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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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悪魔の囁き(3)





+ + + + + + + + + +
まもりが初勤務を終え、笑顔で帰宅する。
「ただいま!」
「おかえりなさーい!」
とてとてとあかりが顔を出す。
「お母さん、お父さんがね・・・」
あかりが何かを言おうとする前に、甘い匂いがあかりの鼻孔を擽る。
それにあかりはぱっと顔を輝かせた。
「おかあさん、シュークリームの匂いがする!」
「判る? 今日からお母さんは雁屋で働くことになったのよ」
「ホント!? すごいね、お母さん!」
「それでね・・・じゃーん! おみやげよ!」
「わあ・・・!」
あかりはまもりの差し出した箱に喜色満面となる。
そこにはたくさんのシュークリームが並んでいたから。
「あ、母さんお帰りなさい」
騒ぎを聞きつけ、勉強していた妖介が顔を出した。
「あれ、どうしたのそれ。買ったの?」
「ううん、売れ残っちゃったの。廃棄処分するって言うから、貰って来ちゃった」
「はいきしょぶん?」
「捨てちゃうってことよ。勿体ないから貰ったの」
「貰えるの!?」
あかりがきらきらと瞳を輝かせる。
「お母さんがお仕事すると、雁屋のシュークリームが貰えるのよ」
「すごい!! お母さん、お仕事頑張って! あかり応援する!」
「ありがとう!」
シュークリームの箱を妖介に預け、熱い抱擁を交わす二人を見つつ妖介はほんの十数分前の事を思い返す。
先程ヒル魔から電話が掛かってきたのだ。
『あかりに代われ』
有無を言わさないその声に、妖介はあかりに電話を渡した。
おそらくあかりを使って仕事を辞めさせようと算段したであろうヒル魔の目論見は失敗したな、と察して肩をすくめたのだった。


ヒル魔は盗聴器から聞こえてきた会話に、盛大に舌打ちした。
「糞!!!」
「ど、どうしました?!」
「何かありましたか?!」
慌てて飛んでくる部下にヒル魔はマシンガンを向け、何でもないから仕事に戻れと告げる。
泡を食って戻る連中に再び舌打ちをしつつ、ヒル魔はギリギリと歯がみした。


早朝、鳴り響いた電話にまもりは目を覚ます。
「もしもし・・・」
寝ぼけ眼で電話に出たまもりの耳に、刺々しい声が響いた。
『早朝に申し訳アリマセンネェ糞奥様』
「ヒル魔くん。どうしたの?」
『どうしたの、じゃねぇ! テメェ人がいねぇのをいいことに、仕事なんざしやがって!』
「いいじゃない、ヒル魔くん今アメリカにいるんだし、迷惑になってないでしょ?」
『迷惑とかそういう問題じゃねぇ! 金に困ってないんだったら働く必要ねぇだろうが!』
「んもう、何度も言ったけど、私は自分の食い扶持くらい自分で稼いでみたいの!」
『そんな糞雀の涙みたいな稼ぎで何抜かす』
「自分の食べる分くらいは稼げるわよ。じゃなきゃ、ヒル魔くんがどれだけ苦労して生活費を稼いでるか判らないでしょう!」
まもりは一呼吸置いて穏やかに続けた。
「実際に働いて稼いだお金って、とても大事に思えるわ」
それにふん、とヒル魔は鼻を鳴らす。
『金は金だろ』
「使い道によるわ。・・・教えてあげる。私の初お給料はね、ヒル魔くんにプレゼントを買うって決めてるの」
うふふ、とまもりは笑み声で続ける。
「楽しみにしててね。そっちは夜中でしょう? もう眠った方がいいわ」
『・・・何がどうあってもテメェは仕事をやめねぇんだな?』
低く唸るような声で言われても、まもりは慣れたものだ。
ころころと笑いながらそうよ、と軽く応じる。
『後悔するなよ』
まるで三文映画のような、どこかで聞いた捨て台詞と共に切られた電話。
それにまもりは大して気を悪くすることもなく、鼻歌交じりで着替えに向かった。
さあ、今日も仕事だ。

<続>
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