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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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甘い花

(ヒルまも)



+ + + + + + + + + +
まもりは鼻歌交じりで紅茶を注ぐ。
事前に温められたカップに注ぐ液体は濁りなくすっきりと澄んでいる。
ふくよかな香りが漂う中、ソーサーにケーキを乗せて。
まもりは笑顔で席に着いた。
すなわち、悪魔の同席する部室のカジノテーブルに。
「・・・で、一人お茶会デスカ」
「食べたいの?」
あきれた声に応じるまもりの声は純粋に不思議そうだった。
「いるか、んなもん」
「そうよね」
既に彼の手元には彼好みの真っ黒なコーヒーが用意されている。
いつもならカフェオレ等にしてまもりもご相伴に預かるのだが、今日は紅茶の気分だったのだ。
それもこのケーキに合わせたおとっときの茶葉で淹れた紅茶を。
部員たちに差し入れたケーキ。
一応ヒル魔も数に入れて作ったのだけれど、案の定食べなかったので予想通りまもりの分となった。
「なんだその花」
ヒル魔が嫌そうに見るケーキ。ドーム型の白いムースの上に、色鮮やかな小花が乗っていた。
「これ? かわいいでしょう、本物のお花なのよ」
まもりはにっこりと笑う。
「庭で咲いたパンジーなんだけど、素揚げして粉砂糖ふって食べられるようにしたの」
黄色と白と紫の、ごく一般的な花。
けれどそれを聞いてヒル魔が心底嫌そうな顔でまもりを見る。
「・・・なによ、その顔」
「テメェの食い意地には恐れ入った」
「なっ! お花食べるののどこが悪いのよ!」
「テメェ何でも甘くすりゃ喰えるとでも思ってねぇか」
「そんなことないわよ」
む、と眉を寄せながらまもりはムースにフォークを入れた。
ふるりと揺れるそれを口に入れる。
淡雪のようにそれは口で蕩けて消えた。
「おいしい」
「ケッ」
嫌そうに眸を眇め、ヒル魔はパソコンに視線を戻す。
それを横目に見ながらまもりはカップを傾ける。
しばらく沈黙が続く。
ソーサーに乗せたケーキはさほど時を待たず花を残して消えた。
残った花をつまみ上げ、まもりはヒル魔をちらりと見る。
不機嫌そうな、苦々しい顔つき。
それを解いてからでないと食べるなんて、きっと無理だ。
甘くして甘くして、そうしてようやく食べられるのだ。
けれど、もし。
「ヒル魔くんを食べるならシロップ漬けにでもしなきゃ無理ね」
「アァ!?」
胡乱げに視線を向けるヒル魔の前で、まもりはにんまりと笑う。
笑って、口を開いて。
その中に花を放り込んで噛み潰す。
甘ったるい、そうしてどこか青い命の匂いがした。



***
花を食べる人を書くのがなんとなくブームです。
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