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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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あの空の彼方(上)

(ヒルまも)
※高校卒業後の二人。ヒルまも一家とは違います。


 


+ + + + + + + + + +
窓から差し込む光が、グラスの中の氷に弾かれる。
ガラス越しでも目映いと思うそれは、あっという間に強さを増していくのだろう。
汗をかいたグラス。
氷が硬質な音を立てて水に沈んだ。

もうすぐ、夏が来る。

まもりは目の前に座ってコーヒーを飲む彼を見る。
ヒル魔はどんなに暑い季節でもアイスコーヒーは飲まない。
手には携帯。まもりのことなどお構いなしのその指先はよどみなく何かを打ち続けている。
おおかた、人には言えない類の脅迫メールなのだろうけれど。
視線も交わらない、会話も特に弾まない。
とうとう耐えかねて、まもりは口を開いた。
「ねえ、ヒル魔くん。今日、デートなのよね?」
言っていて情けない台詞だ、と内心ため息。

二人はつきあっているが、外で会うことはあまりない。
大学も部活も一緒という高校時代から同じ流れ。さすがに学部が違うので全ての授業こそ共ではないが、顔を見ない日はない。
そんな状態でも―――いやそんな状態だからこそ、休みの日にどこかに出かけたい、というのがまもりの願いで。
アメフトと自分の利益に関わること以外は出不精の彼の、数少ない休日に。
やっとの思いで外に引きずり出したのに、このていたらく。
内心のため息でとどめた自分を褒めたいくらいだと思うのだ。
「テメェの要望通りにしてやってんだろうが。『外で会う』」
「外で会うだけでデートって!」
「じゃあ具体的に何してぇんだ」
ようやくヒル魔がまもりを見上げる。
呆れたような口調だけれど、彼が本気で呆れていれば、即この席を立つはずだ。
それがないのだから一応気を遣ってくれているのだと思う。
「・・・プラネタリウム、行きたい」
「ア?」
それは彼の予想外だったらしく、ヒル魔はピンと片眉を上げた。
なぜだ、と視線で問われる。
「このところ梅雨で雨空続きだったし、星空なんてしばらく見てないし」
「ホー」
「これからまた夏合宿とかで忙しいでしょ。今度流星群が来るからって話題になってね」
その合間を縫って二人の時間を作ってくれたらいいのだけれど、彼が何より優先するアメフト絡みである以上、難しいだろうと踏んでいる。
物わかりがいいというのではなく、経験則。ここまでだったら彼はつきあってくれるだろう、という境目を探っている状態。
「星空、ねぇ」
「ここからだと二つ先の駅のところに小さいのがあるの。大きめなのだと別のところじゃないと・・・」
彼の興味の範疇外であることは重々承知の上。
だからこそ耳を貸してくれている今のうちに計画を、とまくし立てるまもりにヒル魔はにたりと笑ってみせる。
・・・その顔がろくでもない種類のものだと気づいてまもりはぴたりと口を閉ざした。
「来い」


パスポートを持って歩いてなくて良かった、という感想を抱くことがあるなんて。
持っていてよかった、というのならともかく。
あれよあれよと連れ出され、飛行機に連れ込まれ、下ろされた先。
「何ぼけっとしてやがる」
「したくもなるわよ! なんでいきなり北海道なのよ!!」
そこは千歳空港だった。
ほんの数時間前には学校近くの喫茶店にいたはずなのに。
「テメェが言ったんだろうが」
「私が言ったのは近くのプラネタリウムであって、間違っても北海道じゃないわよ!」
まもりは怒り心頭で声を上げるのだけれど、ヒル魔はにやにやと笑うだけで取り合わない。
「まず腹ごしらえだ。メシ喰うぞ」
「あ、ちょっと! どこに行くのよ!」
焦るまもりの手を取り、すたすたと歩き出す彼の動きに淀みはなかった。


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