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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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香煙

(ヒルまも)
※『おくり火』のヒル魔さん視点
※薄暗いです
 


+ + + + + + + + + +
煙が肺腑を黒く染める想像を、何度となく繰り返した。
そうして、その黒い肺腑に無数の穴が開いて、息苦しくなって、最後には息絶える。
けれど吐き出す煙は白いままで、想像の状態に至るにはまだまだだと言われているようだ。


「・・・吸ってるのか」
糞ジジイの何か言いたげな顔に、俺は片眉を上げることで答えた。
長い付き合いだ、それだけで俺の言いたいことは分かっただろう。
(自殺なんて、しちゃだめよ)
か細い声は昨日のことのように思い出せる。
(絶対よ。約束よ)
あの優しい顔も、柔らかい身体も、幸せな熱も、甘い匂いも。
(・・・ありがとう)
並外れた記憶力で俺はあいつの全てを覚えていることができる。
けれど―――覚えているだけだ。


触れるわけでもない。逢えるわけでもない。
思い出せば思い出すほど、考えれば考えるほど。
無意識に隣を探す度に、あの手を探そうとする度に。
もういないのだ、もう触れないのだ、もうあの笑顔を見ることはないのだ、と。

とても良くできた頭が絶望的な事実を肯定する。

もう逢えないのだと。
現世では、もう二度と。


苦みが舌を刺し、煙が眸に染みる。
生理現象で薄く滲む涙を、瞬いて消す。
煙と共に仄かに流れ込む熱を舌先で感じる。
こんなものをあたたかいと思う自分が厭わしい。

以前、俺は地獄に行くのだと告げたら、じゃあ私も地獄で待っていてあげると笑っていた。

この肺腑を穢す煙を吐き出しても、空は汚れることなく青いまま。
あの空に似たあいつの元に向かうのはいつの日か。
いつまで、ここで待たなければならないのか。
いつまで、ここで。

一人きりで。

不意にわき上がった苛立ちを、投げ捨てた吸い殻を踏みにじることで打ち消す。
早く、一刻も早く。


もう一度、あいつに、逢いたい。


***
煙草を吸う上司が「寒いときに煙草を吸うと仄かに暖かい」ということを教えてくれたので書きたくなった話。自分が吸わないので感覚は分かりませんし、正直なところ煙草は大が付くほど嫌いですが、煙草の話は書くのも読むのも好きです。
たまーにヒル魔さんが弱る話を書きたくなるようです。
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