旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
「ア?」
ヒル魔の訝しげな声に、まもりは唇を湿す。
「ヒル魔くん、MVPとれなかったじゃない」
「それ以前にチームで負けてるだろ」
「・・・NFL、行けないじゃない」
調子の変わった声に、ヒル魔はぐるりと首を回し、背後のまもりを見上げる。
そうして、左肩に触れていたまもりの手を引くと、強引に自らの前に引き寄せた。
「ちょ・・・」
「何が言いてぇんだ」
まもりは僅かに俯いたが、座っているヒル魔からはその顔が丸見えだった。
表情と呼べるほどの表情がないのに、その瞳が潤んでぽたりと雫を落とした。
雫は複雑な色を包括して、ただ落ちる。
はらはらと涙を零すまもりの手を強く掴んで、ヒル魔はもう一度問うた。
「・・・何が言いてぇんだ」
「よく、わから、ないの」
まもりは喉を詰まらせながら囁くように言葉を絞り出した。
何かが心中に渦巻いて、形にならない。
「わからねぇなら全部言え」
「・・・だって。MVPが獲れないなら、NFLはムリ、だって、言ってたって」
「おー」
ヒル魔の身体能力は決して常人より秀でていない。
あの阿含ですら、もしも、と思わず口にしてしまいたくなったほどの頭脳を完全に生かせない。
「NFLに、入れない、なら」
とらわれていない方のまもりの手が、おずおずとヒル魔の肩に触れた。
基本的に露わになることのない、その肩。
肩を冷やさないために、彼はどんなに暑くても半袖以上に短い上着を着なかったのに。
今、肩が、体が。こんなにも無防備に晒されて、いて。
「もう、アメフト、やめちゃう、の? それで、肩も・・・どうでも、いいの?」
しゃくり上げて聞きづらい言葉は、それでもヒル魔の耳に届いた。
まじまじと泣きじゃくるまもりを見上げて、ヒル魔は呆れたように嘆息する。
「・・・この糞泣き虫マネが」
ヒル魔はその涙が残る頬に指を触れさせようとして―――そうはせず、まもりの額を指で強烈に弾いた。
「痛ッ!!」
痛みに驚き視線をあげると、真摯な眸とぶつかる。
「まだテメェは言いたいことがあるだろ」
「え」
ヒル魔はにたりと笑う。
まもりは彼の意図が分からず、困惑の表情を浮かべたが。
「今、テメェが言ったことだけじゃ、泣く理由になってねぇよ」
まもりは、それはだって、と続ける。
「悲しいじゃない。寂しいじゃない」
「だから何がだ? 俺がアメフトやめて好き勝手して体壊したところで、テメェが泣く理由になるか?」
「・・・」
まもりはぱちりと瞬きする。睫に残っていた雫がはらりと落ちた。
ヒル魔はじっとそれを見ていたが、まもりが小首を傾げたのを見て再び嘆息した。
「糞ニブニブ女め」
「そんな名前じゃ、ありません」
ぐす、と鼻をすすってまもりはヒル魔に言い返す。
「ホー」
ヒル魔はぴん、と片眉を上げておもむろに立ち上がる。
視線の位置が逆転する。顔が上げられず、彼の威圧感にまもりは知らず一歩下がろうとした。
が、先ほどからずっと掴んだままの手がそれを許さない。
「!」
びく、とまもりは肩を震わせた。急に目の前のヒル魔が、怖いと感じてしまう。
何故だろう。
よく知っているはずなのに、全く知らない存在のように思えて、その手を振り払おうとするが。
「ったく、テメェは頭イイくせに糞ニブニブも甚だしい」
「何・・・」
「いい加減自覚しやがれ、まもり」
「・・・え」
今、名前を。
顔を上げ、瞳を見開くまもりの頬に今度こそ指が、そして手のひらが触れる。
あたたかい手のひらに。
見つめる真摯な眸に。
後押しされるようにまもりの唇から言葉がこぼれ落ちる。
「すき」
それに、まもりは自らが一番驚いて硬直する。
今、自分は何を口走ったか、と。
けれど同時に、この心中の渦巻く全てが消え去り、落ち着く。
すとん、と。まるで、憑物が落ちたかのように。
「やっと分かったか」
ヒル魔はそんなまもりの全てをお見通しだ、と言わんばかりに笑みを浮かべる。
まもりはむくれて少し唇を尖らせて見せて、・・・そうして、ヒル魔にそっと腕を伸ばす。
彼は低く笑って、その腕にまもりを拒むことなく包み込む。
「アメフトは辞めねぇ。NFLは無理だとしても、大学でも社会人でも続けられるからな」
「うん」
「テメェは俺の側で従順な労働力として働いてりゃいいんだよ」
「うん・・・っ」
彼のむき出しの胸に頬を寄せて、まもりは何度も頷く。
宥めるように頭を撫でる手が、聞こえてくる心音が、彼の匂いが、息づかいが。
その全てで、息苦しくなるくらい。
しあわせ。
***
なんだかつらつらと書いてしまいました最終回妄想第(以下略)
タイトルから淫靡な内容を想像した人にはすみません。キス一つしてませんこの人たち。
後は皆様の想像にお任せします。じゃっ!(脱兎)
ヒル魔の訝しげな声に、まもりは唇を湿す。
「ヒル魔くん、MVPとれなかったじゃない」
「それ以前にチームで負けてるだろ」
「・・・NFL、行けないじゃない」
調子の変わった声に、ヒル魔はぐるりと首を回し、背後のまもりを見上げる。
そうして、左肩に触れていたまもりの手を引くと、強引に自らの前に引き寄せた。
「ちょ・・・」
「何が言いてぇんだ」
まもりは僅かに俯いたが、座っているヒル魔からはその顔が丸見えだった。
表情と呼べるほどの表情がないのに、その瞳が潤んでぽたりと雫を落とした。
雫は複雑な色を包括して、ただ落ちる。
はらはらと涙を零すまもりの手を強く掴んで、ヒル魔はもう一度問うた。
「・・・何が言いてぇんだ」
「よく、わから、ないの」
まもりは喉を詰まらせながら囁くように言葉を絞り出した。
何かが心中に渦巻いて、形にならない。
「わからねぇなら全部言え」
「・・・だって。MVPが獲れないなら、NFLはムリ、だって、言ってたって」
「おー」
ヒル魔の身体能力は決して常人より秀でていない。
あの阿含ですら、もしも、と思わず口にしてしまいたくなったほどの頭脳を完全に生かせない。
「NFLに、入れない、なら」
とらわれていない方のまもりの手が、おずおずとヒル魔の肩に触れた。
基本的に露わになることのない、その肩。
肩を冷やさないために、彼はどんなに暑くても半袖以上に短い上着を着なかったのに。
今、肩が、体が。こんなにも無防備に晒されて、いて。
「もう、アメフト、やめちゃう、の? それで、肩も・・・どうでも、いいの?」
しゃくり上げて聞きづらい言葉は、それでもヒル魔の耳に届いた。
まじまじと泣きじゃくるまもりを見上げて、ヒル魔は呆れたように嘆息する。
「・・・この糞泣き虫マネが」
ヒル魔はその涙が残る頬に指を触れさせようとして―――そうはせず、まもりの額を指で強烈に弾いた。
「痛ッ!!」
痛みに驚き視線をあげると、真摯な眸とぶつかる。
「まだテメェは言いたいことがあるだろ」
「え」
ヒル魔はにたりと笑う。
まもりは彼の意図が分からず、困惑の表情を浮かべたが。
「今、テメェが言ったことだけじゃ、泣く理由になってねぇよ」
まもりは、それはだって、と続ける。
「悲しいじゃない。寂しいじゃない」
「だから何がだ? 俺がアメフトやめて好き勝手して体壊したところで、テメェが泣く理由になるか?」
「・・・」
まもりはぱちりと瞬きする。睫に残っていた雫がはらりと落ちた。
ヒル魔はじっとそれを見ていたが、まもりが小首を傾げたのを見て再び嘆息した。
「糞ニブニブ女め」
「そんな名前じゃ、ありません」
ぐす、と鼻をすすってまもりはヒル魔に言い返す。
「ホー」
ヒル魔はぴん、と片眉を上げておもむろに立ち上がる。
視線の位置が逆転する。顔が上げられず、彼の威圧感にまもりは知らず一歩下がろうとした。
が、先ほどからずっと掴んだままの手がそれを許さない。
「!」
びく、とまもりは肩を震わせた。急に目の前のヒル魔が、怖いと感じてしまう。
何故だろう。
よく知っているはずなのに、全く知らない存在のように思えて、その手を振り払おうとするが。
「ったく、テメェは頭イイくせに糞ニブニブも甚だしい」
「何・・・」
「いい加減自覚しやがれ、まもり」
「・・・え」
今、名前を。
顔を上げ、瞳を見開くまもりの頬に今度こそ指が、そして手のひらが触れる。
あたたかい手のひらに。
見つめる真摯な眸に。
後押しされるようにまもりの唇から言葉がこぼれ落ちる。
「すき」
それに、まもりは自らが一番驚いて硬直する。
今、自分は何を口走ったか、と。
けれど同時に、この心中の渦巻く全てが消え去り、落ち着く。
すとん、と。まるで、憑物が落ちたかのように。
「やっと分かったか」
ヒル魔はそんなまもりの全てをお見通しだ、と言わんばかりに笑みを浮かべる。
まもりはむくれて少し唇を尖らせて見せて、・・・そうして、ヒル魔にそっと腕を伸ばす。
彼は低く笑って、その腕にまもりを拒むことなく包み込む。
「アメフトは辞めねぇ。NFLは無理だとしても、大学でも社会人でも続けられるからな」
「うん」
「テメェは俺の側で従順な労働力として働いてりゃいいんだよ」
「うん・・・っ」
彼のむき出しの胸に頬を寄せて、まもりは何度も頷く。
宥めるように頭を撫でる手が、聞こえてくる心音が、彼の匂いが、息づかいが。
その全てで、息苦しくなるくらい。
しあわせ。
***
なんだかつらつらと書いてしまいました最終回妄想第(以下略)
タイトルから淫靡な内容を想像した人にはすみません。キス一つしてませんこの人たち。
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ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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