旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
ここはホテルだ。
願えば氷枕でも薬でも出てくる日本ではなく、ともすれば必要なものさえ足りないアメリカのホテル。
そうして私はフライトの都合でこのホテルに滞在していたのだけれど。
なぜだかそこにヒル魔がやってきたのだ。
平然とした足取りで、いつもの様子で。
「随分と糞貧相なホテルにお泊りデスネ」
「突然来て随分な言い方じゃないか!」
長時間続けば精神的に圧迫されるフライトの影響があるので、ホテルは可能な限りツインを取るようにしている。
貧相と呼ばれる筋合いはない、と怒っても彼はどこ吹く風だ。
「俺が単独で前もって予告して来たことがアリマスカ」
「そういうのを屁理屈というんだ! 大体君は私がまもりの父だという認識があるのかね!?」
ぷりぷりと怒って見せてもいつもケケケと高笑いして見せるだけの彼が、唇を歪める。
「ありますとも。本日はお義父サンにお願いがあって来たんデスヨ」
「何!?」
目をむく私の隣を抜けて、ヒル魔は悠々と私の滞在する部屋に入り、銃器の詰まったカバンを下ろし、ぐるりと室内を見回して一人頷く。
そうして。
「ツインでよかったデスネ」
「何・・・」
「俺と添い寝しねぇですんで」
「は!?」
目を剥く私の前で、ヒル魔は力なくベッドにへたり込む。
「な、ど、どうしたんだね?」
私が知る限り、彼がそういった姿を人に見せることはなかった。
一体どうしたのか、と近寄れば手のひらで覆った顔が青白い。
「・・・熱が出た」
「熱? 風邪か? それとも疲れ?」
「サアネ。時々出るんだよ」
声はかすれやざらつきもなく滑らかなままだ。
それがより一層違和感をかもし出す。
そういえば今日、廊下で言葉を交わす合間も顔色は悪かった、ような。
足も揺らがず表情も声も変わらずでは周囲が気づきづらいだろう。
けれどまもりなら気づくはずだ。あの聡い私の娘なら。
「まもりは?」
娘のまもりがいれば面倒を見てもらえるだろう、と思ったのに。
「忘れたのか? アイツ今日本に里帰りしてるだろ」
「・・・そうだった」
まもりは第二子出産で日本にいた。私ははやる気持ちを抑えつつ、仕事をしていたのだった。
次はヒル魔くんに似た男の子がいいな、と言って私を盛大に苛立たせたのもつい先日の話。
その時にヒル魔も傍らにいたはずだけれども。
「俺だけ仕事でこっちに来たんだよ」
どうしてもはずせなかった、と嘆息するその姿は随分力ない。
「それで一人じゃ寂しいから私を頼って来たという訳かね?」
わざと皮肉っぽく呟いたが。
ヒル魔はにやりと笑って口を開く。
「ソウデスヨ。お義父サンと一緒なら寂しくないデスカラネ」
「はっ!?」
硬直する私を他所にヒル魔はさっさとベッドにもぐりこみ、ひらりと手を振る。
「とりあえず解熱鎮痛剤。それと濡れタオルとスポーツドリンク寄越せ」
「あ・・・ああ」
指示されたとおりに妻が持たせてくれている常備薬の解熱鎮痛剤と、事前に買っておいたミネラルウォーターを渡す。
「とりあえず今買い物してくるから、他に必要なものは?」
「・・・適当な携帯食の甘くねぇ奴。あと氷」
わかった、と頷き外に出ようとする私に何かが投げつけられる。
「何・・・」
「それ使え」
それは財布だった。ずっしりと重い。しかもちらりと見ればそれは紙幣の厚みだ。
「なんなら手帳も持ってくか?」
便利だぞ、と黒革の手帳を振られ、私は慌てて首を振った。
そんな、人様の弱みが列挙された手帳なんて持ちたくもない!
そう思ったのが顔に出たのだろう、彼は手帳をあっさりしまうと、さっさと行って来いとけだるく傲慢に告げた。
<続>
願えば氷枕でも薬でも出てくる日本ではなく、ともすれば必要なものさえ足りないアメリカのホテル。
そうして私はフライトの都合でこのホテルに滞在していたのだけれど。
なぜだかそこにヒル魔がやってきたのだ。
平然とした足取りで、いつもの様子で。
「随分と糞貧相なホテルにお泊りデスネ」
「突然来て随分な言い方じゃないか!」
長時間続けば精神的に圧迫されるフライトの影響があるので、ホテルは可能な限りツインを取るようにしている。
貧相と呼ばれる筋合いはない、と怒っても彼はどこ吹く風だ。
「俺が単独で前もって予告して来たことがアリマスカ」
「そういうのを屁理屈というんだ! 大体君は私がまもりの父だという認識があるのかね!?」
ぷりぷりと怒って見せてもいつもケケケと高笑いして見せるだけの彼が、唇を歪める。
「ありますとも。本日はお義父サンにお願いがあって来たんデスヨ」
「何!?」
目をむく私の隣を抜けて、ヒル魔は悠々と私の滞在する部屋に入り、銃器の詰まったカバンを下ろし、ぐるりと室内を見回して一人頷く。
そうして。
「ツインでよかったデスネ」
「何・・・」
「俺と添い寝しねぇですんで」
「は!?」
目を剥く私の前で、ヒル魔は力なくベッドにへたり込む。
「な、ど、どうしたんだね?」
私が知る限り、彼がそういった姿を人に見せることはなかった。
一体どうしたのか、と近寄れば手のひらで覆った顔が青白い。
「・・・熱が出た」
「熱? 風邪か? それとも疲れ?」
「サアネ。時々出るんだよ」
声はかすれやざらつきもなく滑らかなままだ。
それがより一層違和感をかもし出す。
そういえば今日、廊下で言葉を交わす合間も顔色は悪かった、ような。
足も揺らがず表情も声も変わらずでは周囲が気づきづらいだろう。
けれどまもりなら気づくはずだ。あの聡い私の娘なら。
「まもりは?」
娘のまもりがいれば面倒を見てもらえるだろう、と思ったのに。
「忘れたのか? アイツ今日本に里帰りしてるだろ」
「・・・そうだった」
まもりは第二子出産で日本にいた。私ははやる気持ちを抑えつつ、仕事をしていたのだった。
次はヒル魔くんに似た男の子がいいな、と言って私を盛大に苛立たせたのもつい先日の話。
その時にヒル魔も傍らにいたはずだけれども。
「俺だけ仕事でこっちに来たんだよ」
どうしてもはずせなかった、と嘆息するその姿は随分力ない。
「それで一人じゃ寂しいから私を頼って来たという訳かね?」
わざと皮肉っぽく呟いたが。
ヒル魔はにやりと笑って口を開く。
「ソウデスヨ。お義父サンと一緒なら寂しくないデスカラネ」
「はっ!?」
硬直する私を他所にヒル魔はさっさとベッドにもぐりこみ、ひらりと手を振る。
「とりあえず解熱鎮痛剤。それと濡れタオルとスポーツドリンク寄越せ」
「あ・・・ああ」
指示されたとおりに妻が持たせてくれている常備薬の解熱鎮痛剤と、事前に買っておいたミネラルウォーターを渡す。
「とりあえず今買い物してくるから、他に必要なものは?」
「・・・適当な携帯食の甘くねぇ奴。あと氷」
わかった、と頷き外に出ようとする私に何かが投げつけられる。
「何・・・」
「それ使え」
それは財布だった。ずっしりと重い。しかもちらりと見ればそれは紙幣の厚みだ。
「なんなら手帳も持ってくか?」
便利だぞ、と黒革の手帳を振られ、私は慌てて首を振った。
そんな、人様の弱みが列挙された手帳なんて持ちたくもない!
そう思ったのが顔に出たのだろう、彼は手帳をあっさりしまうと、さっさと行って来いとけだるく傲慢に告げた。
<続>
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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