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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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とろける記憶(下)


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とろり。
     とろり。


まもりが目を覚ますと、隣にヒル魔が眠っていた。
起き上がって、いつものように身支度を調えようとしたが、ヒル魔の手がそれを止める。
「何?」
「まだ寝てろ」
「え、だってもう朝だし、仕事に行かなきゃ」
「テメェは働いてねぇだろ」
そう言われて、まもりはぱちりと瞬きした。
「そう、だっけ」
「そうだ」
言い切られてまもりは小首を傾げたが。
あたたかいベッドに横たわると再び眠気が襲ってきた。
「・・・ヒル魔くんは?」
「俺は仕事だ。だが、ここにいる」
「そうなの?」
「いつもそうだろ」
「・・・そうだっけ」
眠り次第にぼやける視界の中で。
金色がちかりと閃いた。


とろり。
     とろり。


ベランダで洗濯物を干しているまもりの背後。
リビングで、ヒル魔とムサシが会話している。
「なんで入院させないんだ」
「手の施しようがねぇんだと」
淡々とした声に、ムサシは苦々しげに舌打ちした。
丁度洗濯物を干し終えて室内に戻ってきたまもりに気づき、近づく。
「姉崎」
低い声で名を呼ばれ、まもりはにっこりと笑った。
「ええと、どちら様ですか?」
その時彼は愕然とした表情もそのままに、ゆっくりとヒル魔を振り返った。
「糞ジジイ。昔からの付き合いだ」
「ふうん?」
ヒル魔の表情はどこまでも平然としていた。


とろり。
     とろり。


まもりは椅子に座ったまま、しきりに左手の薬指を触っていた。
「何やってんだ」
「あ、なにかへんだなあって」
「ずっと嵌めてんのにか」
ケケケ、と笑われてまもりは手元を見る。
細い金色が光を放っている。
「これ、なに?」
「指輪だ」
ふうん、と言いながらそれをいじっていたが。
「なあ」
呼びかけられ、まもりは彼の顔をまっすぐに見た。
「セナって知ってるか」
まもりは小首を傾げる。
「ううん。だれのこと?」
その瞬間。ヒル魔は勝ち誇ったように声を上げて笑った。
「だれ?」
「いや。知らねぇなら、いい」
ヒル魔はまもりの手を取った。
恭しく傅かれる格好になっても、まもりは穏やかに笑みを浮かべたまま口を開く。
「ねえ、あなたはだれ?」
その言葉にも笑って、ヒル魔はまもりの手に唇を落とす。
「俺はお前の夫だ」
「おっと、ってなに?」
「ずっとお前と一緒にいる奴のことだ」
「ふうん」
それがひどく楽しそうだったので、まもりもつられて笑顔になる。
「まもり」
呼ばれ、抱き寄せられ、唇に暖かな彼のそれを受け止めながら考える。


とろり。


もしかして。
『まもり』って私の名前なのかしら、と。




***
好き嫌いが分かれそうな話です。あえてノーコメント。
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