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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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リトルパワーゲーム(下)



+ + + + + + + + + +
窓の外こに見えるのは、三人の女生徒の影。
最初は低く話し合っていたようだが、不意にけたたましい声が響いた。
「何よ! あたしが彼の彼女だって言ってるでしょ!?」
「あんたこそ嘘言わないで! 私だけって彼は言ったんだから!」
「そんなことない! アタシのことかわいいから、って言ったのよ! あんたたち嘘ほざかないでよ!!」
「なんですって!?」
大声で罵り合い、もみ合う気配に男は血の気を失い、あからさまに狼狽する。
「な、ど、・・・して、ここに、あいつらが」
「権力を手に入れたら誇示したくなるのが自分だけだと思ってたんですか。浅慮にもほどがありますよ」
護の声は始終静かで、平坦だった。
それが余計に空恐ろしく聞こえるのは気のせいだろうか。
男が見つめる護は薄く笑みを浮かべている。
「どんな些細な権力でも持っていれば使いたくなる。ましてや自分で努力し得たものではなく、不意に転がり込んできたのなら尚更」
自分の彼氏が生徒会長になった。これで私も彼女として存分に権力を使える。
そう考えるのはごく当たり前のことだ。
「な・・・何様のつもりだ、テメェ! 人が下手に出てれば付け上がりやがって!!」
男の焦りや戸惑い、そういった負の感情が形を変え、その矛先は護に向かう。
けれど護はゆるりと口角を上げさえした。
「何様は貴方だ、生徒会長様」
護はパソコンをぱくりと閉じると、立ち上がった。
男を完全に無視し、女たちが罵り合う廊下へと出ようとする。
「待て! 開けるな!」
その声にも護は頓着しない。
すたん、と開いた扉の向こう、一瞬動きを止めた女たちに護は小首を傾げて見せる。
「生徒会長の彼女さん?」
三人が一斉に頷き、一様に互いを睨み付ける。
それに気づかないふりで護は室内から逃げ出そうとする男に声をかけた。
「会長、彼女がお越しですよ。誰が彼女かはわかりませんが」
その声に女たちは一斉に声を上げる。
「あたしよ! メールで直接呼び出されたんだから!」
「私だって!」
「ちょっと引っ込んでて! 彼女はアタシよ!!」
皆が口々に自分こそが呼び出された、と言い合う。
背後からは呻くようにそんなメールなんて送っていない、と呟く声が聞こえたが、護は当然聞き流した。
「そうですか、それなら生徒会長に直接確認なさった方がいいんじゃないですか?」
護ににっこりと笑って室内を指差され、女たちは我先にと室内になだれ込む。
「ちょっと!? どういうこと!?」
「アタシに内緒でこんな女どもに手ェ出してたってこと!?」
「この子達嘘ついてるんでしょ!? ねぇ、ホントのこと言ってやってよ!!」
口々にまくし立てられ、逃げ場を失った男は護に助けを求めようとしたが、彼はもうとっくにその場を立ち去っていた。
もっとも、助けを求めたって手を差し伸べるような殊勝さは護にはない。
そもそも女たちを呼び集めたのは彼だった。


護は人気のない廊下を歩いていく。
とんだ茶番に巻き込まれてしまった。剣道部の練習に遅れた理由をどうするか、色々考えている。
生徒会長に副会長に誘われた、という言い訳は自分の名誉のために口にはしたくなかった。
たかが生徒会長程度の権力を傘に着られても馬鹿らしいとしか思えない。
なぜなら護の---正確には父を筆頭としたほぼ家族全員で共有する脅迫データベースはその気になれば国一つ滅ぼすのだって可能なのだ。
そういった大きな武器を持っているから、小物の権力なんていうちゃちなおもちゃには興味をそそられない。
そうして、そんな小物の権力くらいで大騒ぎになっている男の成れの果てなんてもっと興味をそそられなかった。

ただ一つ、護が思ったことは。
三股くらいで修羅場なんて随分と要領が悪いなぁ、ということだけだった。


***
なんだかんだ言って巻き込まれる妖介やそれに付き合うアヤのような優しさはなく、むしろ引っ掻き回す方に走る護はこのまま大きくなるんだろうなあ・・・。父を凌ぐとんでもない悪魔になって欲しいと常々思ってます。
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