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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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青とプラチナ(7)



+ + + + + + + + + +
「でも、ファンイベントとかあるんだろうし・・・」
チームの意向でファンとのふれあいがあれば強制的に参加させられそうだし。
そうなれば会話することもあって、出会いもあるのだろう。
見知らぬ女性に声を掛けられて楽しげなヒル魔を想像し、まもりの顔が曇った。
「・・・やだな」
「ナニガ」
「!」
振り返れば、ヒル魔が立っていた。
相変わらず足音がしない。
「怪我したの?」
「昼飯だ」
言われて時計を見れば確かに昼食の時間だった。
「行くぞ」
ごく自然に手を取られる。
かつては絶対になかったその行動が面はゆく、けれど嬉しくて。
まもりはその手をぎゅっと強く握った。
彼女はこちらに来るまで知らなかったが、ヒル魔は相当な数のファンを有するアメフト選手だった。
一見すると破天荒なプレースタイルは。アメリカンドリームに向けて突き進む彼のひたむきさの現れであると賞賛されていて。
そのくせ多くを語りはしない。
日本人離れした容姿はど派手なのに、それとは裏腹にマスコミを避けるような彼の行動は逆に目を引いた。
人は隠されるとその先を見たくなるものだ。
日本でも海外でもそれは同じ。
露出をギリギリまで抑えた謎めいた存在。
そうして、QBとしての腕前は―――実際は凡人の域を出ないのだけれど―――的確で。
相当な努力と絶妙な個人情報の統制でもって、彼はチームにとって無くてはならない存在という立場を確立していた。
まもりは隣の彼を見上げる。
「ヒル魔く・・・ヨウイチは、テレビにあんまり出てなかったわよね」
「試合くらいだな」
試合以外で彼が個人的にテレビでインタビューを受けたりコメントしたり、ということはなかった。
「どうして?」
「そんな時間はねぇ」
ヒル魔はじろりとまもりを睨め付けて、それに、と続けた。
「テメェがこっちに来るまでは、俺の発言は極力マスコミに伏せさせてた」
「・・・やっぱり」
彼がニュースで取り上げられることは希にあっても、本当に僅かな部分だけで。
日本にいて得られるのは、彼の最低限の生存報告程度でしかなかった。
「ヒル魔くんにしては静かすぎると思ったもの」
ヒル魔は無言で舌打ちした。
「・・・んもう、別にいいじゃない呼び方なんて」
「ホーソウデスカドウヨバレタッテイインデスネ」
ヒル魔の声が抑揚をなくす。
「糞・マ・ネ」
「ッ、嫌!!」
懐かしいけれど、今の呼び方にはあからさまに悪意が混ざっていた。
「ジャア姉崎」
「・・・うーん」
そう呼ばれたのは空港以来二度目だけれど。
なぜだかわき上がった違和感に眉を寄せた。
無言でヒル魔の手を引く。強請るような仕草に、ヒル魔は低く喉で笑って。
「まもり」
と。
そう呼ばれ、まもりの違和感が失せる。
「昔はそんなことなかったのに」
思わずそう呟いてしまう。
高校時代のあの時。
彼がまもりを呼ぶときは必ず『糞マネ』と呼んだし、それに違和感を次第に感じなくなっていた。
あまり喜ばしくない事態だとしても、慣れとは恐ろしいと思っていたのだけれど。
「あの時は」
「え?」
「俺とテメェの位置がそれ以上でもそれ以下でもなかったから、違和感なんざなかったんだよ」
部活の部長とマネージャー。それ以上の関係ではなかった。
想いはあったけれど、口にせず手も伸ばさなかったから。
「・・・ああ」
まもりもようやく合点が行く。
あの高校時代の、短くも濃い学生生活を共に過ごした間と、今。
どちらも相手を想って、だからこそそれ以上に口を出さずただひたすらに行動したその後。
関係がもう、過去とは違うから。
今はもう、あの時とは違うから。
だから。


<続>
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同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
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