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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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蛍の森

(ヒルまも)
※そこはかとなく暗いような気がします(曖昧)
※頂き物イラスト・SS掲載につきジャンル分け変更

+ + + + + + + + + +
夜露に濡れた草を踏みしめる。
青い匂いが、足元から立ち上ってくるのを気にも留めず、ヒル魔は足を運んだ。

深い森。

昼日中には色濃く生命力豊かな緑は、暗く闇に打ち沈んでいる。
夜であっても木々の端くらいは緑を感じるのが常なのだけれど。
今宵は月も星も雲に隠れ、濃度こそ様々ではあるが、闇が其処此処に満ちている。

けれどその闇こそが彼の求めるもの。
まるで何かに導かれるように、ヒル魔は道なき道を進んでいく。

夜風はじっとりと湿り、不快な心地を催す。
眉をひそめ、それでも彼は足を止めない。


やがてぽっかりと開けた場所にヒル魔はたどり着く。
そこは夜空よりもなお暗い泉の縁。
昼間は緩やかに流れ込む水流も見えるのに、闇に紛れてしまえば水と大地との境目さえも曖昧だ。
すい、と視界を過ぎる光。
点滅する緑掛かった淡さ。
いくつもの光が点在する幻想的な空間。
それに見惚れる訳でもなく、ヒル魔は立ち尽くす。
中空に視線を投げ、誰かを待つように。

不意に、ふわりと降り立つ影。
蛍のように淡い光を纏って、華奢な手足をだらりと投げ出して。
その腕を待ちかねたように掴みとり、引き寄せる。
うつむいた白い面はそのままに、柔らかな肢体はヒル魔の胸に容易く落ちた。

その体を抱きしめ、唇を合わせても、より深く体を繋げても。
僅かにも聞こえる声はない。
ただあるのは、言葉の代わりに淡く明滅する光ばかり。
それは薄い羽の形をして彼女の背中で揺らめくのだ。

『恋し焦がれて啼く蝉よりも---』
耳に過ぎるのはどこかで聞いた古い節。

人の魂は蛍になるという。
愛しい人が迎えに来るのを待っているのだとも。
愛しい人を連れて行こうとするのだとも。
・・・そんな寝物語、到底信じられなかった。
この場所で、彼女を見つけるまでは。

それから、ヒル魔は夏になる度この場所に囚われ続けている。

「姉崎」

彼の呼ぶ声ばかりが空しく響く。
声鳴き蛍は、静謐。

『啼かぬ蛍が身を焦がす』

決してこの身を傷つけない淡い光が、この時ばかりは憎くて堪らない。
己のみならず、蛍が集う森を彷徨ってしまうこの体を、心を、燃やしつくしてくれたらどんなにいいか。
するりと腕から抜け出た彼女は、彼の内で荒れ狂う嵐など知らぬまま再び闇へと溶けた。


残るのはただ、纏わりつくように暑く空虚な闇ばかり。



***
私にとっては夏は夜で森で緑で暗いらしい。青い空青い海輝く太陽はなんだか縁遠いです。
腐草為蛍(フソウホタルトナル)。時候の本を見せていただいてからこの言葉の存在を知りました。
本当は二週ほど前の時候なので遅いのですが(苦笑)恋し~のくだりは都都逸から。

某さまの時候イラストが素敵過ぎてこらえきれず妄想しました(白状)。

(6/30追記)
って言ってたらその某さまから件のイラストいただけちゃいましたぁああ!! やったあ私!!

72-hotaru.jpg

『トヨシマ』のメジロ先生からいただいた『腐草為蛍』のイラストですw
いっつも素敵なメジロ先生ワールドに萌え死ぬんじゃないかと思うほど妄想を掻き立てられてます。
そうして怒涛のごとく書いてしまうのです。毎回頑張ってみるんですが、いつもメジロ先生には負けます。
言葉を尽くしても作品の奥深さに到達できず悔しい思いをするわけですよ。うーん文章力欲しい。
それなのに時候イラストはいつも履歴に残さず消してしまわれるというとんでもない所業! (ぷんぷん!)
こんなに素敵なのに! もう少し惜しんで欲しいと思わずにはいられません! (ぷんぷん!)

期間限定の素敵な時候イラストが掲載中の『トヨシマ』は、サイトのリンクから飛べますw

(8/3追記)
そしてこのイラストとSSをご覧になった某さまからSSいただいちゃいました!!

***

蝉鳴断続







哭き叫べ




聲枯し
涙枯れ果て
咽潰し

血反吐く迄




愛を乞え







恋シ焦ガレテ啼ク蝉ヨリモ

啼カヌ螢ガ身ヲ焦ガス





俺が欲しいんだろう


***
うわああ! なんていうんですかね、この余計なものを全て削ぎ落とした上に宿る美しい響き! 削り出される言霊の艶かしさ!! この『蝉』の文字がうちでは出ない旧字体なのがすごく悔しいです! そのままのフォントの奥ゆかしさを提供したかった・・・!! 

このSSが唐突に送られてきて、ズッキュゥゥゥウウン!! と胸を打ちぬかれた心地でした!!
SSとイラストの両方から発想を得たとの事で、当方とメジロ先生の手元にも送られたのです。現在は当方のみでイラストを掲載させていただいたので、役得で許可をいただき掲載いたしました。やったね私!

さすが某さまは言葉の使い方が違うよねー、とメジロ先生ともども頷きあった次第であります。
これで絵も上手いなんて素敵すぎる。またください!
ありがとうございました某さまw←言っちゃったw
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