旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
だいぶ時間が経ってしまった。
これをヒル魔くんに返してこなければ。
「パソコン、ヒル魔くんに返してくるね」
「うん」
「先に寝てていいから」
「やー、了解!」
ひらひらと手を振る鈴音ちゃんに見送られ、私は先ほどの言葉を思い返す。
『俺の実力的にこれが最後のチャンスだ』
ヒル魔くんの声でまざまざと脳裏に蘇る。
きっと軽い口調だったのだろうけれど、その想いは熱く、強いのだろう。
最後のチャンスと言ったって、まだトライアウトに挑戦するとか、正攻法でいかなければ手帳を使って自らをねじ込むことだって可能。
でも、彼は絶対に卑劣な手は使わない。
アメフトに関してはそうであると断言できる。
・・・ヒル魔くんは、プロの選手になりたいんだ。
当たり前だけれど、その事実を知って私は愕然とした。
だってプロの選手になるということは、アメリカにいるということだ。
アメリカにいるということは、日本に帰らないということ。
可能性はアメリカの両チームオフェンスディフェンスのメンバー全員を入れたところで44分の1。
いや、勝利チームから、という縛りなら22分の1、ということになる。
可能性としては低い。とてつもなく。
でも。
ゼロじゃない。そうしてゼロじゃなければ彼は、ヒル魔くんは、どんなにみっともなかろうがあがこうがかまわずそこを目指す。
間違いなく。
そうしたら、私は。
「・・・姉崎?」
「っ」
びく、と私は肩を揺らした。
気がつけば私は、ヒル魔くんとムサシくんが共に宿泊してる部屋の前で立ち尽くしていたようだった。
偶然扉を開けたらしいムサシくんが目を丸くしている。
「あ・・・」
「どうした。ヒル魔に用事か?」
「あ、うん。これ・・・」
パソコンを差し出せばムサシくんは肩をすくめた。
「中にいるから、直接渡してくれ。俺はこれから買出しなんでな」
「え」
するりと隣をすり抜け、ムサシくんはすたすたと歩いて行ってしまう。
私は先ほどまで考えていたことが気がかりで出来れば顔をあわせず部屋に戻りたかった。
けれど、入り口付近でのムサシくんとの会話は聞こえているだろう。
仕方ない、と腹をくくって私は室内に入った。
「ヒル魔くん」
「あ?」
「はい、これ返そうと思って」
パソコンを差し出せば、ヒル魔くんは今思い出した、というような顔をした。
珍しい。どちらかと言えば返すのが遅くて怒ることの方が多いのに。
けれどテーブルの上を見てすぐわかった。
ムサシくんとポーカーでもやっていたのだろう、テーブルの上にトランプが置かれている。
ヒル魔くんのカードを見て絶句。
「・・・ファイブカードなんて初めて見た」
「ケケケ」
キングが四枚、ジョーカー一枚。これは勝てないわ、と買出しに行ったムサシくんに同情する。
「ゲームもいいけど、夜更かししすぎないようにね」
「誰に言ってやがる」
早速パソコンを開き、何かを検索しだしたヒル魔くんに聞きたいことがあった。
けれど、思考は上滑りし、声が、出てこない。
用事を済ませたのに立ち尽くしている私にヒル魔くんが不審そうに声を掛ける。
「・・・糞マネ、どうした」
「え」
「言っておくが、糞ジジイは糞甘臭ェ代物なんざ買って来ねぇぞ」
「な、そんなこと考えてません! おやすみなさい!」
買出しのおこぼれを預かろうなんて考えてない、と言って私は慌てて足早に部屋を出る。
扉を閉めた途端、後悔した。
違う、こんな風に出たかったわけじゃない。
ただ、一言聞きたかったのに。
『ヒル魔くんは、アメリカに残るつもりなの?』
という、たった一言を。
でも今更戻れない。オートロックの扉は鍵なしには開かない。
一枚の扉が、それ以上に威圧感を持って私を拒んだ。
<続>
これをヒル魔くんに返してこなければ。
「パソコン、ヒル魔くんに返してくるね」
「うん」
「先に寝てていいから」
「やー、了解!」
ひらひらと手を振る鈴音ちゃんに見送られ、私は先ほどの言葉を思い返す。
『俺の実力的にこれが最後のチャンスだ』
ヒル魔くんの声でまざまざと脳裏に蘇る。
きっと軽い口調だったのだろうけれど、その想いは熱く、強いのだろう。
最後のチャンスと言ったって、まだトライアウトに挑戦するとか、正攻法でいかなければ手帳を使って自らをねじ込むことだって可能。
でも、彼は絶対に卑劣な手は使わない。
アメフトに関してはそうであると断言できる。
・・・ヒル魔くんは、プロの選手になりたいんだ。
当たり前だけれど、その事実を知って私は愕然とした。
だってプロの選手になるということは、アメリカにいるということだ。
アメリカにいるということは、日本に帰らないということ。
可能性はアメリカの両チームオフェンスディフェンスのメンバー全員を入れたところで44分の1。
いや、勝利チームから、という縛りなら22分の1、ということになる。
可能性としては低い。とてつもなく。
でも。
ゼロじゃない。そうしてゼロじゃなければ彼は、ヒル魔くんは、どんなにみっともなかろうがあがこうがかまわずそこを目指す。
間違いなく。
そうしたら、私は。
「・・・姉崎?」
「っ」
びく、と私は肩を揺らした。
気がつけば私は、ヒル魔くんとムサシくんが共に宿泊してる部屋の前で立ち尽くしていたようだった。
偶然扉を開けたらしいムサシくんが目を丸くしている。
「あ・・・」
「どうした。ヒル魔に用事か?」
「あ、うん。これ・・・」
パソコンを差し出せばムサシくんは肩をすくめた。
「中にいるから、直接渡してくれ。俺はこれから買出しなんでな」
「え」
するりと隣をすり抜け、ムサシくんはすたすたと歩いて行ってしまう。
私は先ほどまで考えていたことが気がかりで出来れば顔をあわせず部屋に戻りたかった。
けれど、入り口付近でのムサシくんとの会話は聞こえているだろう。
仕方ない、と腹をくくって私は室内に入った。
「ヒル魔くん」
「あ?」
「はい、これ返そうと思って」
パソコンを差し出せば、ヒル魔くんは今思い出した、というような顔をした。
珍しい。どちらかと言えば返すのが遅くて怒ることの方が多いのに。
けれどテーブルの上を見てすぐわかった。
ムサシくんとポーカーでもやっていたのだろう、テーブルの上にトランプが置かれている。
ヒル魔くんのカードを見て絶句。
「・・・ファイブカードなんて初めて見た」
「ケケケ」
キングが四枚、ジョーカー一枚。これは勝てないわ、と買出しに行ったムサシくんに同情する。
「ゲームもいいけど、夜更かししすぎないようにね」
「誰に言ってやがる」
早速パソコンを開き、何かを検索しだしたヒル魔くんに聞きたいことがあった。
けれど、思考は上滑りし、声が、出てこない。
用事を済ませたのに立ち尽くしている私にヒル魔くんが不審そうに声を掛ける。
「・・・糞マネ、どうした」
「え」
「言っておくが、糞ジジイは糞甘臭ェ代物なんざ買って来ねぇぞ」
「な、そんなこと考えてません! おやすみなさい!」
買出しのおこぼれを預かろうなんて考えてない、と言って私は慌てて足早に部屋を出る。
扉を閉めた途端、後悔した。
違う、こんな風に出たかったわけじゃない。
ただ、一言聞きたかったのに。
『ヒル魔くんは、アメリカに残るつもりなの?』
という、たった一言を。
でも今更戻れない。オートロックの扉は鍵なしには開かない。
一枚の扉が、それ以上に威圧感を持って私を拒んだ。
<続>
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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