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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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(ヒル魔←まもり)

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有能なマネージャーである姉崎まもりは、使った救急箱をしまいに部室に戻った。
ドアを開けると、日の光に照らされて室内が殊更白く見える。
埃が溜まっちゃうから、後で掃除しなきゃ。
そんなことを考えながら足を踏み入れた瞬間、ヒル魔くんがいつも座っている椅子に目がいく。
無造作に置かれるパソコン、マシンガン。彼の私物が何の変哲もなく置かれている。 
彼の日常がここにある。
唐突にまもりの目から涙が溢れた。
ぼろぼろと形容するにふさわしい。
涙は流すが声は出さない。
だがこれはどこをどう見てもこれは号泣。

性別が同じ訳でもなく。
年が隔たっているわけでもなく。
国が違うわけでもなく。
言語が違うわけでもなく。
あまつさえ同じ部活のキャプテンとマネージャーなんて理想的な位置関係で。
互いをちゃんと認めあえる、そんな位置にいられて。
環境が整っているからって好きになるわけでもないけれど。
肝心のヒル魔くんの心が私に向いてないなら何の意味もないって気づいたの。
こんなに条件が整っているのに、うまくいかないのってバカみたい。

嫌いなままだったらよかったのに。

「何ダラダラやってんだ、糞マネ!」
扉が開く音と共に呆れた声が聞こえてきて、私はそのまま飛び上がった。
多分床から本当に浮いたと思う。
まずい、またからかいのネタを提供してしまった、と思ったけども涙は急に止まらない。
諦めてそのまま振り返ると、彼の眉がぴく、と上がった。
「戻って来ねえから何かあったかと思ったが・・・」
室内をぐるりと見回してもまもりが号泣するに至る物がなにもなくて、ヒル魔は不審そうな顔を隠しもせずまもりを見る。
「何があった?」
「別に、なにも」
言いながら涙を拭おうとしたら、顔にタオルを押しつけられた。
「変に擦ると更に見られねぇ顔になるぞ」
「ありがと」
嫌味をスルーして素直にお礼を言うと、ヒル魔の顔はますます険しくなった。
「お前、本当に糞マネか」
「その呼び方は嫌ですけどそうです」
ぐす、と鼻を啜りつつ擦らずタオルで涙をただ吸い取らせる。タオルは日と埃の匂いがした。
「何もないのに泣けるのか」
「女の子はセンチメンタルなのよ」
「お前のどこがセンチメンタルだ、このリアリスト」
「男の子の方がずっとロマンチストよね」
嫌味っぽく言うことも出来なくて、いつもなら喧々囂々と交わされる会話が淡々と流れていく。
でもヒル魔はそれを指摘せずただ流している。
練習中だから、部室の外からは聞き慣れたかけ声が絶えず聞こえてくる。
私たち二人がいてもいなくてももうみんな普通に練習できる。
ヒル魔くんは自分の練習と私の涙を秤に掛けて、こちらを優先させる方を選んだようだった。
「で、本当のところはなんだ」
「好きな人がいてね」
「ホー」
「叶わぬ恋だって改めて思い知って涙に暮れました」
「ここで? さっき?」
「ええ、唐突に」
ヒル魔くんは困惑しきっているらしくて、眉間がものすごい皺を刻んでいる。
訝しげなヒル魔くんなんてそうそうお目にかかれないから、まもりは涙をこぼしながらも、フフ、と笑った。
途端にヒル魔くんの顔が怒りに変わる。
「謀ってんのか、糞マネ」
「いいえ。嘘なんて言ってないわ」
再び訝しげな顔に戻って脅迫手帳を捲るヒル魔くんは、自分がその対象だなんて思いもしないようだった。
それは私なんてそんな対象に見ていないってことで、そういうことに時間を割く人じゃないってこと。

ふと時計を見ると結構時間が経っていることに気が付いた。いくらなんでももう誤魔化せない。
「そろそろ練習戻らないとまずいわね」
「その顔でか」
「ヒル魔くんが、よ。私はここで溜まってたデータの処理やっておくわ」
みんなは適当に言いくるめておいて頂戴、と言ったらヒル魔くんはにやりと笑った。
「俺を使うのか。高いぞ」
「私がこの顔で出て行ったら、困るのはヒル魔くんだと思うけど?」
やっと涙は止まったけど、はれぼったい瞼はきっと酷い有様だろうと思う。借りたタオルも随分湿ってしまった。
「・・・チッ」
「行ってらっしゃい」
ひらひら、と手を振って見送る。何か言いたそうだったけど、結局ヒル魔くんは何も言わず去っていった。

人を好きになるのは、こんなにも苦しいことなのかしら。それともヒル魔くんだからかしら。
胸は苦しいし、喉は痛い。涙をこぼす瞼は熱いし、頭は処理速度を落とす。
いいことなんて一つもないのに。
(いとし いとしと いふ こころ)
その一文字だけが、私を捕らえて放さない。

***
切ない感じのを書きたかったんですが、そうでもない感じで微妙です。残念。
でも旧字体の『戀』(恋)を使った文章が書けたので、そこは満足です。
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