旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
その日、午前中の授業も半ばを過ぎたあたりで蛭魔妖一は登校してきた。
ネクタイを締め、髪を逆立てず、武器も持たないままに。
その耳がなければ彼をヒル魔だとは皆気づかなかっただろう。
休み時間に廊下で談笑していた男子生徒は、彼が通り過ぎて、何の気なしにそちらを見て。
「・・・・・・!?」
勢いよくもう一度そちらを見て目を疑う。
間違いなくヒル魔なのだが、なんでこんな中途半端な時間にそんな格好で学校にやって来たのだろうか。
いくら攻撃的な姿ではないとは言っても、迂闊に声を掛けられる様子ではなかった。
何しろ彼の顔はこわばり、常に浮かべている笑みもない。
そうして妖気よりももっとどす黒く立ち上る怒りのオーラが遠くからでも分かったからだ。
まるで地面に恨みでもありそうな様子で足音荒く歩いて行く彼を、彼は呆然と見送った。
そうして、ヒル魔はまっすぐにまもりのクラスまでやって来た。
「・・・姉崎はいるか」
地獄の底から声が聞こえたらこんな様子なんだろう、と思えるほどその声は低かった。
不機嫌さが滲んだその姿に教室内の雑談は全て止まった。
尋ねられた男子生徒もしばらく言葉も紡げないほど怯えていたが、視線をながした先、廊下を見てはっとした顔になる。
視線を追い、その先を見たヒル魔は。
「あら、ヒル魔くん。今日は遅いわね」
さほど離れていないところで不自然なくらい満面の笑みを浮かべるまもりを見つけた。
「でも校則守ってるじゃない。偉い偉い」
ぶちんとどこかがキレた音を立てた。
「姉崎ィ―――――――――!!!」
ヒル魔の怒号に、どのクラスからも机と椅子が生徒ごと崩れる音がする。
廊下を見ようという命知らずはいないらしい。
そうして、ヒル魔がまもりの所在を尋ねた生徒も、彼が見ていないのをいいことにそろーっと扉を閉めた。
慌てて教室の中に逃げ去る足音にもヒル魔は構わず、じっとまもりを見ていた。
鬼神もかくや、という形相でまもりを睨み付けるヒル魔に、まもりは笑みを深めたが、不意に踵を返して。
軽やかにその場から走り去る。
「ッ、テメェ!!」
ヒル魔も弾かれたように後を追う。
「待て!!」
「待たないわ-」
怒りに震えるヒル魔の声とは対照的に、まもりの声はころころと明るく華やかだ。
追いかけっこの様相の二人を、教室の中から誰もが声もなく目撃した。
授業を行うべく廊下を歩いていた教師たちも二人の様子に声もなくただ横に避けて見送ってしまう。
まもりがヒル魔を追うことはあっても、ヒル魔がアメフト絡み以外であんな様子で人を追うのを見たことがあっただろうか。
そのフロアは不気味なくらい静まりかえり、授業開始のチャイムだけが白々しく鳴り響いたのだった。
そうして不思議な光景は部室にまもりが逃げ込むまで続いた。
彼女が余裕の笑みを浮かべて部室に入り込む。
ヒル魔もその後を追った。
まもりは部室の鍵を閉めなかった。そうして、ヒル魔は部室に入るなり鍵を閉めた。
「・・・あのねえ」
ヒル魔の顔にいくつもの青筋が浮かぶ。
「なんで私の格好のままで学校に行くの!!」
彼の口から飛び出したのは、まもりの口調で。
「いいじゃねぇか。糞風紀委員様らしい模範的な行動してやってんだ。むしろ感謝しやがれ」
ケケケ、とヒル魔の口調で笑うのはまもり。
そう。
「人格入れ替わりなんてSF小説かドラマくらいしかないんだと思ってたのに・・・!」
見た目はヒル魔だが中身がまもりで。
見た目はまもりだが中身がヒル魔なのだ。
彼らは昨日からずっとこの状態のままなのである。
頭を抱えるヒル魔と、椅子にどっかりと足を組んで座るまもりというのはかなり違和感があった。
「別にテメェの経歴に傷が付くわけじゃねぇだろ」
「つくわよ! 昨日、何があったかちゃんと聞いたんですからね!!」
今朝も目が覚めたら見た目がまもりのままのヒル魔はいなかった。
残っていたのはまもりのロケットベアがついた携帯電話だけ。
そこには昨日の日付で体調を心配する咲蘭たちからのメールがあった。
かなり変な行動をしたらしい、というのが行間からひしひしと察せられて。
本日、まもりはなるべく彼の裸を直視しないようにして身支度を調え、どうにかここまでやってきたのだ。
「今日は何しでかしたの?!」
「してねぇ。フツーに授業受けてフツーにテメェの糞友達とオシャベリしてマシタヨ」
「いやぁああ! ヒル魔くんのフツーが普通のはずがないわよ!!」
誰かがもし、外で声だけを聞くことが出来たら、きっと自分の耳がおかしくなったのだろうと思うだろう会話が続いている。
「だから昨日、あのままヤッてりゃよかったじゃねぇか」
試してみようとした外見はまもりで中身はヒル魔に対し、外見はヒル魔で中身はまもりが絶対嫌だと拒否したのだ。
まもりの身体では力ずくでの実力行使も出来ない、とヒル魔も舌打ちするしかなかった。
「だっ・・・! 嫌じゃない!! 自分の身体よ!?」
「戻れない方が困るだろーが」
「そ、そりゃそうだけど・・・」
まもりがむっと眉を寄せる。外見が本人の時はかわいかったその仕草だが、見た目がヒル魔の今でははっきり言って気持ち悪い。
<続>
ネクタイを締め、髪を逆立てず、武器も持たないままに。
その耳がなければ彼をヒル魔だとは皆気づかなかっただろう。
休み時間に廊下で談笑していた男子生徒は、彼が通り過ぎて、何の気なしにそちらを見て。
「・・・・・・!?」
勢いよくもう一度そちらを見て目を疑う。
間違いなくヒル魔なのだが、なんでこんな中途半端な時間にそんな格好で学校にやって来たのだろうか。
いくら攻撃的な姿ではないとは言っても、迂闊に声を掛けられる様子ではなかった。
何しろ彼の顔はこわばり、常に浮かべている笑みもない。
そうして妖気よりももっとどす黒く立ち上る怒りのオーラが遠くからでも分かったからだ。
まるで地面に恨みでもありそうな様子で足音荒く歩いて行く彼を、彼は呆然と見送った。
そうして、ヒル魔はまっすぐにまもりのクラスまでやって来た。
「・・・姉崎はいるか」
地獄の底から声が聞こえたらこんな様子なんだろう、と思えるほどその声は低かった。
不機嫌さが滲んだその姿に教室内の雑談は全て止まった。
尋ねられた男子生徒もしばらく言葉も紡げないほど怯えていたが、視線をながした先、廊下を見てはっとした顔になる。
視線を追い、その先を見たヒル魔は。
「あら、ヒル魔くん。今日は遅いわね」
さほど離れていないところで不自然なくらい満面の笑みを浮かべるまもりを見つけた。
「でも校則守ってるじゃない。偉い偉い」
ぶちんとどこかがキレた音を立てた。
「姉崎ィ―――――――――!!!」
ヒル魔の怒号に、どのクラスからも机と椅子が生徒ごと崩れる音がする。
廊下を見ようという命知らずはいないらしい。
そうして、ヒル魔がまもりの所在を尋ねた生徒も、彼が見ていないのをいいことにそろーっと扉を閉めた。
慌てて教室の中に逃げ去る足音にもヒル魔は構わず、じっとまもりを見ていた。
鬼神もかくや、という形相でまもりを睨み付けるヒル魔に、まもりは笑みを深めたが、不意に踵を返して。
軽やかにその場から走り去る。
「ッ、テメェ!!」
ヒル魔も弾かれたように後を追う。
「待て!!」
「待たないわ-」
怒りに震えるヒル魔の声とは対照的に、まもりの声はころころと明るく華やかだ。
追いかけっこの様相の二人を、教室の中から誰もが声もなく目撃した。
授業を行うべく廊下を歩いていた教師たちも二人の様子に声もなくただ横に避けて見送ってしまう。
まもりがヒル魔を追うことはあっても、ヒル魔がアメフト絡み以外であんな様子で人を追うのを見たことがあっただろうか。
そのフロアは不気味なくらい静まりかえり、授業開始のチャイムだけが白々しく鳴り響いたのだった。
そうして不思議な光景は部室にまもりが逃げ込むまで続いた。
彼女が余裕の笑みを浮かべて部室に入り込む。
ヒル魔もその後を追った。
まもりは部室の鍵を閉めなかった。そうして、ヒル魔は部室に入るなり鍵を閉めた。
「・・・あのねえ」
ヒル魔の顔にいくつもの青筋が浮かぶ。
「なんで私の格好のままで学校に行くの!!」
彼の口から飛び出したのは、まもりの口調で。
「いいじゃねぇか。糞風紀委員様らしい模範的な行動してやってんだ。むしろ感謝しやがれ」
ケケケ、とヒル魔の口調で笑うのはまもり。
そう。
「人格入れ替わりなんてSF小説かドラマくらいしかないんだと思ってたのに・・・!」
見た目はヒル魔だが中身がまもりで。
見た目はまもりだが中身がヒル魔なのだ。
彼らは昨日からずっとこの状態のままなのである。
頭を抱えるヒル魔と、椅子にどっかりと足を組んで座るまもりというのはかなり違和感があった。
「別にテメェの経歴に傷が付くわけじゃねぇだろ」
「つくわよ! 昨日、何があったかちゃんと聞いたんですからね!!」
今朝も目が覚めたら見た目がまもりのままのヒル魔はいなかった。
残っていたのはまもりのロケットベアがついた携帯電話だけ。
そこには昨日の日付で体調を心配する咲蘭たちからのメールがあった。
かなり変な行動をしたらしい、というのが行間からひしひしと察せられて。
本日、まもりはなるべく彼の裸を直視しないようにして身支度を調え、どうにかここまでやってきたのだ。
「今日は何しでかしたの?!」
「してねぇ。フツーに授業受けてフツーにテメェの糞友達とオシャベリしてマシタヨ」
「いやぁああ! ヒル魔くんのフツーが普通のはずがないわよ!!」
誰かがもし、外で声だけを聞くことが出来たら、きっと自分の耳がおかしくなったのだろうと思うだろう会話が続いている。
「だから昨日、あのままヤッてりゃよかったじゃねぇか」
試してみようとした外見はまもりで中身はヒル魔に対し、外見はヒル魔で中身はまもりが絶対嫌だと拒否したのだ。
まもりの身体では力ずくでの実力行使も出来ない、とヒル魔も舌打ちするしかなかった。
「だっ・・・! 嫌じゃない!! 自分の身体よ!?」
「戻れない方が困るだろーが」
「そ、そりゃそうだけど・・・」
まもりがむっと眉を寄せる。外見が本人の時はかわいかったその仕草だが、見た目がヒル魔の今でははっきり言って気持ち悪い。
<続>
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ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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