものすごく楽しかったです(笑)リクエストありがとうございましたー!!
まゆみ様のみお持ち帰り可。
いつもなら、弟子であるまもりがとっくに彼を食卓に招いている時刻だ。
感じるはずのない空腹を覚えて、ヒル魔はそのことに一つ瞬きをした。
驚いた。
そんなことを覚えた自分も、それに驚いた自分も。
もう随分とまもりと一緒に食事を摂るようになっていて。
食事なんて必要ない身体なのに、当たり前のように感じている。
『食事は栄養源、っていいますけど、燃料じゃないんですよ』
いつもいつも、何がそんなに楽しいのか、と思うくらい楽しそうに鍋を振り、皿に盛り、箸を付ける。
仙人であるヒル魔は霞を時折食べれば問題ない。
けれど未だ人間のままであるまもりは食べなければ生きていけない。
『人は食べたものから出来ているんです』
当たり前のことなのだろうに、その言葉にヒル魔は静かに狼狽した。
何に、と尋ねられたら明確には答えられないが。
「・・・ちっ」
まもりの前では出さないように注意を払っている舌打ちをして、ヒル魔は立ち上がった。
勉強部屋にも、書庫にも、台所にもまもりの姿はなかった。
そこで更に無為に歩いて探すことなく、ヒル魔は術でまもりの気配を追う。
庭にある桜のうちの一本にまもりはいるようだ。
足音を立てずに歩くヒル魔は、遠目から見ると滑らかに滑るように桜の下を移動していく。
はらはらと散る桜は無音のはずなのに、酷くざわめくような感覚をヒル魔にもたらす。
一体何が。
まもりがこの時間までこんな所にいる理由は分かり切ってはいる。
目的の場所にたどり着いて、ヒル魔はやはりな、と静かにため息をついた。
彼女は眠っていた。
大きく張った桜の根元に背中を預け俯き、足を投げ出し、傍らにポヨを従えて昼寝していた。
膝には本が一冊。どうやらここで読書をしていたが睡魔に負けて寝てしまったらしい。
日が落ちて気温が下がっても、ここは常春の天界。
風邪を引くことはまずないが、外で寝続けさせるのはいかがなものか。
この弟子にはほとほと甘い、と自分を嘲笑いながらヒル魔は彼女に手を伸ばす。
だが。
「ん・・・」
「・・・!」
ふいに俯いていた顔が揺らめき、寝顔が露わになる。
白い面が煌々と照らす月に彩られ、長い睫が青い影を落としている。
長く伸びた髪は緩く編み込まれ、いつの間にか丸くふくらみを伴うようになった胸元へ毛先を下ろしている。
何、だ。
投げ出された足首も、小さな頭を支える華奢な首も、子供の細さではなく、柔らかな曲線を描いて無防備に晒されている。
特に手入れをしていないはずの指先の爪はつやつやと薄紅色を月光と混ぜ合わせている。
そこには見たことがない柔らかい生き物がいた。
骨張って小さかった身体はいつの間にこんなに柔らかく丸くなったのか。
季節の巡らないこの天界にも時の流れはしっかりあって、そうしてこいつは食べ続けた食事でもってちゃんと自分を育てたわけか。
こいつを拾ってから何年経った?
6年? 7年?
どれくらいこいつはここにいて、背も髪も伸びた?
ヒル魔が逡巡する間にも花弁ははらはらとまもりに降り注ぐ。
その髪に絡んだ花弁を摘んで取る際に、頬に指が触れた。
摘んだ花弁と同じような、滑らかな感触。
その奥に何を秘めているのかと探りたくなるような、押し返す肉の感触。
こいつは何で出来ている?
ぐるぐると堂々巡りを続けようとする思考を振り払おうとヒル魔は一度意識して瞬く。
未だ眠り続けるまもりを起こすのは簡単だが、今の自分自身を見られたくなくて、ヒル魔はまもりの膝裏と、背中に腕を差し込んだ。 そのまま持ち上げる。以前より格段に重くなった身体。
更に、眠る人の体重は起きているときよりも数倍重く感じる。
けれどそれをおくびにも出さず、ヒル魔は彼女を抱えてすたすたと歩いていく。
ポヨは気が付いたらしくまもりを抱えたヒル魔を一瞥すると、一足先に屋敷へと走って戻っていった。
よほど疲れていたのか、まもりはその状態でも目を覚まさない。
抱えたことで手に触れる布越しの柔らかい肉に、ヒル魔の意識が向いてしまう。
欲望を捨て、霞を食べ、孤高の存在として在るはずの仙人であるヒル魔。
たかがこの子供一人にどれだけ振り回されているのか。
目を覚ませ、と己に内心語りかけ、ヒル魔は屋敷へと向かう。
大した距離じゃないのに、身体に響く。
この弟子の、柔らかさと重さにヒル魔の神経が追いつめられていく。
これは何だ。
今腕に抱いているこのおんなは、何だ。
ふっくらと柔らかい唇を視界の端に入れてしまい、ヒル魔は急に喉の渇きを覚えた。
らしくない。
あってはならない。
警鐘と心音が鳴り響く中、ヒル魔はごくりと喉を鳴らし、そんな自分に更に一度瞬いた。
『人は食べたものから出来ているんです』
ならば俺もお前と同じ、人と同じものでできているという話じゃないか。
欲を捨てたはずの仙人が。
欲のある人と同様に。
――――目が覚めてしまった。
欲がヒル魔の中で目覚める。
鎌首をもたげたそれは、月光さえ届かない場所で熱く蠢いた。
***
まゆみ様リクエスト『桜雪奇談で、美しく成長したまもりを異性として意識してしまうヒル魔』でした。普通にどきっとしてカワイイ感じのを書くつもりが、なんでこんなに欲丸出しに・・・。正直に言えばものすごく楽しかったです(笑)リクエストありがとうございましたー!!
まゆみ様のみお持ち帰り可。
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HN:
鳥(とり)
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性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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