旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
そうして、渡米した先で私は実感した。
ヒル魔くんの言葉は嘘ではなかった。
データ整理は二人でこなしたし、それ以外の細かな作業はまもり一人で十分だった。
個々の自己管理能力が高いメンバーが揃ったおかげで過剰に気を張る必要もない。
応援席で日本側の手伝いをしてくれた雪光くんと石丸くんのおかげで走り回ることも少なかったし。
ヒル魔くんから借り受けたパソコンでHPの更新を終え、一息つく。
とうとう4強までやってきた。
次のドイツは実力的に拮抗する相手だけれど、ヒル魔くんの判断によればおそらく七割強の確率で勝てるだろう、と言っていたし、決勝でアメリカと戦うことになるのは明白だった。
日本にいるときからまとめていたアメリカのデータ資料を捲っていたら、シャワーを終えた鈴音ちゃんがひょこりと顔を出した。
「やー、まも姐お先でした!」
「もっとゆっくりでもいいのよ?」
「私いっつもこうなんだもん」
カラスの行水なの、と笑う鈴音ちゃんは屈託ない。
そうして、アメリカの資料を見ていた私に気づいて小首をかしげた。
「ドイツじゃないの?」
「うん、ドイツにはヒル魔くんが勝てそう、って言ったから」
でも皆には内緒よ、と言えば鈴音ちゃんはこっくりと頷いた。
屈託なく明るいけど、鈴音ちゃんは決して約束を破るような子じゃない。
「妖兄、まも姐のこと頼ってるよねー」
「そうかしら。私の方が頼りっきりって気がするわ」
結局このデータは最終的に彼がほとんどまとめたのだし。
そう言ったけれど鈴音ちゃんはだって、と声を上げる。
「アメフト協会の理事長がマネージャーのこと打診したら、妖兄がまも姐だけでいいって言ったって」
「それはほら、短い期間だから」
「そうかな? チアだって他の時間空いてるから手伝えるんだよ?」
彼女たちは彼女たちで纏まって試合のないときは遊びに行っているようだけれど。
そうか、割り振ってやってもらうこともできたわけだ。
「もともと妖兄って仕事を自分でもやるけど、人に割り振るのも上手でしょ?」
「そうねえ」
「でも今回はまも姐だけに仕事させてるし。だから、妖兄はまも姐『だけ』を頼りにしてるんだよ!」
どうだ、と言わんばかりの鈴音ちゃんの指摘に私は苦笑した。
「やっぱり短い期間だから使いやすいほうを使ってるだけだと思うけど・・・」
呟いていたら、鈴音ちゃんがくしゃみをした。
「あら! やだ、鈴音ちゃん湯冷めしちゃうわ。ほらベッドに入って!」
何ならもう一回シャワー浴びる? と聞いたけど鈴音ちゃんはおとなしくベッドに入った。
そうして横たわりながらぱっちりとした瞳を一度瞬かせて声を上げる。
「あ、そうだ。まも姐だけを頼ってるって思った理由、もう一つあった」
「何?」
「妖兄、本気でプロ狙ってるんだよ」
その一言に私は息を飲む。鈴音ちゃんは気づかず、そのまま続けた。
「ミリタリア戦の時、キッドンとアゴンヌと三人で車で行ったでしょ?」
あの時、彼は一瞬手話で私に告げた。
『先に会場に行け。俺たちは糞ドレッドの車で行く』
と。それで私たちが行った時には彼らと共になぜだか鈴音ちゃんとセナもいたんだった。
「私たちはトランクに忍び込んだんだけど、そこで三人の話を聞いたの」
「あっぶない!」
「やー、ごめんごめん。でもほら、このとおり無事に戻ったし」
私の声に慌ててフォローを挟んで、鈴音ちゃんの声は続いた。
賞金はどうでもいい、けれどNFL入りだけは譲れない。
俺の実力的にこれが最後のチャンスだ、と言った、と。
「そのためにも、他の人を使って仕事させてってことを色々考えるより、まも姐を頼って自分は集中したいんだと思うよ」
「・・・ふうん」
それから適当に言葉を濁し、私はパソコンを手に立ち上がった。
<続>
ヒル魔くんの言葉は嘘ではなかった。
データ整理は二人でこなしたし、それ以外の細かな作業はまもり一人で十分だった。
個々の自己管理能力が高いメンバーが揃ったおかげで過剰に気を張る必要もない。
応援席で日本側の手伝いをしてくれた雪光くんと石丸くんのおかげで走り回ることも少なかったし。
ヒル魔くんから借り受けたパソコンでHPの更新を終え、一息つく。
とうとう4強までやってきた。
次のドイツは実力的に拮抗する相手だけれど、ヒル魔くんの判断によればおそらく七割強の確率で勝てるだろう、と言っていたし、決勝でアメリカと戦うことになるのは明白だった。
日本にいるときからまとめていたアメリカのデータ資料を捲っていたら、シャワーを終えた鈴音ちゃんがひょこりと顔を出した。
「やー、まも姐お先でした!」
「もっとゆっくりでもいいのよ?」
「私いっつもこうなんだもん」
カラスの行水なの、と笑う鈴音ちゃんは屈託ない。
そうして、アメリカの資料を見ていた私に気づいて小首をかしげた。
「ドイツじゃないの?」
「うん、ドイツにはヒル魔くんが勝てそう、って言ったから」
でも皆には内緒よ、と言えば鈴音ちゃんはこっくりと頷いた。
屈託なく明るいけど、鈴音ちゃんは決して約束を破るような子じゃない。
「妖兄、まも姐のこと頼ってるよねー」
「そうかしら。私の方が頼りっきりって気がするわ」
結局このデータは最終的に彼がほとんどまとめたのだし。
そう言ったけれど鈴音ちゃんはだって、と声を上げる。
「アメフト協会の理事長がマネージャーのこと打診したら、妖兄がまも姐だけでいいって言ったって」
「それはほら、短い期間だから」
「そうかな? チアだって他の時間空いてるから手伝えるんだよ?」
彼女たちは彼女たちで纏まって試合のないときは遊びに行っているようだけれど。
そうか、割り振ってやってもらうこともできたわけだ。
「もともと妖兄って仕事を自分でもやるけど、人に割り振るのも上手でしょ?」
「そうねえ」
「でも今回はまも姐だけに仕事させてるし。だから、妖兄はまも姐『だけ』を頼りにしてるんだよ!」
どうだ、と言わんばかりの鈴音ちゃんの指摘に私は苦笑した。
「やっぱり短い期間だから使いやすいほうを使ってるだけだと思うけど・・・」
呟いていたら、鈴音ちゃんがくしゃみをした。
「あら! やだ、鈴音ちゃん湯冷めしちゃうわ。ほらベッドに入って!」
何ならもう一回シャワー浴びる? と聞いたけど鈴音ちゃんはおとなしくベッドに入った。
そうして横たわりながらぱっちりとした瞳を一度瞬かせて声を上げる。
「あ、そうだ。まも姐だけを頼ってるって思った理由、もう一つあった」
「何?」
「妖兄、本気でプロ狙ってるんだよ」
その一言に私は息を飲む。鈴音ちゃんは気づかず、そのまま続けた。
「ミリタリア戦の時、キッドンとアゴンヌと三人で車で行ったでしょ?」
あの時、彼は一瞬手話で私に告げた。
『先に会場に行け。俺たちは糞ドレッドの車で行く』
と。それで私たちが行った時には彼らと共になぜだか鈴音ちゃんとセナもいたんだった。
「私たちはトランクに忍び込んだんだけど、そこで三人の話を聞いたの」
「あっぶない!」
「やー、ごめんごめん。でもほら、このとおり無事に戻ったし」
私の声に慌ててフォローを挟んで、鈴音ちゃんの声は続いた。
賞金はどうでもいい、けれどNFL入りだけは譲れない。
俺の実力的にこれが最後のチャンスだ、と言った、と。
「そのためにも、他の人を使って仕事させてってことを色々考えるより、まも姐を頼って自分は集中したいんだと思うよ」
「・・・ふうん」
それから適当に言葉を濁し、私はパソコンを手に立ち上がった。
<続>
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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