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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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天然アルケミー(1)

(軍人シリーズ)
※『言葉はなくても』の後に位置します。


+ + + + + + + + + +
まもりはけだるい体を起こした。
長期の行軍があり、しばらくぶりの自宅。
時折人を入れていたからか、生活には支障なかった。
慣れた寝床でここのところ体調が優れなかった自覚のあったまもりは懐いてくるヒル魔を押しのけてゆっくりと眠ったのだけれど。
どうにも、目が覚めた気がしない。
「オソヨウゴザイマス」
声に視線を向ければ、かなり拗ねた様子のヒル魔がまもりを伺っている。
休日とはいえ、すっかり身支度を整えている彼の様子にまもりは時計を探した。
その針が示す時間を見て、これは彼が拗ねるには十分な時間だな、と思った。
が、やはりだるい。
「・・・すみません、なんだか眠くて」
「随分よく寝てたぞ。まだ寝足りないとか抜かすか」
「・・・そう、ですね」
どこかうすぼんやりした様子に、ヒル魔は寝起き以外に具合が悪いのでは、と思ったようだ。
大股に近づき、まもりの髪を掻き上げる。額をつけてみたが。
「熱はねぇな」
「のどが痛いとか、咳が出るとかじゃないですからね」
まもりは一つ伸びをすると、立ち上がる。
「まあ、疲れでしょう。それよりも朝食、食べました?」
「その辺のを適当に」
「そうですか」
まもりは首を回しながら彼の言う適当な朝食を自らも食べるべく歩き出す。
そうして、少し立ち回れば眠気は遠のき、まもりはまたぞろ文句を言われつつも本を積み上げ久々の読書に勤しんだのだった。


そうして、さらに一ヶ月。
まもりはどうにも体にまとわりつくような倦怠感に首をかしげる日々を送っていた。
顔色が優れないので体調が悪いのでは、と周囲に心配されるが熱を測っても変化はないし、その他に目立った異変がないのだ。
「テメェ医務室行け」
「嫌ですよ」
ヒル魔の言葉にもまもりはそっけない。
「調子の悪そうな顔してっと糞ガキどもが煩くて仕方ねぇんだよ」
「普通です」
「どこが」
「どこも」
ヒル魔にきつく睨みつけられてもまもりは平然と作戦を練っている。
が、資料の本をとろうと立ち上がった瞬間。
「・・・っ」
ぐらりと彼女の体が傾いだ。
咄嗟にヒル魔が支える。
「どこが普通ナンデスカネ」
刺々しい声に、まもりはふっと顔を上げた。
「・・・貧血っていうの、でしょうか」
まもりはどこか感心したような声で呟く。
「本当に目の前が白くなって意識が途切れるんですね」
本で読んだとおりです、と口にした彼女に、ヒル魔は深く深ーく嘆息した。
「ったく!!」
「あ」
ぐい、とヒル魔はそのまままもりを抱え上げた。
「テメェは本当に頑固で言うこと聞きやしねぇな!!」
派手な音を立てて扉をけり開けるヒル魔に、まもりは眉を寄せる。
「ちょっと、扉を足で開けないでくださいよ」
「そこはどうでもいいだろうが!」
イライラと返すヒル魔はまもりを抱えているとは思えないほど軽々と歩いていく。
すれ違う部下が目を丸くして足を止めるが、ヒル魔たちは気にも留めない。
「大体テメェは人のこと口うるさく言うくせにテメェの自己管理はなってねぇじゃねぇか!」
「大将に言われたくないですよ」
「貧血起こす糞虚弱元帥なんぞの言い訳は聞かねぇ」
「いたって健康体です!」
にぎやかな様子にああいつもの痴話げんかなんだ、と妙に生暖かい視線で見送られる二人は、医務室へとたどり着く。
滅多に医務室になんてやってこないヒル魔だが、その腕にいるのがまもりということで、軍医の高見はすぐに察して椅子を勧めた。
「どこかお加減が悪いのですか?」
「糞ガキ元帥の様子がおかしい」
「だれが子供ですか! 私はごく普通です!」
む、と眉を寄せるまもりに高見は苦笑する。
「まあまあ。少々顔色がよろしくないようですね。一応検査してみましょうか」
「必要ないです。帰ります」
立ち上がって退出しようとするまもりの肩をヒル魔が掴んで椅子に引き戻す。
「テメェが不調じゃねぇっつーんならここで検査受けてなんでもないって証明しろ」
「そうですよ。検査自体は大して時間もかかりませんし、いいでしょう?」
二人に説得され、まもりはしぶしぶと頷いた。

<続>
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