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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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朱嘴鸛(1)

(ヒルまもパロ)
※『恋人定義』の二人です。『ねこあそび』の後。
※リクエスト作品。

+ + + + + + + + + +
夜。
トイレに下げてあるカレンダーを眺め、数字を数え上げる。
その顔は蒼白で、表情はない。
まもりはその桜貝のような爪をそっと腹に当てた。
遅れている。それも大幅に。
その要因となりそうなことがまさに『危険日』と重なる日に起こったことを、まもりは忘れていなかった。

翌朝、いつもの通りにヒル魔のことをまもりが迎えに来た。
その表情が冴えないのを見てもヒル魔は特に気にしなかった。
もう長い付き合い、体の周期のこともよく知っている。
とはいえ、彼女がそれとつきあい始めたのはここ八年くらいのものだが。
ほぼ毎月まもりは青白い顔をして学校に通っていた。
痛みは僅かでそれによる不調はないと嘯くが、ヒル魔の目には一目瞭然だった。
だからこのときも思ったのだ。
ああ、毎月のアレか、と。
時期的にもやや遅いがこれくらいだろう、と。
けれどまもりはヒル魔と共に家を出た後は口数少なに歩いている。
気になり様子をうかがえば、どこか上の空のような。
「おい糞マネ、ぼけっとしてっと転ぶぞ」
「うん」
「ケケケ、寝不足デスカ」
「うん」
「うちの糞親父が単身赴任するとか言い出したぞ」
「うん」
「それにウチの糞ババアはついて行くとほざいた」
「うん」
「よってテメェの家に俺はやっかいになることになった」
「うん」
「部屋はテメェと一緒でいいな?」
「うん」
そこまで話して、ヒル魔は小さく舌打ちした。
どこをどう聞いてもおかしい話を聞いていないことは明白だ。
「・・・まもり」
「!」
手を取られ、まもりはびくりと震えた。
視線がようやくヒル魔を捉える。
「テメェ、調子悪いなら帰れ」
「悪くなんてないわ。どうして?」
まもりはそこでようやく笑みを浮かべる。見え見えの作り笑い。
ヒル魔の眉間に皺が寄った。
「早く行きましょうよ。みんな、練習したがってるわ」
「俺らはもうコーチ代わりに過ぎねぇんだ、そんなに急がなくても平気だろ」
去年、ヒル魔率いる泥門デビルバッツは念願のクリスマスボウルを制していた。
今は春大会も終わり、秋大会に向けて練習試合を組んで試合経験を少しでも増やそうと皆努力している最中だ。
二人の仕事はメインではない。けれど、重要なポジションには違いない。
「テメェが無理してするほどの作業じゃねぇだろ」
「だって、みんなが」
「テメェが調子悪い状態で練習参加したとして、糞ガキ共の集中力が切れて怪我人が増えるだけだ」
ヒル魔はぴたりと足を止める。
「帰れ」
「大丈夫よ」
まもりは間髪入れずそれを否定するが、ヒル魔は舌打ちすると彼女を強引に抱え上げた。
「やっ!!」
それでも暴れる彼女に、ヒル魔は呆れたように告げる。
「女なんだから仕方ねぇだろうが」
けれど。
そこでいつもなら真っ赤になって怒るはずのまもりの表情は硬く強ばった。
目を見開き、唇を震わせ、顔色を亡くしている。
そのただならない表情にヒル魔はそんな顔になる理由を想像して―――程なくその理由に思い当たる。
「来ないのか?」
「っ」
何が、という主語を抜いても当然通じる。見開いたままの瞳がゆらゆらと滲む。
「来ないんだな」
「・・・」
まもりはそっと視線をずらした。ヒル魔の顔が見られなかった。
どんな顔をしているのか、どんな事を言い出すのか、全く想像がつかない。
言いしれぬ恐怖が襲ってきてがたがたと震えるまもりの体を改めて抱え直すと、ヒル魔は静かに口を開く。
「行くぞ」
その声は冷静で、何を考えているのか全く分からなかった。

<続>
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
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