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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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夜明け前(3)



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すい、と。
おそらくはもうよく見えないだろう目を、それでも立ち尽くすヒル魔に向けて。
「・・・そんなに悲しまなくてもいい。親は子より先に死ぬ。これは自然の摂理だ」
声はどこまでも穏やかで、優しかった。
「どうして、もう少し早く手を打たなかった」
「自分のことは見えない。そうだろう」
ヒル魔は眉を寄せる。その通り、己の色を見ることは出来ない。
「気づいたときには遅かった。得てしてそういうものだ」
「随分諦めが早ェじゃねぇか」
「やるだけやった結果がこれだからね」
自然の摂理だよ、ともう一度繰り返してから彼は手を差し出した。
ヒル魔はためらいもなくその手を握る。
そうして、彼は囁くように言葉を紡いだ。
「命を―――」
というか、もうそうとしか声が出せないのだと。
彼を取り巻く、色の濃くなった闇を見て、ヒル魔はゆっくりと瞬いた。


まもりがぼんやりとあかりを抱いていると、外に車が止まる気配。
どうやらアヤが到着したらしい。そうして、扉を開いたのはアヤと、ムサシで。
「ムサシくんも来てくれたの」
腕の中のあかりを気遣って小声でかけた声に、アヤは困ったように笑った。
「一人で大丈夫だから寝ててください、って言ったんだけど・・・」
「アヤ一人で行かせられないだろうが」
「ありがとう、ムサシくん。とりあえず座ってちょうだい」
隣家があるわけでもないが、時間帯のせいかぼそぼそと話す三人の元に、護がやってくる。
「お茶どうぞ」
「ありがとう、護」
「ありがとう」
「ん、悪いな」
三者三様に受け取り口をつけたところで、妖介が顔を出した。
「母さん、護・・・あ、ムサシさんこんばん・・・いや、おはようございます? アヤも」
変な挨拶をする妖介にアヤが眉間に皺を寄せる。
「そんな顔しないでよ、アヤ」
常と同じように苦笑してから、ふと妖介が表情を改めてその場にいた全員の顔を眺めた。
「父さんが呼んでる。『全員こっちに来い』って」
「・・・」
全員がちらちらと視線を合わせ、そうして立ち上がる。
あたたかな湯気が立ち上るお茶とは裏腹に、腹の底から熱が抜けるような、妙な恐怖感があたりを支配している。
扉を開き、照度がぎりぎりまで落とされた室内に足を踏み入れる。

ヒル魔とその母、そして横たわるヒル魔の父がいる。




それからはまるで早回しの世界に放り込まれたようだった。
眠るように息を引き取った彼の遺体は、異様なほどの速度で火葬場へと向かった。
通夜や葬式というものは全てすっ飛ばして、だ。
どうやらそれは生前からの彼の希望もあったようで、儀式的なものは一切なかった。
ただ、淡々とした事務の流れのような。
焼き上がった骨を無造作に詰め込まれた骨壺を受け取るなり、あけみは姿を消したし。

何もかもが、夢であったかのような。


<続>
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