旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
その場の空気が凍るような、という表現は正しいのだと、妖介はこんな時なのに思ってしまった。
「・・・は?」
「・・・え?」
高見夫妻の引きつったような声が聞こえるが、既に彼は頭を下げた状態なので顔が見えない。
そして妖介の左手にいるその二人の一人娘にして、彼の彼女である小夏が満面の笑みを浮かべて、だから、と続ける。
「赤ちゃんが出来たの」
未だ可愛らしいと表現するのがふさわしい声音でそう告げて。
「・・・すみません!!」
高見夫妻の突き刺さる音がしそうな視線を間近から受けて、妖介は冷や汗を浮かべ、更に頭を下げた。
そもそもは、ヒル魔の唐突な発言から端を発した。
「姉崎」
食器を洗い終えてリビングへとやってきたまもりを、ソファで座っていたヒル魔が呼ぶ。
「なに? ヒル魔くん」
「明日からアメリカに行く」
「どうしたの?」
その言葉にまもりは目を丸くした。アメリカに行くこと自体は大して驚きではない。
大概、いつどこに行くという一言さえなくふらりと消えて、またふらりと帰ってくる根無し草のような生活態度なのだ。
だからまもりは彼がそう告げたことに純粋に驚いた。
「仕事だ」
その言葉に気を取り直し、尋ねる。
「へえ・・・。何日くらい行くの?」
「二年以上」
「へえ・・・二年・・・二年!?」
二日じゃなくて、二年!? とまもりは叫ぶ。予想通りの反応なのだろう、ヒル魔は平然としたままだ。
「おー。そろそろ本詰めなんで、本部に行くことにした」
「何がどう本詰めなんだかどこが本部だか知らないけど、・・・本当に?」
「嘘ついてどうする」
「そうよね」
淡々と告げる声に嘘はない。まもりはへえ、とかふうん、としきりに感心するように頷いている。
「二年以上ってことは、二年経っても戻ってこない可能性があるってことね?」
「そうだな。何年かかるかはまだ不明だ」
「そっか・・・」
まもりは少し考える。
アヤは結婚して家を出ていて、現在司法試験に合格し、来春法科大学院を卒業する見込み。
妖介は卒業と医師国家資格の試験を来春に控えているが、しっかり勉強しているので問題なく合格できるだろう。
護は大学二年で今年二十歳になり、あかりは七歳、小学生だ。
どの子も父親が離れることで精神的に不安定になる年頃ではない。
「準備は?」
「出来てる」
それにまもりは肩をすくめた。パスポートと夥しい銃器を詰め込んだトランク一つでおそらくは旅立つのだろう。
何度も行き来しているのだろうから、向こうの住居に必要な物は揃っているのだろうし。
でなければもっと前に言うはずだ。伊達に長年連れ添っていないし、彼の本質も大概変化ないのだ。
「今日は全員で壮行会開かなきゃね。アヤも呼んで」
「一生行ったきりって訳じゃねぇ。大げさにすんな」
「だって、単身赴任に行くお父さんには盛大にエールを送らなきゃ!」
「ケッ」
鼻を鳴らすヒル魔にも、まもりは嫣然と笑って見せただけだった。
<続>
「・・・は?」
「・・・え?」
高見夫妻の引きつったような声が聞こえるが、既に彼は頭を下げた状態なので顔が見えない。
そして妖介の左手にいるその二人の一人娘にして、彼の彼女である小夏が満面の笑みを浮かべて、だから、と続ける。
「赤ちゃんが出来たの」
未だ可愛らしいと表現するのがふさわしい声音でそう告げて。
「・・・すみません!!」
高見夫妻の突き刺さる音がしそうな視線を間近から受けて、妖介は冷や汗を浮かべ、更に頭を下げた。
そもそもは、ヒル魔の唐突な発言から端を発した。
「姉崎」
食器を洗い終えてリビングへとやってきたまもりを、ソファで座っていたヒル魔が呼ぶ。
「なに? ヒル魔くん」
「明日からアメリカに行く」
「どうしたの?」
その言葉にまもりは目を丸くした。アメリカに行くこと自体は大して驚きではない。
大概、いつどこに行くという一言さえなくふらりと消えて、またふらりと帰ってくる根無し草のような生活態度なのだ。
だからまもりは彼がそう告げたことに純粋に驚いた。
「仕事だ」
その言葉に気を取り直し、尋ねる。
「へえ・・・。何日くらい行くの?」
「二年以上」
「へえ・・・二年・・・二年!?」
二日じゃなくて、二年!? とまもりは叫ぶ。予想通りの反応なのだろう、ヒル魔は平然としたままだ。
「おー。そろそろ本詰めなんで、本部に行くことにした」
「何がどう本詰めなんだかどこが本部だか知らないけど、・・・本当に?」
「嘘ついてどうする」
「そうよね」
淡々と告げる声に嘘はない。まもりはへえ、とかふうん、としきりに感心するように頷いている。
「二年以上ってことは、二年経っても戻ってこない可能性があるってことね?」
「そうだな。何年かかるかはまだ不明だ」
「そっか・・・」
まもりは少し考える。
アヤは結婚して家を出ていて、現在司法試験に合格し、来春法科大学院を卒業する見込み。
妖介は卒業と医師国家資格の試験を来春に控えているが、しっかり勉強しているので問題なく合格できるだろう。
護は大学二年で今年二十歳になり、あかりは七歳、小学生だ。
どの子も父親が離れることで精神的に不安定になる年頃ではない。
「準備は?」
「出来てる」
それにまもりは肩をすくめた。パスポートと夥しい銃器を詰め込んだトランク一つでおそらくは旅立つのだろう。
何度も行き来しているのだろうから、向こうの住居に必要な物は揃っているのだろうし。
でなければもっと前に言うはずだ。伊達に長年連れ添っていないし、彼の本質も大概変化ないのだ。
「今日は全員で壮行会開かなきゃね。アヤも呼んで」
「一生行ったきりって訳じゃねぇ。大げさにすんな」
「だって、単身赴任に行くお父さんには盛大にエールを送らなきゃ!」
「ケッ」
鼻を鳴らすヒル魔にも、まもりは嫣然と笑って見せただけだった。
<続>
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鳥(とり)
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女性
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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