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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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あの空の彼方(下)


 


+ + + + + + + + + +
特産の海産物に舌鼓を打ち、まもりの口をふさぐにはコレが一番、と言わんばかりに北海道限定シュークリームを与えた後は、ヒル魔はひたすら車を走らせる。
「どこ行くの?」
「サアネ」
まだ夏休みの前のシーズンだからだろうか。道は混み合っておらず、どこまでも続く長い一本道をひたすら進む。
適当に合わせたカーラジオから流れる音楽を聴きながら、ぼんやりと車窓の景色を眺める。
次第に眠気に襲われて、まもりはこっくりと船を漕ぐ。
運転するヒル魔に悪いと思い、起きていたいと思うのに、睡魔には逆らえなくて。
眠りに落ちる直前。低く笑うヒル魔の声を聞いたような気がした。

「起きろ、糞マネ」
「っ!」
飛び起きると、既に車は止まっていて、ヒル魔が携帯片手にまもりをのぞき込んでいた。
目が覚める一瞬前、電子音が響いた気がしたけれど。
まもりの視線にヒル魔は殊更唇をつり上げて携帯電話をしまう。
「脅迫手帳収納」
「また?! 何を?! ちょっとその携帯見せてよ!」
「ケケケやなこった。オラ降りろ」
「やん、ちょっと、もう!」
ほとんど蹴落とされる勢いで降りると、そこは一面の薄紫。
「わ・・・これ、もしかして、ラベンダー?!」
「まだ時期じゃねぇがな」
「そうなの?! でも・・・すごい!」
歓声を上げて花々に近寄るまもりを楽しげに見て、ヒル魔はその後をゆっくり追う。
「うわあいい香り! っていうことは、ここ、富良野?」
「おー」
まもりはぐるりと周囲を見渡す。
人影はちらほらとあるが、ヒル魔を見ても逃げないところから彼が人払いをしたわけではないと察する。
「すごーい! 私、こんなに広いラベンダー畑見たの初めて!」
「ケケケ、思う存分はしゃげ糞赤犬女」
「んもう、その呼び方やめてよ!」
そう言いながらも楽しげに笑うまもりは、めざとく屋台の看板を見つける。
「あ! ラベンダーソフトクリームだって! 食べたい!」
「ア? ンな糞甘臭ェモン喰うなら俺に近寄るんじゃねぇ」
それでも食べるな、とは言わない彼にまもりはまた笑って、ソフトクリームと彼のためのホットコーヒーを注文したのだった。


それからさほど時をおかず。
日差しが遠く山に熔けて、空が夜の腕を伸ばして地上の全てを抱きしめようとする。
明かりが消えた途端、急激に冷えた空気に、まもりは身震いした。
「寒・・・」
唐突に連れ出されたから、当然こちらの気候に合わせた格好ではない。
ストールの一枚でもあれば大分違うだろうに、と思ってもないものはしょうがない。
と、頭にばさりと何かがかぶせられる。
途端に漂うミントの香り。ヒル魔の上着だと一瞬置いて気づく。
「え、ヒル魔くん?! いいわよ、寒いでしょ?」
「テメェとは鍛え方が違ぇんだよ」
いいから着てろ、と手を振られまもりはありがたくそれにくるまった。
彼の体温が残るそれは、まもりの腰あたりまですっぽりと覆ってしまう。
「大丈夫? 寒くない?」
「平気だ、っつってんだろ」
それでも気になって、その手に触れる。
「俺の上着を奪っておいてまだ足りマセンカ?」
言いながら彼はまもりの冷えた指先を握り込んだ。
「肩冷えちゃうじゃない。車に戻った方がいい?」
「それじゃ意味ねぇだろうが」
「何の?」
きょとんとしたまもりに、ヒル魔は記憶力ねぇな、と呟いて。
「おら」
その尖った指先が示した先。

仄明るい地表から中天に向かって鮮やかな紺碧に染まる空。
降るような、満天の星空。
声もなくただ瞳を見開くまもりに、ヒル魔は楽しげに笑う。
「作り物で満足するようなタマか、テメェは」
夢見るような心地で視線をヒル魔に向けたまもりは。
「・・・満足させないのはヒル魔くんの方でしょ」
そんなかわいくないことを言いながら。

「ありがとう」
囁いてキスを強請る彼女と。
満足そうに瞳を伏せた彼の。
頭上から、堰を切ったように幾多の星々が流れ落ち始めたのだった。


***
唐突にプラネタリウムで北海道なのは唐突に自分が行ったからです。
季節外れなのはご愛敬。
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