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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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スポーツオブキングス

(社会人ヒルまも)


+ + + + + + + + + +
まもりは自分では一度も足を踏み入れたことのない場所に立っていた。
テンションの高い隣の男がまもりに説明よろしく声を掛けた。
「ほら、まもりちゃん。ここで馬を見るんだよ!」
「はぁ・・・」
正直、興味がない。
それでも目の前を人に引かれてぐるぐると歩いている馬はかわいらしくて。
「やっぱ馬券を買うならここで先に馬の調子を見なきゃダメなんだよ! そもそもね・・・」
男は入場時に買った競馬新聞を手に熱く語っている。
まもりはそれに生返事をしながら、やっぱり来るんじゃなかった、と何度目になるかわからない後悔を繰り返していた。


話は一週間ほど前に遡る。
絡み酒で有名な上司に度々飲みに誘われ、あまり断り続けるのも角が立つので、複数人であればとしぶしぶ応じた。
飲みに行った先でこの男と初めて顔をあわせた。
どうやら上司の飲み仲間らしい。そうして、彼はまもりのことをいたく気に入ったようだった。
まもりは噂に違わない上司の絡みっぷりにほとほと嫌気がさしていて。
極力上司を避けてその男と会話をしていたのが更に災いしたようだった。
彼は競馬が好きだと熱く語った。
まもりの身辺には競馬に興味を持つ者はいなかったので、その話は面白かった。
ただし、セクハラ混じりの上司の発言よりは、である。
そうして、今度一緒に行こうという誘いを酒の席の社交辞令程度で応じたのが裏目に出て。
男は額面どおりに受け取り、上司から連絡先を聞き出してきて強引に約束を取り付けたのだ。
一度応じてしまったのなら約束は約束、仕方ないと腹をくくってまもりはこの場にやってきた。


「ここで馬券を買うんだよ」
「はぁ」
あからさまにテンションの低いまもりにも、男は気づかず上機嫌で自らの馬券を買っている。
相当な金額を突っ込む様子は、いくら好きなのだと言っても到底理解できない。
まもりはお付き合いで適当にマークシートを埋め、教えられるままに馬券を買った。
そうして、競馬場に足を踏み入れる。
「あ・・・」
街中とは思えない、開けた場所がまもりを出迎える。
砂の走路が思った以上に間近に見えた。
見覚えのある、広い空。思わず振り返ると、座席に座る人々の姿。
「どうしたの?」
「あ、・・・いえ、なんでも」
少しばかり気が紛れた。ここは、アメフトの競技場に似ている。
酒やタバコの匂いが混じるのがなければ、もっと似ているだろう。
「ほら馬が出てきたよ」
「そうですね」
色とりどりの衣装を着た騎手を乗せて、馬たちがゲートに並んだ。
ファンファーレの後、一斉に走り出す馬。
「わぁ・・・!」
さすが走るために生まれた馬、その姿は美しかった。
思わず歓声を上げたまもりは、自分が買った馬券の順位などまったく気にせずただ走る馬を見つめた。
その様子が、わき目も振らずボールを追っている泥門の面々と重なり、あのときのことを懐かしく思う。
知らず浮かんだ笑みに、男はまもりが当てたのかと尋ねる。
まもりは手元の馬券を見て、まったく外れてますと肩をすくめた。
「まあまあ、次があるよ、次が! さ、パドックに行こう!」
男は慰めのつもりか、せっかくだから一度は当てたほうがいいよとしきりに口にする。
そういえばあなたは当たったんですか、と尋ねたが彼も当たらなかったらしい。
「俺は何度も来てるからいいんだけど、せっかく来たんだから楽しい思い出になるといいと思ってね!」
「はぁ」
そういうものか、と思ってパドックに向かって。
そのスクリーンに表示された馬の名に視線が釘付けになる。
サタンゴールド。
細い体とその名に思わず噴出しそうになってしまったが、慌ててこらえる。
「気に入った馬はいた?」
「ええ」
まもりは頷き、手元のシートのマークを塗りつぶした。


そうして。
そのレースは、大波乱の結末となった。
「畜生あんなんありかよ!!」
男が怒号を上げて外れた馬券をばら撒く。
が。
「あの・・・当たった、んですけど」
「何!?」
男の目が見開かれる。まもりの手には、確かに今し方終了したレースを寸分違わずに当てた馬券があって。
「ちょ・・・すごいね、それ!」
声を上げる男にまもりはかまわずにすぐ換金しに行き、電話を取り出す。
男が口を挟む前に、電話はつながった。
『なんだ』
「ヒル魔くん、私が今どこにいるかわかる?」
『当然。さっさと出て来いテメェ』
「まもりちゃん?」
『・・・その前に、隣の男に電話を代わって頂きマショウカネ』
そうして電話を渡された男は、見る間に青ざめてまもりの顔を見る。
まもりは笑みを浮かべた。
先ほどまでの曖昧な表情ではなく、決然とした美しい笑みを。


ほとんど投げ返されたと同じ電話を手に、まもりは足早に場外に出る。
ヒル魔は憮然とした表情でその前にいた。
彼も仕事帰りなのだろう、スーツを着ている。相変わらずネクタイはないけれど。
「遅い」
そう言いながらも、まもりの手をとり、引いていく。
「そんなに相手すんのが面倒ならとっとと連絡すりゃよかっただろ」
「だって、迷惑かと思ったの」
ヒル魔はそれにぴん、と片眉を上げる。
「今更だろ」
言外にまもりのことであれば厭わないという響き。
まもりは足取り軽くヒル魔の隣に並ぶ。
「迎えに来てくれてありがとう。お礼に、今日は私が奢るわね」
「ホー?」
まもりはふふふ、と笑ってヒル魔に擦り寄る。
「悪魔の加護があったのよ」
それにヒル魔は舌打ちしてまもりを抱き寄せた。
「今更気づくなんざ随分と遅ェ」


***
前半部分がほぼ実話です。うざかった・・・!! しかしネタが出来たからよしとしよう、うむ(前向き)。
ホントにサタンゴールドという名前の馬がいて、洒落で賭けたら当たったというオチでした(笑)
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