旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
アヤが武蔵家に嫁いでしばし。
衣類の整理をしていたところ、ワールドユースカップのユニフォームが出てきた。
丁寧にしまわれたそれを見て、彼女は首を傾げる。
自分の実家でそのユニフォームを見たことがなかったから。
マメで物持ちの良い母のこと、大切にしまっておいても折に触れ取り出し子供たちに話し聞かせそうなのに。
そういえば話はあっても実物を見せられた覚えはない。
なんとなく気になったアヤは、ムサシに一言断り、そのユニフォームを手に実家へと足を向けた。
「あら」
そのユニフォームを一目見るなり、まもりは声を上げる。
「うちで見たことないと思って。あるの?」
「勿論あるわよ。あるけど・・・」
まもりの頬がさあっと赤く染まる。
それに何かしら嫌な予感を覚えたのだが、アヤが制止するより早くまもりが話し始めた。
長雨が続き、まもりは気鬱に空を眺めた。
さすがにこう毎日雨が続いては洗濯物が乾かない。
さてどうしたものか、とまもりは考える。
近所のコインランドリーに行こうかと学校帰りに少し覗き込んでみたが、考えることは皆同じようで乾燥機は全て使用中。更に待つ人の影もあったので、これはダメだと諦めて室内干しにしているのだが、如何せん乾きが悪い。
ためしに一枚、昨日から干しておいたTシャツを手にとって見たが、なんとなく湿っている。
「まいったなぁ・・・」
今年の春先に引越しをして、その時に持ってきた服は必要最低限のものだった。
後は買い足せばいいと思っていたのだけれど、予想外の長雨に買い物すらままならず今に至っている。
しかも間の悪いことに先ほど帰宅途中に車に水をかけられ、着ていた物は全て洗濯機行きとなってしまった。
このままでは明日明後日にも着られる服がなくなってしまう。
とりあえず明日のために滅多に着ないために残っていたジーンズを取り出してきたものの、Tシャツ類は今着ているものを除いて全て洗濯してしまった。
「やっぱりこれ明日のために取っておこう。でもパジャマも洗濯しちゃってたっけ・・・」
今だけ室内で過ごすための着替えが必要だ。
まもりは少し考えて、ヒル魔の部屋の扉を開く。
鍵はついているが、彼がここに鍵をかけたところは一度も見たことがない。
信用されているのだと改めて面映い気持ちになりながらそこをくぐり、彼の箪笥に手をかける。
「ごめんね。一枚お借りします」
小さく謝罪をして、その中で使用頻度の低そうなTシャツを物色する。
どれもこれも黒ばかり。どれだけ同じものを持ってるのだろうか、と半ば呆れてしまう。
と。一枚、色味の違うものがあった。
「あれ?」
それを引き出し、まもりは瞳を瞬かせる。
「これは・・・」
「帰ったぞ」
「おかえりなさーい」
ヒル魔が声をかけると、キッチンから応じる声が返ってきた。
食欲をそそる匂いが玄関からでもよく判る。
暑さゆえに素麺ばっかり、というメニューにはならない食卓。
気鬱な長雨も彼女の食欲減退にはつながらないんだな、とある意味感心しながらリビングへの扉を開いたヒル魔は。
「っ!?」
そのまま、驚きのあまりフリーズした。
「ヒル魔くん、濡れてない? 大丈夫? あれ、・・・どうしたの?」
「・・・そりゃこっちの台詞だ」
タオルを手に近寄ってきたまもりの格好に指を突きつける。
「あ、これ? ごめんね、雨で着る服がなくなっちゃって、勝手に借りました」
まもりはずるりと落ちそうになる襟ぐりをぐい、と引き上げてにっこりと笑う。
彼女が着ていたのは、ワールドカップユース日本代表のユニフォームだった。
その上にエプロンをしているので、珍妙な格好になっている。
「っていうか、まだこれ持ってたのね」
てっきり終わったら捨てちゃったのかと思ったのに、と笑う彼女に、ヒル魔は頭を抑える。
「それにしたって、なんでソレなんだ」
「普段着ないし、一番使用頻度が低そうだったから」
「着るものねぇんなら買うなり実家から送ってもらうなりしやがれ」
「そう思ってたんだけど、タイミングが合わなくてなんとなく足りなくなっちゃった」
話してるうちにまもりの肩がまたずるりと落ちる。
「あん、もう! やっぱりヒル魔くんのだけあって肩幅広いのよね、これ」
「・・・アメフトのユニフォームだぞ。下に防具つけんだからデケェに決まってんだろ」
「あ、そっか」
忘れてたわ、と笑いながら踵を返したまもりの下肢に、ヒル魔は再び固まった。
「・・・下は」
先ほどまではエプロンで隠されていて気づかなかったが、裾からはすんなりと白い脚が丸見えだ。
「これ長いから、ワンピースみたいだし、前はエプロンで隠れるしいいかと思って」
それに見る人ヒル魔くんだけだし、と屈託なく笑うまもりに彼は深々と嘆息する。
途端にまもりの顔が曇る。上目遣いにヒル魔を見上げ、不安そうに小首を傾げた。
「・・・だめだった? 記念のものだし、やっぱり別のを着たほうがよかったかしら」
「テメェが反省するのは、そこじゃねぇ」
「じゃあ、どこ?」
小首を傾げるまもりを、ヒル魔はちょいちょいと招き寄せる。
疑問を持たず近づいた彼女を、彼はあっという間に捕まえると、そのまま抱え上げてしまう。
「ちょ、ちょっと!? いきなり何!?」
「テメェはいい加減にその糞無自覚をなんとかしやがれ」
「え? ええ!?」
まもりを連れて行こうとしているのは彼の自室。
その意図は明らかで。
「お腹すいてるでしょ!? ちょっと、先にご飯食べようご飯!!」
とまもりは焦るが彼は頓着せず、強引に彼女をベッドへと導いたのだった。
「こっちが先だ」
「・・・っていうことがあってね、それ以来見る度思い出すから恥ずかしくて」
出せなかったのよね、とまもりは苦笑する。懐かしいわ、という呟きに、アヤは額を押さえた。
「別にお父さんの苦労話を聞きたかったわけじゃない」
そして、自分が嫁いだ途端にこういった話をしないで欲しい、と切実に思う。
けれど、まもりは分かっていない。
「え? どうして? お母さんの苦労話よ?」
真顔で応じる母の姿に、アヤは眉を寄せ、深々と嘆息したのだった。
***
唐突に親が返答に困ることを言ったりする事ってありますよね。
『credit difference』=掛け違い。
衣類の整理をしていたところ、ワールドユースカップのユニフォームが出てきた。
丁寧にしまわれたそれを見て、彼女は首を傾げる。
自分の実家でそのユニフォームを見たことがなかったから。
マメで物持ちの良い母のこと、大切にしまっておいても折に触れ取り出し子供たちに話し聞かせそうなのに。
そういえば話はあっても実物を見せられた覚えはない。
なんとなく気になったアヤは、ムサシに一言断り、そのユニフォームを手に実家へと足を向けた。
「あら」
そのユニフォームを一目見るなり、まもりは声を上げる。
「うちで見たことないと思って。あるの?」
「勿論あるわよ。あるけど・・・」
まもりの頬がさあっと赤く染まる。
それに何かしら嫌な予感を覚えたのだが、アヤが制止するより早くまもりが話し始めた。
長雨が続き、まもりは気鬱に空を眺めた。
さすがにこう毎日雨が続いては洗濯物が乾かない。
さてどうしたものか、とまもりは考える。
近所のコインランドリーに行こうかと学校帰りに少し覗き込んでみたが、考えることは皆同じようで乾燥機は全て使用中。更に待つ人の影もあったので、これはダメだと諦めて室内干しにしているのだが、如何せん乾きが悪い。
ためしに一枚、昨日から干しておいたTシャツを手にとって見たが、なんとなく湿っている。
「まいったなぁ・・・」
今年の春先に引越しをして、その時に持ってきた服は必要最低限のものだった。
後は買い足せばいいと思っていたのだけれど、予想外の長雨に買い物すらままならず今に至っている。
しかも間の悪いことに先ほど帰宅途中に車に水をかけられ、着ていた物は全て洗濯機行きとなってしまった。
このままでは明日明後日にも着られる服がなくなってしまう。
とりあえず明日のために滅多に着ないために残っていたジーンズを取り出してきたものの、Tシャツ類は今着ているものを除いて全て洗濯してしまった。
「やっぱりこれ明日のために取っておこう。でもパジャマも洗濯しちゃってたっけ・・・」
今だけ室内で過ごすための着替えが必要だ。
まもりは少し考えて、ヒル魔の部屋の扉を開く。
鍵はついているが、彼がここに鍵をかけたところは一度も見たことがない。
信用されているのだと改めて面映い気持ちになりながらそこをくぐり、彼の箪笥に手をかける。
「ごめんね。一枚お借りします」
小さく謝罪をして、その中で使用頻度の低そうなTシャツを物色する。
どれもこれも黒ばかり。どれだけ同じものを持ってるのだろうか、と半ば呆れてしまう。
と。一枚、色味の違うものがあった。
「あれ?」
それを引き出し、まもりは瞳を瞬かせる。
「これは・・・」
「帰ったぞ」
「おかえりなさーい」
ヒル魔が声をかけると、キッチンから応じる声が返ってきた。
食欲をそそる匂いが玄関からでもよく判る。
暑さゆえに素麺ばっかり、というメニューにはならない食卓。
気鬱な長雨も彼女の食欲減退にはつながらないんだな、とある意味感心しながらリビングへの扉を開いたヒル魔は。
「っ!?」
そのまま、驚きのあまりフリーズした。
「ヒル魔くん、濡れてない? 大丈夫? あれ、・・・どうしたの?」
「・・・そりゃこっちの台詞だ」
タオルを手に近寄ってきたまもりの格好に指を突きつける。
「あ、これ? ごめんね、雨で着る服がなくなっちゃって、勝手に借りました」
まもりはずるりと落ちそうになる襟ぐりをぐい、と引き上げてにっこりと笑う。
彼女が着ていたのは、ワールドカップユース日本代表のユニフォームだった。
その上にエプロンをしているので、珍妙な格好になっている。
「っていうか、まだこれ持ってたのね」
てっきり終わったら捨てちゃったのかと思ったのに、と笑う彼女に、ヒル魔は頭を抑える。
「それにしたって、なんでソレなんだ」
「普段着ないし、一番使用頻度が低そうだったから」
「着るものねぇんなら買うなり実家から送ってもらうなりしやがれ」
「そう思ってたんだけど、タイミングが合わなくてなんとなく足りなくなっちゃった」
話してるうちにまもりの肩がまたずるりと落ちる。
「あん、もう! やっぱりヒル魔くんのだけあって肩幅広いのよね、これ」
「・・・アメフトのユニフォームだぞ。下に防具つけんだからデケェに決まってんだろ」
「あ、そっか」
忘れてたわ、と笑いながら踵を返したまもりの下肢に、ヒル魔は再び固まった。
「・・・下は」
先ほどまではエプロンで隠されていて気づかなかったが、裾からはすんなりと白い脚が丸見えだ。
「これ長いから、ワンピースみたいだし、前はエプロンで隠れるしいいかと思って」
それに見る人ヒル魔くんだけだし、と屈託なく笑うまもりに彼は深々と嘆息する。
途端にまもりの顔が曇る。上目遣いにヒル魔を見上げ、不安そうに小首を傾げた。
「・・・だめだった? 記念のものだし、やっぱり別のを着たほうがよかったかしら」
「テメェが反省するのは、そこじゃねぇ」
「じゃあ、どこ?」
小首を傾げるまもりを、ヒル魔はちょいちょいと招き寄せる。
疑問を持たず近づいた彼女を、彼はあっという間に捕まえると、そのまま抱え上げてしまう。
「ちょ、ちょっと!? いきなり何!?」
「テメェはいい加減にその糞無自覚をなんとかしやがれ」
「え? ええ!?」
まもりを連れて行こうとしているのは彼の自室。
その意図は明らかで。
「お腹すいてるでしょ!? ちょっと、先にご飯食べようご飯!!」
とまもりは焦るが彼は頓着せず、強引に彼女をベッドへと導いたのだった。
「こっちが先だ」
「・・・っていうことがあってね、それ以来見る度思い出すから恥ずかしくて」
出せなかったのよね、とまもりは苦笑する。懐かしいわ、という呟きに、アヤは額を押さえた。
「別にお父さんの苦労話を聞きたかったわけじゃない」
そして、自分が嫁いだ途端にこういった話をしないで欲しい、と切実に思う。
けれど、まもりは分かっていない。
「え? どうして? お母さんの苦労話よ?」
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鳥(とり)
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性別:
女性
趣味:
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
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