旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
「はい、コーヒー」
「ありがとうございます」
「少し、まもりも落ち着いたかしら」
「・・・まだ多分混乱してますね」
「まあ、当然よね」
まもりの母も自らのカップに口をつけながら嘆息する。
「もしかして、避妊しなかったの?」
「いいえ。気をつけてました」
「そう。・・・まあ、何をしても確実じゃないから仕方ないわね」
ピルを飲めば違うけどね、と肩をすくめるまもりの母に焦りの色はない。
「心配しないんですか?」
「え?」
それに疑問を持ったヒル魔の問いかけに、彼女は目を丸くして、次いで微笑んだ。
「若い頃は些細なことで体のリズムは狂うものよ。多分妊娠はしてないでしょう」
「そう、ですか」
その言葉に、僅かにヒル魔が消沈した。
それにめざとく気づいて、彼女は笑みを僅かに苦いものに変えた。
「残念?」
「はい」
ためらいもなくヒル魔は肯定する。
「娘の親としては複雑な答えね。何、もし妊娠してたら結婚するつもりだった?」
「勿論です」
「・・・相変わらず、うちの子を好きねえ」
呆れたような口調にも、ヒル魔は噛みつくことなくコーヒーを啜る。
まもりの母だからというのもあるが、どことなく彼女には弱いのだ。
「そんな妖一くんなら大丈夫、って目をつぶってることも多いのよ」
「どちらにせよ、高校を卒業したら嫁にもらうつもりですよ」
ヒル魔はにやりと口角を上げる。まもりの母も軽く肩をすくめるだけだ。
「それはまず、うちの主人を説き伏せてからにして欲しいわ。脅迫はなしよ?」
「それは重々承知です」
だから了承をもぎ取る要因の一つで妊娠もありだと思ったのだ、とヒル魔は内心呟く。
「・・・お母さん」
細い声に、二人はばっと振り返る。
所在なげに居間の入り口側に立つまもりの元に、母が歩み寄った。
「どうだった?」
「これ・・・」
差し出されたそれを見てまもりの母は微笑んだ。
「陰性ね。多分間違いないでしょう」
その一言に、ヒル魔は派手に舌打ちした。
まもりはその音にちらりと彼を見る。
「お母さん、私・・・」
けれど、まもりが口を開くより先に。
「残念ね、まもり。妊娠してたら責任持ってヒル魔くんが結婚するって言ってくれたのにね」
「?! な、なななお母さん?!」
びくっとまもりが飛び上がった。
それにヒル魔がぴんと片眉を上げる。
「妊娠してなくても結婚はしますよ。卒業までにおじさんの了承をもぎ取ってね」
「ええっ?! なんの話をしてたの二人とも!?」
そこでまもりははたと気づいて動きを止めた。
「・・・お母さん、いつから、知って・・・」
まもりは今回のことを母に一言も相談してなかった。
ヒル魔と付き合っていることも、体を重ねるほどの関係だとも言ったことはない。
なのに、母は全て承知とばかりに妊娠検査薬まで持って来たではないか。
・・・そして、今、二人で何を話していたというのか。
けれど母はそんなまもりにきょとんとした顔で答えた。
「そりゃあ・・・まもりが妖一くんに片思いしてるころから今まで、よ」
「―――?!」
お母さんは何でもお見通しよ、と彼女は笑ってそうそう、と続ける。
「妖一くんのご両親ともよく話してたから、いつから二人が付き合うかしら、って賭もしたの」
「えええええ!?」
「賭けてたんですか?」
それは初耳だったらしいヒル魔が眉を寄せる。
「結果は私の一人勝ちよ。やっぱり娘側の女親は強いってことかしらね」
ころころと笑う彼女に、ヒル魔とまもりは顔を見合わせ、互いに脱力する。
ここまで筒抜けなのなら、隠し立てする必要はないようだ。
がっくりと肩を落とした子供たちを尻目に、彼女は軽やかに踵を返す。
「さて。安心したらお腹が空いたんじゃない? お昼ご飯用意するわね」
何にしようかしら、と朗らかに台所に消えた母を見送るまもりの肩を、ヒル魔が抱く。
「あ・・・」
「さっきのは嘘でも冗談でもねぇからな」
その表情が嘘のかけらもなく至って真剣だったので。
「妖一って・・・案外一途なのね」
何となくこそばゆくなってまもりはかわいくないことを言う。
「案外、は余計だ。メシ喰ったら病院行くぞ」
その言葉にまもりは瞬く。
「え? 妖一、調子悪いの?」
「糞! テメェの、だ。一応検査しとくに越したことねぇだろうが」
肩を抱く手の暖かさに、まもりはそっと目を伏せる。
思った以上に彼はまもりを大事にしてくれているようだ。
不安に震えた昨夜とは比べるべくもない、平穏。
「・・・ありがとう」
自然と笑みが浮かぶ。ようやく心から浮かべた安堵の笑み。
「今度、もし同じようなことがあったら真っ先に相談しろよ」
「そう思わせないようにしてくれるのが一番なんだけど」
どれだけ心配したと思っているのか、と。
むくれて僅かに唇を尖らせると、すかさず降りてくるキス。
「残念ながら、それは聞けねぇな」
彼はそう笑いながら、まもりの体を抱きしめたのだった。
***
というわけで公子様リクエスト『妊娠(子どもを作る事)について話し合う』でした。
・・・もう少しヒル魔さん取り乱すかな-、と思ったんですけどむしろ大喜びくらいの勢いになってしまいました。代わりにまもりちゃんが大パニックで微妙にすれ違い。
彼にとって妊娠は大好きなまもりちゃんを独占するいい大義名分が出来た、くらいにしか思ってくれないようです(笑)大分お待たせしました! リクエストありがとうございましたーw
ちなみにタイトルの『朱嘴鸛』は『シュバシコウ』と読みます。
「ありがとうございます」
「少し、まもりも落ち着いたかしら」
「・・・まだ多分混乱してますね」
「まあ、当然よね」
まもりの母も自らのカップに口をつけながら嘆息する。
「もしかして、避妊しなかったの?」
「いいえ。気をつけてました」
「そう。・・・まあ、何をしても確実じゃないから仕方ないわね」
ピルを飲めば違うけどね、と肩をすくめるまもりの母に焦りの色はない。
「心配しないんですか?」
「え?」
それに疑問を持ったヒル魔の問いかけに、彼女は目を丸くして、次いで微笑んだ。
「若い頃は些細なことで体のリズムは狂うものよ。多分妊娠はしてないでしょう」
「そう、ですか」
その言葉に、僅かにヒル魔が消沈した。
それにめざとく気づいて、彼女は笑みを僅かに苦いものに変えた。
「残念?」
「はい」
ためらいもなくヒル魔は肯定する。
「娘の親としては複雑な答えね。何、もし妊娠してたら結婚するつもりだった?」
「勿論です」
「・・・相変わらず、うちの子を好きねえ」
呆れたような口調にも、ヒル魔は噛みつくことなくコーヒーを啜る。
まもりの母だからというのもあるが、どことなく彼女には弱いのだ。
「そんな妖一くんなら大丈夫、って目をつぶってることも多いのよ」
「どちらにせよ、高校を卒業したら嫁にもらうつもりですよ」
ヒル魔はにやりと口角を上げる。まもりの母も軽く肩をすくめるだけだ。
「それはまず、うちの主人を説き伏せてからにして欲しいわ。脅迫はなしよ?」
「それは重々承知です」
だから了承をもぎ取る要因の一つで妊娠もありだと思ったのだ、とヒル魔は内心呟く。
「・・・お母さん」
細い声に、二人はばっと振り返る。
所在なげに居間の入り口側に立つまもりの元に、母が歩み寄った。
「どうだった?」
「これ・・・」
差し出されたそれを見てまもりの母は微笑んだ。
「陰性ね。多分間違いないでしょう」
その一言に、ヒル魔は派手に舌打ちした。
まもりはその音にちらりと彼を見る。
「お母さん、私・・・」
けれど、まもりが口を開くより先に。
「残念ね、まもり。妊娠してたら責任持ってヒル魔くんが結婚するって言ってくれたのにね」
「?! な、なななお母さん?!」
びくっとまもりが飛び上がった。
それにヒル魔がぴんと片眉を上げる。
「妊娠してなくても結婚はしますよ。卒業までにおじさんの了承をもぎ取ってね」
「ええっ?! なんの話をしてたの二人とも!?」
そこでまもりははたと気づいて動きを止めた。
「・・・お母さん、いつから、知って・・・」
まもりは今回のことを母に一言も相談してなかった。
ヒル魔と付き合っていることも、体を重ねるほどの関係だとも言ったことはない。
なのに、母は全て承知とばかりに妊娠検査薬まで持って来たではないか。
・・・そして、今、二人で何を話していたというのか。
けれど母はそんなまもりにきょとんとした顔で答えた。
「そりゃあ・・・まもりが妖一くんに片思いしてるころから今まで、よ」
「―――?!」
お母さんは何でもお見通しよ、と彼女は笑ってそうそう、と続ける。
「妖一くんのご両親ともよく話してたから、いつから二人が付き合うかしら、って賭もしたの」
「えええええ!?」
「賭けてたんですか?」
それは初耳だったらしいヒル魔が眉を寄せる。
「結果は私の一人勝ちよ。やっぱり娘側の女親は強いってことかしらね」
ころころと笑う彼女に、ヒル魔とまもりは顔を見合わせ、互いに脱力する。
ここまで筒抜けなのなら、隠し立てする必要はないようだ。
がっくりと肩を落とした子供たちを尻目に、彼女は軽やかに踵を返す。
「さて。安心したらお腹が空いたんじゃない? お昼ご飯用意するわね」
何にしようかしら、と朗らかに台所に消えた母を見送るまもりの肩を、ヒル魔が抱く。
「あ・・・」
「さっきのは嘘でも冗談でもねぇからな」
その表情が嘘のかけらもなく至って真剣だったので。
「妖一って・・・案外一途なのね」
何となくこそばゆくなってまもりはかわいくないことを言う。
「案外、は余計だ。メシ喰ったら病院行くぞ」
その言葉にまもりは瞬く。
「え? 妖一、調子悪いの?」
「糞! テメェの、だ。一応検査しとくに越したことねぇだろうが」
肩を抱く手の暖かさに、まもりはそっと目を伏せる。
思った以上に彼はまもりを大事にしてくれているようだ。
不安に震えた昨夜とは比べるべくもない、平穏。
「・・・ありがとう」
自然と笑みが浮かぶ。ようやく心から浮かべた安堵の笑み。
「今度、もし同じようなことがあったら真っ先に相談しろよ」
「そう思わせないようにしてくれるのが一番なんだけど」
どれだけ心配したと思っているのか、と。
むくれて僅かに唇を尖らせると、すかさず降りてくるキス。
「残念ながら、それは聞けねぇな」
彼はそう笑いながら、まもりの体を抱きしめたのだった。
***
というわけで公子様リクエスト『妊娠(子どもを作る事)について話し合う』でした。
・・・もう少しヒル魔さん取り乱すかな-、と思ったんですけどむしろ大喜びくらいの勢いになってしまいました。代わりにまもりちゃんが大パニックで微妙にすれ違い。
彼にとって妊娠は大好きなまもりちゃんを独占するいい大義名分が出来た、くらいにしか思ってくれないようです(笑)大分お待たせしました! リクエストありがとうございましたーw
ちなみにタイトルの『朱嘴鸛』は『シュバシコウ』と読みます。
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ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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