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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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悪魔の囁き(2)

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あっさりと日本にまもりを残し、ヒル魔が旅立った翌日。
妖介と護は朝食を摂りつつ話をする。
この二人より小学生のあかりの方が朝早く出掛けるので、自然食事の時間がずれてしまうのだ。
「きっと母さん連れて行くと思ったのにね」
「あっちで受け入れ準備してから呼ぶんじゃない?」
「あかりはどうすんの」
「俺たちが面倒見てもいいけど、俺多分そう時間割けないよ」
「僕が見てるから平気だよ」
ヒル魔の行動を予想し対策を考える二人の耳に、階段を下りる軽やかな足音。
「ねえ」
ひょこり、と顔を出すまもりの顔が、どことなく楽しそうだ。
「どうしたの?」
「何かあったの?」
尋ねる息子二人に、後ろ手に何かを隠しつつまもりは近寄る。
「うふふ」
口元をほころばせるまもりに、妖介と護は小首を傾げた。
「あのね、これ」
ぴらりと見せられたのは、一枚のチラシ。
「雁屋? 何かお買い得なの?」
「あー、今週フェアなんだ。いいなーこのフルーツシュークリーム食べたい・・・」
二人の感想に、まもりは首を振って笑みを深くする。
「見て欲しいのはここよ」
「「え?」」
まもりが指した箇所には、求人募集の文字が躍っている。
息子二人は視線を合わせ、そうしてまもりを見た。
「まさか、働く・・・とか、言うの?」
「そうよ」
まもりはぱあっと表情を明るくした。
「だってヒル魔くんがいないのよ! それも二年も! これはもう、働くべきだと神様が言ってるんだと思うの!」
悪魔の妻になって二十五年、それでも神様と口に出来るまもりはすごい、と息子二人は素直に感嘆した。
そうしてやっぱり働きたかったんだな、という感慨も持つ。
「どうしても?」
「父さんにばれたらきっと煩いよ?」
怒り狂った父がどう出てくるか判らず、母の身が心配なので二人揃ってそう忠告はしてみるけれど。
「・・・だめ?」
途端に小首を傾げ、見つめてくる青い瞳に二人は詰まる。
まもりは今まで仕事していなかったのが不思議なくらい何でも出来る人なのだ。
働かない理由に子育てという名目があったけれど、あかりも小学生になっている今、もうそう手も掛からないだろう。
まもりがアメリカに渡るとしたら、というシミュレーションを今していたばかりだし、あかりの面倒を護が中心になって見るのも問題はない。
何より働く先がまもりの愛する雁屋とくれば諦めさせるのは容易ではない。
甘い匂いを纏い付かせて帰っても、それで眉を顰めるアヤもヒル魔も今はいないし。
そうして、働く上で一番難関だったヒル魔の邪魔が直接は入らないという格好の状況。
縋るような視線を受けて、息子二人は嘆息した。
元よりあまり我が儘を言わない母の滅多にない頼みなら、断る理由もないのだ。
「・・・雁屋なら父さんも簡単に口出し出来ないよね」
「いいよ。そんなに働きたいなら、僕たち協力するよ」
その言葉に、まもりは満面の笑みを浮かべる。
「ありがとう!」
「じゃあ姉ちゃん達にも連絡しておかないとね」
護が早速携帯電話を取り出し、廊下へと歩いていく。
「なんで?」
「だって父さんの事だから、きっと盗聴器とかカメラとか仕込んでて、母さんの行動くらいお見通しだと思うんだよね」
「そうねえ」
「俺たちが母さんの味方するんだと知ったら、絶対他の誰かを使って邪魔するんだと思うんだよ。で、父さんが使える母さんに影響力のある人物って言ったら・・・」
「ああ、ムサシくんたちね」
まもりはぽん、と手を打つ。
「そう。後は誰が来ても俺たちが迎撃出来るし、理由を聞けばみんな納得するし」
護が電話を終えて戻ってきた。
「ムサシさんたちも応援してくれるってさ」
「よかった! 私、頑張るね!」
イキイキとした表情を浮かべたまもりに、息子二人も笑顔で頷いた。


一方その頃。
自分が不在になった途端に働く算段を立てたまもりに、盗聴器から聞こえてくる状況を聞いていたヒル魔は眉を寄せた。
「ったく、まだ諦めてなかったのか」
糞しつこい奴め、と舌打ちする彼は脳裏に描いていた予定図を書き換えざるを得なくなった。
渡米して一週間程でアメリカでの生活基盤を整え、まもりを問答無用で連れてくる予定だったのに。
まもりの糞シュークリームマニアぶりは現在も健在で、そうしてあの雁屋という店は今も有名店として名を馳せている。
今も変わらず雁屋が一番、と言い張るまもりが早々簡単に辞めるとは思えない。
こうなればあかりから働きかけさせるか、とヒル魔は策を巡らす。
もう年が年だとまもりあたりは言いそうだが、美しく年を重ねるまもりは身内のひいき目なしによくモテる。
見せないで済むのならそのまま家に置いておきたい、というのがヒル魔の考えである。
どうあってもまもりに仕事をさせるのが気にくわない、独占欲丸出しのヒル魔だった。

<続>
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