旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
私は再び声を掛ける気持ちにもなれず、俯いて自分の部屋に戻ろうとした。
「姉崎、もう戻るのか」
「え、ムサシくん」
意外に早い戻りに、私は瞬いたが、手の中の缶を見て察した。
ムサシくんが言い付かったのはどうやら缶コーヒーの買出しだったらしい。
同じ階の端にある自動販売機に行ったのなら戻りも早いのだろう。
室内の備え付けの冷蔵庫にあるだろうに、と呆れたら彼らの好むブラックはないとのこと。
「ついでだ、持って行け」
「え、これ」
明らかに二人が飲まない、ロイヤルミルクティの缶。
私の好きな飲み物の一つ。
「ありがとう。お金・・・」
「ついでだからいい。返されても俺たちは飲めないしな」
手を振るムサシくんにもう一度ありがとうと言って、私は缶を受け取った。
「姉崎、何か悩みでもあるのか?」
「え? ・・・ううん、何も?」
ないとは言えないけど、それをムサシくんに言うのはお門違いな気がした。
大体、ヒル魔くんがどうしようと私とは関係ないのだから。
そう考えた途端、私の心臓がずくんと鈍く痛んだ。
「・・・それなら、いいが。あまり抱え込みすぎるんじゃないぞ」
頼れる兄貴、というのを体現するムサシくんに私は笑顔になる。
「うん、判ったわ」
それでやっとほっとしたように口角を上げて、ムサシくんは部屋へと戻っていく。
私も足早に部屋に戻ってそっと扉を開ける。
先ほどまで起きていた鈴音ちゃんはどうやら眠っているようだ。
起こさないようにそっと室内に入って、缶のプルトップを開ける。
ミルクティはどこまでも甘くて、優しい味だった。
結局、ドイツとの戦いはヒル魔くんが予想したとおり、当初こそ拮抗したけれど徐々に点差は開いて、最終的には勝利を収めた。
ヒル魔くんの予想通りに。そうなれば、今度はアメリカに勝利して、MVPも獲って。
アメリカに、残るんだろうか。
そう考えるたびに私の心は落ち着きなく跳ね回る。
一言聞けばいいだけなのだけれど、決勝戦に向けての練習と作戦会議に加えてなぜだか勃発した枕投げ大会とかで全ては有耶無耶にされてしまい。
結局当日になってしまった。
こうなればもう、私も選手もチアも、全員が一丸となって戦うことしか考えられない。
私は思考を切り替える。
私は日本代表のチームのマネージャー。
皆が勝利するために貢献する、そのために働く。
ヒル魔くんが他の誰にも譲らず分けさせなかった仕事を完遂する。
信用してくれた彼に、皆のために、なにより自分のために。
私は真っ直ぐにフィールドを見つめた。
歓声が聞こえる。
結局は勝利を収めたアメリカへの歓喜の歌声だ。
そうして、引き分けを良しとせず、最後まで戦うことを選択した勇敢なる日本にも、惜しみない祝福を含んだ歓声はいつまでも続いた。
ぐだぐだに疲れ果てた日本の選手たちが引き上げるのを、私は細々と動き回って助けた。
負けて悔しくない訳はない。
けれど、それ以上に嬉しくて誇らしかった。
ここまで戦い抜いた全員が、晴れ晴れとした顔でいることが。
そうして次への目標を持ち、高みを目指す気概を見せたことが。
関東アメフト協会の理事長からの労いを受けて、全員がホテルへと戻る。
荷物をまとめていたら、それをムサシくんと栗田くんが持ってくれた。
「え、いいわよ。これくらいなら私持てるわ」
疲れてるでしょう? そう言うのに二人は顔を見合わせて笑ってさっさと荷物を持っていってしまう。
「もう、ちょっと待って・・・」
「テメェはこっちだ糞マネ」
ぐい、と右腕を引かれて、気がついたときには私は無人になったロッカールームの中に引きずり込まれていた。
<続>
「姉崎、もう戻るのか」
「え、ムサシくん」
意外に早い戻りに、私は瞬いたが、手の中の缶を見て察した。
ムサシくんが言い付かったのはどうやら缶コーヒーの買出しだったらしい。
同じ階の端にある自動販売機に行ったのなら戻りも早いのだろう。
室内の備え付けの冷蔵庫にあるだろうに、と呆れたら彼らの好むブラックはないとのこと。
「ついでだ、持って行け」
「え、これ」
明らかに二人が飲まない、ロイヤルミルクティの缶。
私の好きな飲み物の一つ。
「ありがとう。お金・・・」
「ついでだからいい。返されても俺たちは飲めないしな」
手を振るムサシくんにもう一度ありがとうと言って、私は缶を受け取った。
「姉崎、何か悩みでもあるのか?」
「え? ・・・ううん、何も?」
ないとは言えないけど、それをムサシくんに言うのはお門違いな気がした。
大体、ヒル魔くんがどうしようと私とは関係ないのだから。
そう考えた途端、私の心臓がずくんと鈍く痛んだ。
「・・・それなら、いいが。あまり抱え込みすぎるんじゃないぞ」
頼れる兄貴、というのを体現するムサシくんに私は笑顔になる。
「うん、判ったわ」
それでやっとほっとしたように口角を上げて、ムサシくんは部屋へと戻っていく。
私も足早に部屋に戻ってそっと扉を開ける。
先ほどまで起きていた鈴音ちゃんはどうやら眠っているようだ。
起こさないようにそっと室内に入って、缶のプルトップを開ける。
ミルクティはどこまでも甘くて、優しい味だった。
結局、ドイツとの戦いはヒル魔くんが予想したとおり、当初こそ拮抗したけれど徐々に点差は開いて、最終的には勝利を収めた。
ヒル魔くんの予想通りに。そうなれば、今度はアメリカに勝利して、MVPも獲って。
アメリカに、残るんだろうか。
そう考えるたびに私の心は落ち着きなく跳ね回る。
一言聞けばいいだけなのだけれど、決勝戦に向けての練習と作戦会議に加えてなぜだか勃発した枕投げ大会とかで全ては有耶無耶にされてしまい。
結局当日になってしまった。
こうなればもう、私も選手もチアも、全員が一丸となって戦うことしか考えられない。
私は思考を切り替える。
私は日本代表のチームのマネージャー。
皆が勝利するために貢献する、そのために働く。
ヒル魔くんが他の誰にも譲らず分けさせなかった仕事を完遂する。
信用してくれた彼に、皆のために、なにより自分のために。
私は真っ直ぐにフィールドを見つめた。
歓声が聞こえる。
結局は勝利を収めたアメリカへの歓喜の歌声だ。
そうして、引き分けを良しとせず、最後まで戦うことを選択した勇敢なる日本にも、惜しみない祝福を含んだ歓声はいつまでも続いた。
ぐだぐだに疲れ果てた日本の選手たちが引き上げるのを、私は細々と動き回って助けた。
負けて悔しくない訳はない。
けれど、それ以上に嬉しくて誇らしかった。
ここまで戦い抜いた全員が、晴れ晴れとした顔でいることが。
そうして次への目標を持ち、高みを目指す気概を見せたことが。
関東アメフト協会の理事長からの労いを受けて、全員がホテルへと戻る。
荷物をまとめていたら、それをムサシくんと栗田くんが持ってくれた。
「え、いいわよ。これくらいなら私持てるわ」
疲れてるでしょう? そう言うのに二人は顔を見合わせて笑ってさっさと荷物を持っていってしまう。
「もう、ちょっと待って・・・」
「テメェはこっちだ糞マネ」
ぐい、と右腕を引かれて、気がついたときには私は無人になったロッカールームの中に引きずり込まれていた。
<続>
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
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性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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