旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
激しく降りしきる雨が、あっという間に全身をずぶ濡れにしていく。
水気を含んで、防水加工をしているはずの軍服もじっとりと重くなる。
周囲の空気もそれと同じくらい、いやそれ以上に重く暗く静まり返っている。
まもりは、足元の穴を見下ろす。
その中に横たわるのは、ほんの数刻前まで彼女の部下として動いていた年若い隊員だった。
『領域』を超えて来た魔獣が暴れていると連絡が入り、術師が到達するまでその場に魔獣を留め置くのが今回の任務だった。
通常であればなんてことのない任務だった。
それこそ何度も繰り広げられてきた任務。
その一瞬の油断を見抜いたかのように襲い掛かってきた魔獣は、恐ろしい毒牙を持っていた。
そうしてその毒牙は実にあっけないほどに、まもりの目の前で、部下の命を奪い取ったのだ。
「大佐」
術師に声をかけられ、まもりは頷いた。
遺体をそのまま放置すると毒の成分が飛散してしまう。
空気が汚染されるので街まで運び込むことが出来ない。
土に埋めてしまえば毒は地に染み込んでいずれは『領域』の側に帰るのだ。
そのため、遺体はこの場で埋葬される。
現に今の段階で、彼の傷口からどす黒い毒の揺らめきが目視できるのだ。
逡巡する暇は、なかった。
「土を」
その声に、雨でぬかるんだ土をどさどさと遺体にかぶせていく。
誰もが事務的に作業をし、誰も泣かなかった。
泣いていても、雨であれば誰も気づかない。
そう、誰も。
それぞれが待機するテントに引きこもったまもりは、黙々と報告書を書いていた。
今回の犠牲者は一人。ほかに被害なし。
その一行が、ひどく痛くて重かった。
「おい」
ばさりと音を立ててテントの入り口が捲り上げられ、ヒル魔が顔を出した。
「飯、食え」
「・・・はい」
食べたくない、とは思ったが、自分の意思とは関係なく今は食べなければならない。
ここは戦場、生き残ることが一番の仕事。
そのために食事一回とて手を抜き食べないわけにはいかないのだ。
渡されたトレイの食事に義務的に口をつけ、黙々と嚥下する。
「テメェも糞ヒデェ面だなァ」
「・・・それは」
当たり前だ、とまもりは俯く。
今回の作戦も、立てたのはまもりだ。
部下が己の力不足を嘆くのはお門違いだ。
まもりが彼らの力量を見極め、きちんと指示しなければならなかったのに。
あのときにあの位置に彼がいて、こういう結果になるのだとどうして事前に判断できなかったのか。
どうして。
どうして。
何度も何度も繰り返し、自分を責める。
それは責任者として当たり前のことだ。
上に立つものは、手足のごとく部下に動くよう指示する代わりに、彼らを守る責任があるのだから。
食事を終えて再び報告書に向かおうとするまもりにヒル魔は苦々しげに舌打ちする。
「・・・来い」
「え」
彼はやや強引にまもりを外に連れ出した。
雨は上がり、星空が広がっている。
空気は湿っていたが、空の様子を見れば明日にはすっきりと晴れるだろうという推測は簡単についた。
見張り役で残っていた部下たちを追い払い、焚き火の側に設えられていた簡易椅子に腰掛ける。
まもりはその向かいに同じようにあった椅子に腰掛けた。
<続>
水気を含んで、防水加工をしているはずの軍服もじっとりと重くなる。
周囲の空気もそれと同じくらい、いやそれ以上に重く暗く静まり返っている。
まもりは、足元の穴を見下ろす。
その中に横たわるのは、ほんの数刻前まで彼女の部下として動いていた年若い隊員だった。
『領域』を超えて来た魔獣が暴れていると連絡が入り、術師が到達するまでその場に魔獣を留め置くのが今回の任務だった。
通常であればなんてことのない任務だった。
それこそ何度も繰り広げられてきた任務。
その一瞬の油断を見抜いたかのように襲い掛かってきた魔獣は、恐ろしい毒牙を持っていた。
そうしてその毒牙は実にあっけないほどに、まもりの目の前で、部下の命を奪い取ったのだ。
「大佐」
術師に声をかけられ、まもりは頷いた。
遺体をそのまま放置すると毒の成分が飛散してしまう。
空気が汚染されるので街まで運び込むことが出来ない。
土に埋めてしまえば毒は地に染み込んでいずれは『領域』の側に帰るのだ。
そのため、遺体はこの場で埋葬される。
現に今の段階で、彼の傷口からどす黒い毒の揺らめきが目視できるのだ。
逡巡する暇は、なかった。
「土を」
その声に、雨でぬかるんだ土をどさどさと遺体にかぶせていく。
誰もが事務的に作業をし、誰も泣かなかった。
泣いていても、雨であれば誰も気づかない。
そう、誰も。
それぞれが待機するテントに引きこもったまもりは、黙々と報告書を書いていた。
今回の犠牲者は一人。ほかに被害なし。
その一行が、ひどく痛くて重かった。
「おい」
ばさりと音を立ててテントの入り口が捲り上げられ、ヒル魔が顔を出した。
「飯、食え」
「・・・はい」
食べたくない、とは思ったが、自分の意思とは関係なく今は食べなければならない。
ここは戦場、生き残ることが一番の仕事。
そのために食事一回とて手を抜き食べないわけにはいかないのだ。
渡されたトレイの食事に義務的に口をつけ、黙々と嚥下する。
「テメェも糞ヒデェ面だなァ」
「・・・それは」
当たり前だ、とまもりは俯く。
今回の作戦も、立てたのはまもりだ。
部下が己の力不足を嘆くのはお門違いだ。
まもりが彼らの力量を見極め、きちんと指示しなければならなかったのに。
あのときにあの位置に彼がいて、こういう結果になるのだとどうして事前に判断できなかったのか。
どうして。
どうして。
何度も何度も繰り返し、自分を責める。
それは責任者として当たり前のことだ。
上に立つものは、手足のごとく部下に動くよう指示する代わりに、彼らを守る責任があるのだから。
食事を終えて再び報告書に向かおうとするまもりにヒル魔は苦々しげに舌打ちする。
「・・・来い」
「え」
彼はやや強引にまもりを外に連れ出した。
雨は上がり、星空が広がっている。
空気は湿っていたが、空の様子を見れば明日にはすっきりと晴れるだろうという推測は簡単についた。
見張り役で残っていた部下たちを追い払い、焚き火の側に設えられていた簡易椅子に腰掛ける。
まもりはその向かいに同じようにあった椅子に腰掛けた。
<続>
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鳥(とり)
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性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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