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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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血よりも(下)/完結


+ + + + + + + + + +
けれど。
それからまもりは、距離を取りたがるヒル魔とどうにかコミュニケーションを取ろうと躍起になった。
全く興味のなかったアメフトのルールを覚え、彼の役に立つようにと一生懸命になった。
キツい練習に膝を痛めた時には、何も言わずそっとアイシングをしたり。
テーピングを学んだりマッサージを学んだり。
ついには、泥門高校に存在しなかった影の主務として活躍するようにまでなった。
それもこれも、『弟』であるヒル魔の役に立ちたい一心で。
今回の差し入れは、そのいじましいような働きを見かねた義母の提案によるものだろう。


「さっきの」
まもりの声に、ヒル魔が視線を向ける。
「はちみつレモンとおにぎりなの。はちみつレモンは沢山作ったから、食べきれなかったら冷蔵庫で冷やしておくといいわ」
「・・・やっぱりテメェが作ったんだな」
「あ」
しまった、とまもりは焦る。
ヒル魔がまもりの作ったものに口をつけないのを見て、母が作ったことにしようと思ったのに。
「テメェの授業は」
「え、今日は午前中で終わり・・・」
「嘘つけ。テメェ今日は一日授業入ってただろうが」
じろりと睨め付けられ、まもりは相変わらずの情報網を持つヒル魔に首をすくめる。
「休講になったの! 大学に聞いてもいいわよ。本当だから!」
「どうだか」
そう言いながらも、ヒル魔はどうにも落ち着かない気持ちを抱える。
大学ともなれば、その学校のみならず他校生の出入りもある。
学生だけではなく、OBなどの社会人も当然のようにいる。
彼女がその気になれば、どんな男でもよりどりみどりの環境。
掛けられる声も桁違いなのだと奴隷からの情報で得ている。
けれど彼女は休講になったから、と一目散にここに来たのだ。
いの一番に扱われる、それが嬉しいような。
『弟』扱いから抜け出せないことが悲しいような。
そんな複雑な気持ちを押し殺して、ヒル魔はまもりの座る椅子を蹴る。
「オラ、用事が終わったならさっさと帰れ」
「や・・・ちょっと! お姉ちゃんよ、敬いなさい!」
「ケッ! 年上だからって誰も彼もが偉いわけじゃねぇだろ」
おらおら、と追い立てて部室から追い出す。
「さっさと帰ってベンキョーして風呂入って寝ろ」
「まだそんな時間じゃないわよ! あ、妖くん、今日の夕飯はビーフシチューだって。好きよね?」
「・・・さっさと、か・え・れ!」
怒りを露わに怒鳴る彼に、何度目になるか分からない失敗をまたやったのだと感じたまもりは渋々立ち上がり、扉に手を掛ける。
外に向かうその背中に。
「さっきの差し入れは返さねぇぞ」
「・・・!!」
つっけんどんな声に、驚き振り返ったけれどその時には部室の扉は激しい音を立てて閉められて。
けれど今のは、差し入れを食べてくれるということだ。部員と一緒に、おそらくは彼も。
時折、本当に希にかわいいことを言ってくれる。
それがたまらなく嬉しくて、嬉しくて。
まもりの顔が嬉しそうにほころぶ。
「・・・照れ屋さんなんだから」
当の本人が耳にしたら絶叫して全身を掻きむしるだろう言葉を呟いて、彼女は足取り軽く家路へとついたのだった。

グラウンドでは先ほどの衝撃は抜けきらないものの、それぞれが練習に励んでいた。
部員のそれぞれが、それにしても美人だった、義理ならあの姉はあるかな、いくら美人でも姉ちゃんじゃなあ、と様々に呟く傍ら。
ムサシはボールを蹴り上げながら、ベンチに置かれた銃と包みを眺める。
彼が望むのは姉弟という関係ではないのだろうな、とたやすく想像できた。
「ねえ、ムサシ」
休憩時間に栗田が近寄る。
「義理の姉弟って結婚できるのかな?」
伊達に長い付き合いではない彼も、ヒル魔の本心を見抜いていたようだ。
「さあな。ま、アイツのことだ。不可能はないだろう」
「そうだよね」


***
サキ様キリリク『年下ヒル魔さん』でした。お待たせしました!
単なる年下で他人同士は結構見かけたので、じゃあもしまもりが義理の姉とかだったらどうかな~と思って考えた話です。意外にしっくり来てさくさく書けましたw
リクエストありがとうございました!

☆以下補足☆
作中、まもりの氏が『姉崎』なのは母の婚姻後ヒル魔の父と養子縁組もしくは入籍届を出してないからです。親が結婚したり離婚したりしても、子には影響ないのです。
今後、もしまもりがヒル魔の父と養子縁組して『蛭魔』を名乗り、義理の姉弟となっても法律的に結婚は可能です。
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