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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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夏色メルト(下)



+ + + + + + + + + +
通された和室で、他の受講生と混じって練習をする。
平日の昼間という時間帯もあるだろうが、随分と婀娜っぽい女性が多い。
ゆったりした空気の中であまり真剣に講習を受けようという様子でもない。
そんな中で躍起になって着付けを覚えるまもりはちょっと浮いてしまった。
そんなまもりには専門に一人講師がついてくれたので、より集中できる。
「はい、そこで帯の長い方を肩に掛けて、短い方をくぐらせるんですよ」
「こうですか?」
「そうですそうです。いい調子ですね」
元より飲み込みの早いまもりのこと、あっという間に着付けを覚えることが出来た。
ただ、やはり反復練習が大事だと言われて頷く。
「日頃から着ることが一番いいんですよ。是非お家でも練習なさってくださいね」
「ええ」
ただ、家には着物がない。
後で実家から送ってもらおうかな、と考えながらまもりは着物を脱ぎ、もう一度最初から着付けに取り組んだ。

そうして、着付け教室は恙無く終了した。
どうにかヒル魔に笑われない程度には着付けられるようになった、と胸を撫で下ろしたまもりは周囲の人を改めて見回す。
着付けが出来ないのではなく、着付けを忘れない程度に通っているような女性たちばかりが見受けられる。
どうやらよいところの奥様だったり夜の商売に勤しむ女性だったりするようだ、と朧気ながら理解した。
それくらい色香のある女性が数多い。
「それでは、何か質問がある方はいらっしゃいますかしら」
講習の最後に講師からそう声を掛けられる。
と、中でも一番婀娜っぽい女性がゆったりと手を上げた。
濡れたような艶を放つ唇がゆったりと告げた。
「先生。主人が私の着物姿に熱くなってしまうんですが、どうしたらよいかコツはありますか?」
まもりは一瞬、何のことかわからなかった。
暑いというのなら襟を抜くとか襦袢を薄手のものにするとか・・・と考えたのだが。
周囲の女性たちが俄然その質問に食いついて意味が違うのだと遅ればせながら理解する。
「そうそう、着物って脱ごうとしても綺麗に脱げないのよ」
「脱いでも補正のタオルの跡がついてたりして興ざめしちゃうし」
ねえ、と頷きあう女性たちの背後で、質問の正しい意味を察したまもりはなんてことを尋ねるのか、と顔を赤くして絶句した。
だが。
「そうですね」
受講生がごく普通にそんなことを尋ねるだけあって、講師の女性も平然と頷く。
そうして、ぐるりと受講生を見渡して口を開いた。
「ではよろしいですか? そういった場合には両膝をついて・・・」
目を丸くするまもりには頓着せず、講師はごく淡々と、いわゆる『夜の技巧』について語りだした。


「帰ったぞ」
ヒル魔が顔を出すと、まもりはどこか呆然とした様子で黙々と食事の用意をしていた。
いつかのピアス騒ぎの時のような様子に、ヒル魔の眉が僅かに寄る。
彼女が行ったのはごく普通の着付け教室でこういった様子になる理由が解せない。
「おい」
「あ、お帰りなさい」
やっと気づいてまもりはヒル魔に向かって笑みを浮かべた。
けれどどこかぎこちない。
「着付けは覚えられなかったんデスカ」
それで気鬱なのか、と問うたが。
「まさか! ちゃんと覚えました!」
大丈夫よ、と胸を張るまもりにそんな影はない。
「じゃあ腕前を披露してイタダキマショウカ」
「でも、私・・・着物は持ってきてないのよ」
それにヒル魔はどこからともなく取り出した袋を手渡す。
「着てみろ」
「え!?」
「せっかく覚えたんだから実践あるのみ、だろ」
けれど、まもりはその言葉に、真っ赤になって立ち尽くした。
「ア? なんだその反応」
「な、なんでも、ナイです」
実践ね、と呟いてまもりは袋を握り締めた。
まもりの予想外の反応にヒル魔は訝しむ。
喜ぶか戸惑うかなら判るが、なんでそんな風に照れるかが理解できない。
「・・・あの、今着なきゃ、だめ?」
「ホー? やっぱり着られないんじゃねぇのか?」
「そんなことはないんだけど・・・」
「けど?」
「・・・ちょっと待ってて」
胡乱な視線を向けられて、まもりは顔を赤くしたままぎくしゃくと自室へと向かう。
さっぱり訳がわからないヒル魔は、とりあえずまもりが出てくるのをただ待つしかなかったのだった。


さてその後。
まもりが習ったことの『実践』がどこまでだったかは二人だけが知る話。

***
つい先日カーラジオで聞いた話を元に書きました。習い事で実際にあった話の投稿だったようです。
日々是ネタ也。
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