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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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ルーツ探索

(ヒルまも一家)

+ + + + + + + + + +
それは夕食の時間帯。護が口を開いた事に端を発する。
「ねえ、宿題が出たんだ。家族について調べてこいっていうんだけど」
「そういうのはもっと低学年でやるもんじゃねぇのか」
食後のコーヒーを飲んでいたヒル魔が不審そうに言う。
「僕もそう思ってたんだけど、自分新聞とかっていうので作れって言われちゃって」
「へえ。アメリカでもあったよね。懐かしいなあ」
「そうね」
妖介とアヤは顔を見合わせた。
二人は今まで同学年同クラスなのでそういった宿題の時には二人で一緒に作ったものだ。
「自分の年表と名前の由来と家族構成とか両親の仕事とか色々書くみたい」
「んな個人情報明かせるか」
ふん、と鼻を鳴らすヒル魔に他の家族も顔を見合わせる。
確かに生年月日はまもりを除き全員不詳で通しているし(年子で同学年だから妖介とアヤは季節はばれてしまっているが)、ヒル魔の仕事は判明していないし、なんとも言い難い状況である。
「うん、だからその辺は適当に捏造するよ」
「そうしろ」
「ちょっ、ちょっと! そんな捏造推奨してどうするの!」
焦るまもりに護は至極冷静に反論する。
「だってお父さんの職業不明です、って書く方が困るでしょ」
「うっ」
「詐欺師はなんだし、将棋の棋士か科学者にでもしておくよ」
「それ随分古いネタ持ってきたな」
ノートを取り出した護に妖介が突っ込む。
「まあね」
シャープペンシルを取り出して護は問いかける。
「僕の名前の由来はお母さんの名前からでいい?」
「そうだ。見た目にテメェは母親似だったからな」
「ちなみに姉ちゃんと兄ちゃんは?」
「私は織物から」
アヤの言葉に護はへえ、と呟く。
「音は姉崎が決めて、字は俺が決めた。人生は糸みたいなもんだからな」
「それが絡み合って織物で綾、ね」
両親の補足に護はペンを走らせる。
「兄ちゃんは一文字がお父さんからでしょ?」
「そうだね。『介』は世話するとか助けるの意味があって付けたって聞いてる」
妖介も以前聞いた内容を覚えているらしい。
「子供にはみんな『妖』の字を付けるつもりだったんだけど、アヤでまずお父さんに反対されたのよ」
「妖介は長男だからっつー理由で押し切られたな。俺はそんなもんどうでもよかったんだが」
肩をすくめる両親に護はふうんと相槌を打ちながら聞き取る。
「僕が生まれたのが日本で、その後またアメリカなんだよね」
「そうね。三人とも里帰り出産だったから」
「じゃあ年表は生まれたのが日本、その後アメリカ、と。その他に僕が生まれたときの話とかも聞いていい?」
「ドーゾ」
「護はねー、大変だったのよ」
まもりがふふ、と笑う。
「三人目だって言うのもあったんだけど、すごく安産でね」
「それだったら楽だったんじゃないの?」
首を傾げる妖介にまもりはさらに笑みを深くする。
「産気づいた時誰も家にいなかったの。もうすぐ産まれそうで身動きできなくて」
「え!?」
それは初耳だ、と姉弟は揃って目を丸くする。
「俺が着いたときにはもう生まれる直前でナァ」
その時の事を思い出したのか、ヒル魔は眉を寄せた。
「妖介とアヤはおじいちゃん達と出掛けてて、お父さんが来たときにはもうタクシーも呼べなくてね」
「あの時はこき使われたぞ」
やれ湯を沸かせ、やれタオルを用意しろ医者を呼べ、と大騒ぎだった、とヒル魔は零す。
「仕方ないでしょ、他に助けてもらえないんだもの」
「姉崎はもう既に血まみれだし泣きわめくし煩いし、医者は呼ぼうにも遠いし間に合わなくてナァ」
まさか、と見つめる先でヒル魔がにやりと笑った。
「俺が護を取り上げたんだよ」
「「「ええー?!」」」
「感動的だったわね」
「どこが」
「涙ぐんだくせに」
「テメェが泣いてて見間違えたんだろーが」
そのあまりの衝撃的事実にさしもの子供達も驚く。
「俺もアヤもフツーに産まれたところは病院だったから気にしてなかったけど、護だけ違ったんだ・・・」
「ああ・・・そういえば帰ってきたとき家の雰囲気が変だった」
「アヤ、覚えてるの?」
「何となく」
アヤの記憶には、護が生まれたから病院から連絡が来た、というようなものがない。
ただ家に帰ったらヒル魔が顔を出してお前たちの弟だ、と護を差し出して言ったような。
かなり朧気だけれど、そうか男の子か、と思ったのは覚えている。
「僕はお父さんに取り上げられたのか・・・なんか変な感じ」
「その後一応お医者様呼んで診察受けたけど、問題なかったからよかったわ」
はあ、と護は彼にしては大変珍しく気の抜けた言葉で返事をして手元のノートを見た。
波瀾万丈な人生を約束されたかのような門出じゃないか。
「産まれたときこそ大変だったけど、その後はごく普通に怪我も病気もして特筆すべき事はないわ」
「そっか」
「後はこれからのお前次第っつーことだな」
すっかり冷めたコーヒーを飲み干して、ヒル魔はまもりにカップを押しつける。
はいはい、とまもりは立ち上がろうとするが。
「僕が淹れるよ」
「あら珍しい」
まもりは目を瞬かせるが。
「いい話も聞けたし、たまには親孝行しなきゃね」
「言ってろ」
ヒル魔は短く言って肩をすくめた。

***
護話第三弾でした。この子は護単品で、というのより他の家族も交えて全員で、という話が多くなります。
自分の名前の由来を親に尋ねると結構面白いですよね。実は違う名前の予定だったりとか。
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