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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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世にも恐ろしいもの

(ヒル魔とむさしとまもり)

+ + + + + + + + + +
ちりちりする。
項の当たりに視線を感じる。
いつも悪意に満ちた視線を喰らっているので、その程度では応えはしないけれど。
視線を投げると途端に反らされるのはお約束。
呆れる程に単純で判りやすいその視線。

放課後の練習。
ムサシが蹴ったボールが飛びすぎて、自身で回収しに行っている間に、部員はほぼ全員が帰っていた。
帰っていなかったのはヒル魔一人。パソコンをいじっているが手慰みだとあからさまに判る様子。
部員全員の着替えが終わらないと部室の鍵が閉められないのだ。
遅くなった事への短い謝罪の後、ふと降りた沈黙にムサシは口を開く。
「お前たちはわかりやすいな」
「た・ち? 誰に言ってる糞ジジイ」
その言葉に、ヒル魔は聞き捨てならぬと顔を上げた。
「お前と姉崎。面白いくらいだ」
「糞マネが面白いんだろ」
「視線があからさますぎて口に出せんがな」
「うざくってたまんねぇ」
「まだ付き合わないのか」
「そんな関係じゃねぇって見りゃ判るだろ」
「まだ、だろ」
「なんだ随分と俗物だな糞ジジイ。学生に戻って浮かれてんのか」
小馬鹿にしたように笑っても、ムサシはにやりと唇を歪めただけだ。
「それはねぇな」
「どうかな」
テンポよく会話をしながらも身支度を整え終える。同時にヒル魔もパソコンの電源を落とし、銃器と共に鞄に放り込む。
「まあ、せいぜい周囲を巻き込まないで欲しいもんだ」
「好奇心は猫も殺すんだぜ」
「それでも見てみたいのが人情ってもんだ」
「よく言う」
にやにやと楽しそうな男二人は、すっかり暗くなった道を楽しげに帰っていった。


そして。
目の前にはとうとう意を決したような女が一人。
さあてどんな告白をするのやら。
「・・・あのね、ヒル魔くん」
「おー」
「ずっと言いたいと思ってたの」
「おー」
「あのね・・・」
躊躇いながら口を開くまもり。
しかしそこから出た言葉はヒル魔の頭脳を持ってしても予想外だった。
「ありがとう、それと、ごめんなさい」
「あ?」
「セナのこととか色々感謝したいこともあるし、誤解してたこともあって謝りたかったの。全部が全部感謝じゃないし謝罪じゃないんだけど、言っておきたいなあって」
ヒル魔の思考が一瞬止まる。返答がやや遅れた。
「・・・このところ、ちらちらこっち見てたのはそれか、糞マネ」
「そう。気づいてたの?」

わざわざ感謝と謝罪を。
わざわざ昼休みに屋上に呼び出して。
いかにもな、雰囲気の、この、場所、で!!!

「・・・・・・・どうしたの? ヒル魔くん」
返事がない。その顔を見ると恐ろしいくらいの無表情。
あからさまに不機嫌になったのだとまもりも気づいたが。
「あの、ヒル魔くん? ちょっと何か言って、ねえ!?」
いつもなら不機嫌になったら、そうなった理由をマシンガン付きで口にするヒル魔が、―――――沈黙した。


すぱーん、と部室のドアが勢いよく開けられる。
「聞け糞ジジイ!」
悪魔さながらのヒル魔の登場にもムサシは動じない。
「授業をさぼるのは感心せんな」
「てめぇだって部室で製図広げて仕事中だろうが! いいから聞け!」
ヒル魔は世間一般の考える不良ではないのでちゃんと授業に出る。
教師の話は聞いてはいないが、自席でパソコンをいじったり作戦を考えたりとそれなりに貴重な時間として捉えていた。
そんな彼がこんな時間にこんなところにいるなんて。
「珍しいな」
「糞マネの視線の意味は恋愛要素皆無の感謝と謝罪だったぞ」
ムサシの目が見開かれる。
お前に感謝と謝罪か、とムサシはヒル魔の言葉をわざわざ繰り返した。
そうだ、とヒル魔もわざわざ肯定した。
「で、それがショックだったのか」
「そんな自分に驚いて言葉も出なかった」
「・・・・・・・・・すごいな」
すごいとしか言えない。
ヒル魔に勘違いさせるまもりの発言も、口から生まれたに違いないヒル魔が衝撃のあまり彼女の前で黙ってしまったことも、こうやってムサシに報告に来てしまう程それがショックだったヒル魔の姿も。
「やっぱり告白されたかったのか?」
「断る気満々だった」
「じゃあいいじゃねぇか」
「される気はあった」
「プライドが傷ついたのか。そんな安いプライドあったのか、お前」
「糞ッ!!」

ムサシによって決定的にされた不機嫌は部活にも当然のように持ち込まれ、部員へと向けられた。
そして当然の結果マネージャーの怒りを買うのだが、ヒル魔がそれを凌駕する勢いで怒ったためもはや誰も止められなかった。
グラウンドに部員たちがどんどん倒れていく。きっと明日は試合後のような筋肉痛でみな苦しむのだろう。

それを他人事のように眺めながら、ヒル魔に哀れみを覚えるという珍しい体験をしたムサシは、万感の思いを込めてボールを空高く蹴り上げたのだった。

***
世にも恐ろしいものは怖い者知らずなムサシの好奇心発言やら悪魔の沈黙を上回り、天然なまもり姉ちゃんでした、というだけの話だったのですが、上手くまとまりませんでした・・・!
ギャグの切れ味がいい文章が書きたいです。
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