旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
小夏が妊娠しているということと、彼女がまだ学生だと言うことで結婚式自体は控えめに行うことになった。
準備自体はかなり慌ただしいながらもヒル魔の脅迫手帳が大活躍した結果、かなり充実した内容になる見通しが立った。
そんな結婚式前日のこと。
夕食も終わり、一息つく時間帯。
「おい」
この日のために出張から帰ってきていたヒル魔が、リビングで新聞を読んでいた妖介を呼ぶ。
小夏は花嫁であるため色々と前日まで準備も忙しいが、妖介自身は至って平素と変わらず過ごしていた。
彼自身がこの家から出て行くわけでもないので当然と言えば当然だろう。
「何?」
「付き合え」
指先一つで誘われ、断る理由もなく妖介は身軽に立ち上がった。
隣に並ぶと頭一つ低い父親がちらりと彼を見上げる。
だが、言葉はない。
娘にもギリギリまで迫られ、息子二人には追い抜かれたり並ばれたりしたりで、身体の大きさで威厳を示すことは出来なくなった―――と。
いつだったかぼやいていたと母がこっそり教えてくれたのを密かに思い出す。
「車だそうか?」
「いい。近場だ」
まもりは聞いていたのだろう、玄関先まで笑顔で見送った。
「行ってらっしゃい」
「ああ」
「行って来ます」
二人でしばし、無言のまま並んで歩く。
「・・・どこに行くの?」
ヒル魔が指さした先には、こぢんまりとした公園。
昼間には近所の子供たちの憩いの場であろうそこは、ひっそりと静まりかえっている。
公園入り口側の自販機で缶コーヒーとミルクティを買い求め、ヒル魔と妖介はその中のベンチに腰掛けた。
妖介にミルクティを、自らには缶コーヒーを。
無言のままそれぞれプルトップを上げ、口をつける。
やがて、沈黙を破ったのはヒル魔だった。
「アヤが生まれる前日に、姉崎の父親とここに来た」
「・・・へえ」
ヒル魔はあまり昔話というか、自らのことを話したがらない。
生まれてから今まで共に生活してきていても、知らないことはまだまだある。
そんな彼が自ら、誰に言われるまでもなく口を開くというのが意外な気がして、妖介は隣をうかがう。
「どんな話したの?」
「もっと姉崎を頼れっつーお達しだったな」
妖介は小首を傾げる。
「十分頼ってるじゃない。あ、それで頼るようになったの?」
「いいや。だが、姉崎の父親からすると俺はあいつほっといてフラフラしてるように見えたんだろうなァ」
「へえ」
ふと、妖介は思いついて口を開く。
「父さんにとって、母さんって何?」
「ア?」
「ほら―――俺が高校生だったとき、母さん家出したじゃない?」
それにヒル魔は渋い顔になった。
あれから十年近く経つが、あの時の記憶は未だ彼の中で生々しいようだ。
「あの時に母さんが色々悩んでたって聞いてたけど、翌日にはすっきりした顔してたし。どう言ったのかな、って」
あの時はただただ母が帰ってきてくれて、笑顔でいてくれることに感謝して。
そうして父のあの取り乱しようを思い出したくなくて、自然とその時のことに触れないで今まで来た。
けれどもう、聞いても良いような気がしたのだ。
<続>
準備自体はかなり慌ただしいながらもヒル魔の脅迫手帳が大活躍した結果、かなり充実した内容になる見通しが立った。
そんな結婚式前日のこと。
夕食も終わり、一息つく時間帯。
「おい」
この日のために出張から帰ってきていたヒル魔が、リビングで新聞を読んでいた妖介を呼ぶ。
小夏は花嫁であるため色々と前日まで準備も忙しいが、妖介自身は至って平素と変わらず過ごしていた。
彼自身がこの家から出て行くわけでもないので当然と言えば当然だろう。
「何?」
「付き合え」
指先一つで誘われ、断る理由もなく妖介は身軽に立ち上がった。
隣に並ぶと頭一つ低い父親がちらりと彼を見上げる。
だが、言葉はない。
娘にもギリギリまで迫られ、息子二人には追い抜かれたり並ばれたりしたりで、身体の大きさで威厳を示すことは出来なくなった―――と。
いつだったかぼやいていたと母がこっそり教えてくれたのを密かに思い出す。
「車だそうか?」
「いい。近場だ」
まもりは聞いていたのだろう、玄関先まで笑顔で見送った。
「行ってらっしゃい」
「ああ」
「行って来ます」
二人でしばし、無言のまま並んで歩く。
「・・・どこに行くの?」
ヒル魔が指さした先には、こぢんまりとした公園。
昼間には近所の子供たちの憩いの場であろうそこは、ひっそりと静まりかえっている。
公園入り口側の自販機で缶コーヒーとミルクティを買い求め、ヒル魔と妖介はその中のベンチに腰掛けた。
妖介にミルクティを、自らには缶コーヒーを。
無言のままそれぞれプルトップを上げ、口をつける。
やがて、沈黙を破ったのはヒル魔だった。
「アヤが生まれる前日に、姉崎の父親とここに来た」
「・・・へえ」
ヒル魔はあまり昔話というか、自らのことを話したがらない。
生まれてから今まで共に生活してきていても、知らないことはまだまだある。
そんな彼が自ら、誰に言われるまでもなく口を開くというのが意外な気がして、妖介は隣をうかがう。
「どんな話したの?」
「もっと姉崎を頼れっつーお達しだったな」
妖介は小首を傾げる。
「十分頼ってるじゃない。あ、それで頼るようになったの?」
「いいや。だが、姉崎の父親からすると俺はあいつほっといてフラフラしてるように見えたんだろうなァ」
「へえ」
ふと、妖介は思いついて口を開く。
「父さんにとって、母さんって何?」
「ア?」
「ほら―――俺が高校生だったとき、母さん家出したじゃない?」
それにヒル魔は渋い顔になった。
あれから十年近く経つが、あの時の記憶は未だ彼の中で生々しいようだ。
「あの時に母さんが色々悩んでたって聞いてたけど、翌日にはすっきりした顔してたし。どう言ったのかな、って」
あの時はただただ母が帰ってきてくれて、笑顔でいてくれることに感謝して。
そうして父のあの取り乱しようを思い出したくなくて、自然とその時のことに触れないで今まで来た。
けれどもう、聞いても良いような気がしたのだ。
<続>
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鳥(とり)
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性別:
女性
趣味:
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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