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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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Two-trees(3)


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見たことがないデザインのカードは、恐ろしい威力を持っていた。
カードが使えるようなスーパーで買い物してカードを出すと、パートの女性が目を丸くして少々固まった後、どこかに連絡をして。
その直後、店長が飛んできた。それだけでも驚きなのに荷物を全て代わりに詰め込み、タクシーに乗るのだと告げたらわざわざ呼んでくれた。
呼んでもらったタクシーに乗り、住所が分からないのでマンション名の入ったカードと一緒にそれを差し出したらやはり同じように驚かれた。
タクシーに揺られること十数分で目的のマンションにたどり着く。
普通なら自動的に開く扉だが、わざわざ運転手が降りてきてドアを開いてくれた。
それはもう、恭しく。
まさしくVIPクラスの待遇だろう。VIPのなんたるかはよく分からないが、そんな気がした。
「一体何なんだろう、このカード・・・」
こんなたいそうな物を預かっていていいのだろうか、と心配になりながらもマンションのエントランスを潜る。
カードは予想通りカードキーだった。
豪華なエントランスに気圧されつつエレベーターに乗ると、通常なら押すべきボタンが存在する位置にある液晶画面にカードキーを差し込むよう指示が出る。
カードを差し込むと自動的にエレベーターが動き出した。
そうして降りた場所にあったのは、重厚なドア。
「・・・おじゃまします・・・」
ドアはその外見とは裏腹にとても滑らかに開いた。
玄関に足を踏み入れた途端、室内の電気が勝手に点灯する。
もはや言葉もなく、まもりは恐る恐る室内へと足を進める。
「凄い」
まるでホテルかモデルルームか、というくらい生活感のない空間。それでも家具は揃っているし、見渡せばキッチンもあった。
冷蔵庫に近寄り、開く。
予想通り、そこには飲み物がいくつか冷えているだけだった。
しかもほぼアルコール。食料品の影も形もない。
料理しそうにない外見だったがここまで徹底してるのか、とまもりは嘆息して買ってきた物を詰め込み始めた。

手際よく食事を作り終え、手持ちぶさたになったまもりは室内の散策を始めた。
鍵を渡されたということは、鍵がかかっていない箇所なら見てもいいのだろう、という判断だ。
部屋は当初足を踏み入れたリビングダイニングの他に洋室が三つ、その他に納戸らしきスペースとウォークインクローゼットまである。
バスルームも広々としていて、下手なホテル以上の設備。
タオルやアメニティも充実している。
そこまで考えて、まもりはばっとバスルームをもう一度検分した。
洗濯機と乾燥機もある。日頃使っているだろう歯ブラシもある。
けれどタオルやアメニティが配置されている洗面台。
その違和感に眉を寄せていたら。
「ルームサービス付きの部屋なんだよ、ここは」
「っきゃああああ!!」
背後から唐突に掛けられた声に、まもりは死ぬほど驚いた。
飛び上がり、慌てて振り返るとそこには不機嫌そうに耳を押さえるヒル魔の姿。
白衣のない彼は、黒一色の姿だ。
「糞煩ェ」
「ご、ごめんなさい!」
慌てて謝り、その場を退いて小走りにキッチンへと向かう。
その後を手と顔を洗ったらしいヒル魔がのんびり追いかけてきた。
ふと思い出してまもりはヒル魔をリビングの入り口で待ち構える。
「ア?」
仁王立ちしていたまもりに、ヒル魔は眉を寄せたが。
「おかえりなさい」
ぱあっと花咲くように笑って迎え入れた彼女に。
「おー。タダイマ」
ぽふん、とまもりの頭を撫でて笑う。
その顔が見慣れなくて、まもりは一瞬何故かと考え。
「・・・あれ? ヒル魔先生、眼鏡どうされたんです?」
いつも彼は眼鏡を手放さなかった。
宿直の時も呼び出されたときには必ず眼鏡を掛けていた。
視力が悪いのだと思っていたのだが。
「ア? 言ってなかったか、伊達なんだよ」
「伊達眼鏡だったんですか? 何でわざわざ・・・」
そこまで言いかけて、まじまじと彼の顔を見て。
「・・・まあ、何となく分かりました。理由」
ヒル魔の顔つきは、眼鏡がなくなるとより一層悪魔じみて見えた。
レンズ越しでもかなり強い視線が、むき出しのまま容赦なく襲ってくるような錯覚さえ感じる。
彼もそれは自覚があるのだろう。伊達眼鏡など使うくらいだ。
まもりが神妙な顔をしたのを見て、にやりと口角を上げた。
「そりゃあ何よりデスネ。それより敬語と呼び方」
まもりはやれやれと肩をすくめた。
彼は敬語を使われるのを好まない。
けれど最近、それはまもりにだけ言うのだと聡い彼女は知っている。
「ご飯作ったわ。食べるでしょ?」
「おー」
「その前に着替えてきたら?」
「このままでいい」
「そう? じゃあ席で待っててね」
今ご飯用意するから、と言えば彼はおとなしく食卓についた。
その様子が餌を待つ大型犬のようにも見えて、まもりは吹き出さないようにかなり我慢したのだった。

<続>
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