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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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11.悲しいくらい血の味がする

(ヒルまも)

+ + + + + + + + + +
彼を目の前にして怖いと思ったのは、初めてだった。

「・・・ッ」
精一杯の力で突き飛ばそうとした胸は、細身であろうとも鍛えられていて。
女の腕では到底敵うはずのない強固さをまざまざと知らしめた。
ヒル魔くんの右手は私の頬に。左手は私の右腕を掴んでいる。
「・・・なんでこんなことするの」
せめてもの抵抗で、胸から視線を上げ、相手の目を睨みつける。
絞り出した声はほとんど涙で滲んでいたが、相手はちゃんと聞き取ったようだ。
人外のような形の耳は、幽かな物音さえ聞き落とさない。
もしかしたら今の私の鼓動まで聞き取れるかも、とまで思えた。
「無理矢理は趣味じゃねぇんだけどな」
「うそ」
にやりと笑って見せた彼の唇の端に鮮やかな赤。
今さっきまで彼の唇は、私のそれに重ねられていた。
触れるだけではなく、咥内を犯し奥底まで暴くような深いキス。
苦しくてたまらなくなって、口中を這い回る舌に歯を立てた。
「こんなんじゃ物足りねぇよ」
見せつけるように傷ついた舌をべろりと出してくる。先端近くに小さな傷があって、そこから血が滲んでいる。
それがまたゆっくりと近づいてきて、私は視線を逸らさず顎を引いて抵抗する。
「嫌よ」
「聞こえねぇな」
私のかすかな抵抗なんて軽く聞き流し、かがみ込んできたヒル魔くんと額が触れる。
近くなりすぎてヒル魔くんの顔に焦点が合わない。
頬に置かれていた手が私の顎を掴んで仰向かせ、抵抗の声を出そうとする唇を塞いだ。

嫌なのよ。
だって、触れる手のひらは熱い。
腕を引かれ抱き寄せられた胸からは鼓動。
そして重ねられた唇からは血の味がする。
そんなこと知りたくないの。

彼の身体が悪魔のものなどではなく。
あたたかな血の通った『人』のものなんだって、知りたくなかったの。


――――――――それが今、こんなにも、怖い。



***
当初この題だと三兄弟かセナしか出てこなくて、これじゃヒルまもブログの看板に偽りアリだろうとキスさせてみました。なんて安易な。そして噛まれるヒル魔さん。なんてベタな。
時間軸では白秋戦前。
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