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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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冷たい夜

(ヒルまも)
※薄暗い感じです


 


+ + + + + + + + + +
着信音に顔を上げ、携帯電話に手を伸ばす。

「はい」
『雨降るぞ。傘持ってけ』

通話はそれで途切れる。
声はいつも素っ気なく、問いかけても返事はない。


空はよく晴れていて、雨の気配なんて微塵も感じない。
それでも私は傘を手に外に出る。
「まもり姉ちゃん、なんで傘持ってるの?」
「やー、日傘?」
「ううん。雨が降るのよ」
「雨が?」
空を見上げても雲一つ無い空。それでも私は笑ってみせる。
「降るのよ」


あれほどに晴れていた空は突如暗雲が立ちこめて夕刻には土砂降りになった。
人々が逃げまどう中、傘を差して私は歩く。
雨に閉じこめられたみたいに音が遠くて、光がなくて、世界が遠い。
ふらりと歩くその肩を不意に掴まれて、止められる。
目の前で轟音を立ててトラックが通過した。

声はない。
振り返れない。

奇妙な沈黙の後、手が離れて私は振り返る。
そこには誰もいない。


家に帰る。
誰も迎える人のない、冷たい夜ばかりが満ちている。

着信音に顔を上げ、携帯電話に手を伸ばす。

「はい」
『さっさと飯作れ。んで風呂入って寝ろ』

一方的に、見ているかのように告げる言葉。
実際に見ているのだ、彼は。
そして干渉するのだ、私に。


自分と同じ所に来ないように、と。

彼がこの世から姿を消しても、日はまた昇る。
どんなに悲しくても辛くても時は流れて傷を塞ごうとする。
周囲が、安穏とした毎日を過ごさせようとするのが苦痛で。
私は引きこもった。
誰の声も届かない深淵へ。

けれど。
そんな私を引き上げたのも、また、彼。
一言ずつ、告げては切れる通話。
確かに音は鳴るのに、確かに声が聞こえるのに、履歴も残らない通話。

これは私の妄想なのかもしれない。
それでも干渉は続く。


着信音に顔を上げ、携帯電話に手を伸ばす。





とうに電池なんてなくなった古い携帯電話が、冷たく手のひらに納まった。


***
連れて行く優しさと連れて行かない優しさと。
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