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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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最凶悪魔!(下)



+ + + + + + + + + +
沈黙が落ちる。
「・・・おい、コーヒー」
当たり前のようなヒル魔の命令に、まもりは嘆息して立ち上がる。
「端から見たら変な光景なんでしょうね」
「だな」
まもりが椅子にふんぞり返り、パソコンを覗き込んでしきりに何か打ち込んでいる。
ヒル魔が甲斐甲斐しくコーヒーを用意する。
ふと思い出したようにまもりは冷蔵庫を覗き込んだ。
「あ、あった」
「ア?」
手にはプリンが一つ。途端にヒル魔の眉が寄った。まもりはそれを見て感心したように頷く。
「・・・私の顔、しかめっ面になるとホントかわいくないわ」
「しかめっ面が鑑賞に堪える奴なんざいねぇよ」
どうするんだそれ、という視線にまもりはヒル魔の顔でにっこりと笑った。
「ヒル魔くんの味覚がどうだか試そうと思って」
「アァ?!」
コーヒーを淹れて、一つにはミルクと砂糖をたっぷり。
そうしてトレイにプリンと共に載せてカジノテーブルへ。
「はい」
外見はまもりだが中身がヒル魔ということで、ブラックコーヒーを手元に置く。
外見がヒル魔だが中身はまもりの方にはカフェオレとプリンを。
「身体が違うと味覚も変わるのかなって。それとも記憶の影響が強いのなら変わらないかしら?」
「サアネ」
二人はカップを持ち上げ、口をつける。
「「・・・!!」」
そうしてほぼ同時に固まった。
「何コレ?!」
舌が痺れる、とまもりは渋い顔になった。甘さが苦痛になるなんて初めてだ。
それはヒル魔も同様で、苦みに渋い顔になっている。
「・・・ヒル魔くんにとっての砂糖の威力を思い知ったわ・・・」
「テメェにとっての無糖もな」
寄越せ、とカップを差し出されて交換する。
ミルクの匂いのないカップ。それなのに妙に落ち着いた。
「苦いコーヒーが美味しいなんて初めて思ったわ」
「甘ェ。・・・が、テメェの標準がコレだっつーのはよく分かった」
「美味しいでしょ。プリンも食べてみてよ」
「むしろこうなったらシュークリーム食ってみたい気がすんなァ。どんな感覚なんだか」
そう言いつつもプリンの蓋を開いてプラスチックのスプーンで掬い上げるその仕草に。
「・・・?」
不意にまもりの喉が渇いた、気がした。
今コーヒーを飲んでいるのに、ともう一口嚥下するが、それとは違う渇いたという感覚。
ヒル魔は黙々とプリンを食べている。自分の身体では感じられないその感覚が面白いようだ。
その唇が濡れてつやつやと光って見える。自分の身体だろうに、と思うのに。
「どうした」
「え?」
プリンを食べ終えたヒル魔がこちらを見ていた。少し上目遣いに見上げてくる様子に他意はないように、見える。
けれど中身はヒル魔だ、何を考えているのか分からない―――そう思ったのに。
「おい、糞マネ?」
ヒル魔の発する声が妙に心地よく感じる。
「手、貸して」
「手?」
差し出された手を握ってみる。
「小さいわね」
柔らかく、吸い付くような肌触りの手。白くて、甘い匂いがする。
指先まですべてが滑らかで、短く切りそろえられた爪がつやつやと可愛らしい。
「離せ」
なんだかずっと触っていたくなって、いじり回していたらヒル魔が居心地悪そうに身じろいだ。
少し眉を寄せて嫌がるようなそぶりなのだが、その頬がかすかに赤い。
「・・・」
思わず手が出て、ヒル魔の二の腕を掴んだ。
その柔らかさに一瞬息が止まる。
「おい、何やってんだ」
困惑したような声に、なんだか愉快な気持ちになってくる。
まもりは彼の腕を掴んだまま立ち上がった。がたん、と立った音にヒル魔の肩がびくりと震える。
「身体の意識の方が強いみたい、よね」
自然と口角が上がった。
「・・・テメェ何笑ってやがる」
「ヒル魔くんこそ、どうしたの? 何か怖いの?」
「何言って、っ」
身じろごうとした隙を突いて、抱きしめてみる。
腕に収まる柔らかい身体。鼻腔に甘い香り。
驚き丸くなって見上げてくる青い瞳。
ああ。
「・・・ヒル魔くんって、私のこと随分好きなのね」
「アァ?! 何ほざいて・・・」
「だって、私の身体抱きしめただけで、すっごく気持ちいいんだもの」
「!」
途端にヒル魔の顔に朱が走る。
彼の身体に彼の意識があるときには、きっと微動だにしないだろうその表情。
実際ヒル魔の身体になってみて、顔が熱いとかそういうことはない。
そう言う場面で表情を出さないようにと鍛えられた身体だからなのだろうか。
「ふうん」
「っ、ちょ、どこ触ってんだ!」
するりとその身体に触れる。柔らかい。どこを触っても、服越しであってもその感触が分かる。
ついつい夢中になって触りすぎたくなる。
嫌がって身じろがれてしまえばなおのこと、追いたくなる。
「テメェ、ここ部室、だろうが」
「気にするの?」
まもりは意識して口角を引き上げた。
きっと、いつもの悪魔じみたあの顔だと想像できる。
「さっきまでこうして試してみようって言ってたのはヒル魔くんじゃない」
目を見開いた自分の顔なのに。
妙、に。
「試してみましょうよ」
これが欲情している彼なのか、とどこか夢うつつにまもりは思う。
混乱したような表情のヒル魔の顎を捕らえ、その唇に、キスを。


深く、もっと深く。
精神の奥の奥、誰にも見えないくらい―――奥へ。


***
メルヘ様キリ番リクエスト『最強天使!の続き』でした。えー、私のミスでリクエストの文面を紛失してしまったので確かこんなことをご要望いただいたような・・・という記憶のみで書かせていただきました。遅くなって申し訳ありませんでした! すごく楽しかったです♪
食事は記憶でするのだとどこかで読んだのですが、あえてそれを無視して身体の感覚を優先させてみましたwこの後は互いに無糖も多糖も貶し合うことなく生活できるのではと思います(笑)
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同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
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