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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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Two-trees(5)/完結


+ + + + + + + + + +
朝日の中。
「説明してください」
ベッドの上に正座で詰め寄るのはまもり。
髪はぼさぼさ、瞳ははれぼったく、声は嗄れている。
一番手近にあった彼のシャツを羽織り、身体を覆っている。
けれど彼女には広い襟ぐりから覗く首筋には、ぽつりぽつりと朱色の跡。
「ナニガ」
応じるヒル魔はさして乱れず天を突く金髪をばりばりと掻きむしり、あくび混じりにその場にあぐらをかいている。
どちらも寝起きのままだ。
「どういうつもりですか」
まもりの声は固い。
それにヒル魔はぴん、と片眉を上げた。
「男の一人暮らしの部屋に来ておいてそんなつもりもなかったとか抜かすか」
お前は被害者又は襲われた女という立場か、という言外の問いにまもりは首を振った。
「そういうことじゃなくてですね」
まもりはもぞりと身じろぐ。
途端に違和感が襲ってくる。
あまりに想像したくない実情をまざまざと認識して、まもりの声は更に低くなる。
「・・・仮にも、一応、免状が偽装でなければ医者のはずですよね? ヒル魔先生?」
「それがどーした」
飄々としたまま、それより敬語と呼び方、と突っ込む彼の様子に。
ぷつり、とどこかの血管が切れた音がしたような気がした。
「どこの世界に、遊びに避妊もしない医者がありますかっ!!!」
「・・・ア?」
「振り返ってみれば、そういえば付き合ってるかな、っていう認識ではありましたが!」
まもりはキッとヒル魔をにらみつける。
「こういうのはマナーでしょう!? まさか避妊の仕方も知らないとか言いますか?!」
「・・・・・・オイ」
真っ赤になって怒るまもりの目の前で、半目になりつつあるヒル魔。
「同意の上で仮に私が安全日と呼ばれる期間であっても絶対はないんですよ?!」
その不穏な空気に気づかず、まもりは更にまくし立てた。
「いったいどういうつもりなんですか!!」
「そりゃそのまま丸ごとテメェに聞いてやる」
ヒル魔がぐい、とまもりの顎を持ち上げる。
強制的に口を閉ざされる格好になり、まもりは言葉を奪われた。
「・・・遊び? 誰がそんなこと言った?」
じわじわと彼から黒い邪悪な気配がしみ出してくるような錯覚。
「俺を何だと思ってやがる」
「何って・・・」
まもりは目を見開き、彼が相当怒っていることにようやく思い至る。
けれどその切っ掛けが分からず、一体何事かと首を捻るしかない。
「『そういえば』? そんな認識で側にいたのか、テメェは」
ヒル魔は不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「この俺が、わざわざ、どうとも思ってない女を側に置いて、家に呼ぶか?」
医者は多忙である。特に小児科医、更に勤務医ともなれば。
夜勤ともなれば仮眠を取ることもままならないのだ。
彼は体力も精神力もあって、平然としているから気づかなかったが―――少し考えれば付き合っているのかと思えるほどの距離を保つのがどれだけ難しいのかはすぐ分かる。
まもりはようやく解放された顎をさすりながら、それでも言いつのる。
「・・・でも、ヒル魔先生が避妊しなかった理由にはなりませんよね」
「糞ッ!」
ヒル魔は舌打ちし、まもりの身体を引き寄せてそのまま押し倒した。
「えっ!?」
「生憎と俺は『遊ぶ』ほど暇じゃねぇ」
「は? え、何」
「飲み込みの悪い奴にはオシオキだな」
唐突な体勢の変化に目を丸くし、身体を丸めようとするのを押さえつけ、ヒル魔は笑って彼女を見下ろす。
その眸ばかりが飢えた獣のように見えて、まもりは息を飲んだ。



知恵の実を得た人間が次に口にしたいと願うのは、生命の樹の実。
それは楽園の中央に生えている。
急ぎ手に入れなければ神に阻まれ二度と手にすることはない。

だから。

『テメェは生命の樹の実だ』

早く、一刻も早く。
手に入れ、その果肉を喰み、自らの血肉に。
そうしてそれは、より一層の高みを目指す力と、なる。



***
蒼龍様リクエスト『医者ヒル魔と看護師まもりの続き』でした。
裏ありとのことで大分お待たせしてしまって申し訳ありませんでした!
書く前からうすうす感じていたのですが、続きを書くとなるときっと長くなるだろうなあという予感通りとなりました。
もう少し内容について記述しようかと思ったのですが、言い訳じみたのでこの辺で。
リクエストありがとうございました!
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