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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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油断大敵(下)



+ + + + + + + + + +
暑くて、狭くて。
天井が低く、目の前に窓があって、ベッドも狭くてでこぼこしている。
いや、これはベッドではない。これは座席。
「あ」
「テメェが起きてメシ作らねぇと食うモンがねぇんだよ」
そうだ、ここはデコトラの運転席。
今、まもりはこの悪魔たちと共にアメリカの大地を横断中、で。
今日から野宿生活で、皆の分の食事はまもりが作ることになっていた。
「ああ!!」
やっと目が覚めた。
「糞煩ェ!!」
大声を上げて飛び上がれば、ヒル魔は身を引き、嫌そうに眉を寄せて耳を覆った。
「ご、ごめんなさいおはよう! 今ご飯作るから顔洗ってああでも着替えとか私」
焦って身支度を調えようとするまもりに、ヒル魔は静かに口を開く。
「まだ出発まで二時間ある」
「えっ?!」
「なんだかんだでそれくらい掛かるだろ」
どうやら準備の時間も見越して起こしてくれたようだ、と察してまもりはようやく落ち着いた。
そうして、椅子に座り直してヒル魔を見上げ、ぺこりと頭を下げる。
「ありがとう、起こしてくれて」
彼とて疲れているはずだ。一分でも長く眠っていたいのではないだろうか。
手を煩わせてしまった、と心苦しくなるが。
「ドウイタシマシテー」
やれやれ、という風情でヒル魔は口角を上げる。
日の光を浴びて髪が輝いている。
疲れを表に出さない顔、黒い服ばかりに身を包んだ姿。
そのまま背を向けて立ち去ろうとする彼は、全てが今し方の夢のように悪魔じみているのに。
まもりはそろりと手を伸ばした。
「ア?」
「あ、ご、ごめんなさい」
背中に触れられ、ヒル魔が不審そうに振り返る。
まもりは真っ赤になって手を引っ込めた。
薄いTシャツ一枚越しで触れた背は、張り詰めた筋肉のある、硬いものだった。
悪魔の羽があるだろうと思った場所には鋭い肩胛骨があるばかり。
ヒル魔はそんなまもりをじろりと睨め付け、小さく舌打ちした。
不機嫌そうなその様子にますます身を小さくするまもりの腕を、不意にヒル魔が強引に引いた。
そのまま、首筋に顔が触れる。
「え、ちょ・・・っ痛!」
赤面する前に、そこから走った痛みにまもりは飛び上がる。
「何!?」
「オシオキ」
「何の?!」
「テメェの胸に手ェ当ててよく考えるんだな」
メシは一時間後に食わせろ、と。
そう告げて、ヒル魔はするりと運転席から飛び降りた。
まもりはヒル魔の言うことがよく分からず、とりあえず考えようと、胸に手を当てた。
ふに。
手に柔らかい感触。
「・・・」
まもりは自らの格好を改めて見下ろした。
タンクトップとショートパンツ。
ブラは寝苦しいので取った状態で。
というわけで、今、とてつもなく無防備な状態、な訳、で。
「~~~~~~~~~~!!」
まもりは超音波ばりの高音で悲鳴を上げた。
窓の外でそんなまもりを見てヒル魔がにやにやと笑っている。
楽しげなそれは、夜明けの光に溢れていて。
恥ずかしさに身を震わせながら背を向け、彼から視線をそらし。

そうして、内心で呟く。
(あんな闇なんて、ヒル魔くんには似合わないわ)
いくら黒を纏おうとも、悪魔を装おうとも。


服越しに触れた彼は、とても、あたたかかった。


***
私はデス・マーチの頃が結構好きなようです。
この恋愛感情未満でのもどかしい感じが凄く愛しい。
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同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
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