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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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守護者たち(1)

(番場とまもりとヒル魔)
※『誘惑の蜘蛛』のつづきです

+ + + + + + + + + +
宿命とか、運命とか。
そんな言葉に興味はないし、考えたこともなかったけれど。
振り返ればそう長くない今までの人生でも常に誰かを守り続けていた気がする。
アメフト部でラインというポジションに就いていたのもあるだろう。
事実、味方を守り続けるという行為は自分の性に合っていた、と番場衛は思うわけだ。

「名は体を表すっていうけど、本当ですよね」
見上げてくる青い瞳を思い出す。
あれはワールドカップユースでの他愛ない会話だったか。
「番場さんは『衛』っていうんですよね。私も『まもり』だからか、守りたいって思うみたいです」
それが楽しそうに綻ぶ。
「俺はポジション的にそうだが・・・姉崎は誰を守るんだ?」
「私は以前・・・セナを守ろう、と思ってました」
その時に浮かべた笑みは微妙に影があったような気がした。
が、すぐに彼女は悪戯っぽく笑う。
「とりあえず今は、皆さんを守ろうと思います」
「俺たちを?」
驚いた番場に、まもりは首をすくめる。
「だって―――」
どこかから聞こえてくるのは銃声。
そうしてかすかな悲鳴と、高笑い。
「あの悪魔が虎視眈々と狙ってますから」
「ああ・・・」
何とも言いようがない。
何を狙っている、とは彼女も明言しなかったが、何となく危険だということは分かった。
ヒル魔が味方だから安全だとは考えない方がいいのだろう。
彼女は短く断って、先ほど銃声が響いていたところへと駆けだしていく。
「ちょっと! ヒル魔くん、危ないでしょう!」
「ケケケ!」
聞こえてくる声は尖っていても楽しそうで。
ヒル魔も楽しげに応じていたし。
ことあるごとに通じ合う二人に、ああ、そういうことかと理解していたのだけれど。


「・・・とりあえず、泣き止め」
「・・・ぅ。はい・・・っ」
番場は目の前でしくしくと泣き続けるまもりにほとほと困り果てた顔で座っていた。
ここは学校側の喫茶店で、客もまばらにいる。
おそらく同じ学校の生徒もいることだろう。
一番奥まった席とはいえ、小さく嗚咽が響けば誰もが興味を引かれる。
けれど店内からは身長二メートル近い番場の影になって彼女の姿は見えないはずだ。
それが逆に心配を含んだ視線を投げられている理由、のような気もする。
下手をしたらこちらが脅しをかけているように見えるのだろうか、と番場は少なからず心配していた。
先ほど興味津々で差し出されたミルクティから立ち上る湯気も薄くなってきている。
「冷めるぞ」
まもりは握りしめたハンカチで鼻を押さえ、ず、と啜った。
けれど手はカップに伸びない。
そういえば、と番場は一つの情報を思い出す。
ヒル魔が『糞シュークリームマニア』と言ってからかっているのを何度か見たことがある。
彼女は大のシュークリーム好きだったはずだ。
「・・・シュークリーム、食べるか」
縋るように尋ねれば。
「たべます」
即答。しかも、泣き止んだ。
「何個食べるんだ」
「・・・三つ」
小さく、とりあえず、と聞こえた気がしたがそれは聞かなかったフリで店員を呼び、シュークリームを注文する。
程なく出てきたそれに、まもりは泣きすぎて腫れた目もそのままにかぶりついた。
「・・・うまいか」
こく、と頷くまもりは黙々とシュークリームを食べる。
泣き止んだことで一息ついたが、話は一向に進展しない。
彼は冷めかけたコーヒーを口に含む。
ぬるいそれは、自らの気分そのものであるような気になった。

<続>
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