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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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2/22にアップしたヒルまもパロ小説の続きを書いてみました。

・まもりが子供
・ヒル魔が人外
・まだ続くらしい

というのが許せる方は『つづきはこちら』からどうぞ。


+ + + + + + + + + +
ここは天空の楼閣。一年中桜が咲き乱れ、一度足を踏み入れたなら、ここは天国だろうかと錯覚するほどの美しい場所。

桜の木々の合間から、茶色い髪に青い瞳の少女が姿を現す。
だぼだぼの黒服の袖を捲った両手には、たくさんの洗濯物が入った駕籠。
よろよろしながらもなんとか目的地まで到達し、駕籠を下ろした。
「・・・こ、これで・・・最後っ!」
物干し竿にはこれでもか、というほど大量の服がはためいている。
「よーっし、がんばるぞ!」
まもりは掃除中に見つけた踏み台を使いながら、洗濯物を器用に干し始めた。

「・・・ふー」
洗濯物を干し終え、まもりは駕籠と踏み台を抱えながら屋敷へと戻る。だだっぴろい屋敷はゴミ屋敷かと思うほど汚れていて、綺麗な景色に本当に似つかわしくない。まもりがここに来てから数日が経過したが、屋敷の中は一向に片づかない。けれど一部屋ずつ片づければいつかは終わるだろう、と諦めることなく彼女は黙々と働いていた。
「・・・あっ」
不意に足下にあった小石に躓き、まもりはバランスを崩す。ただでさえ小さな身体には不似合いな荷物を抱えていたのだ。
身体がふわりと投げ出される。洗濯物を干した後で良かった、とそんなことを思っていたのに、次に来るべき衝撃がない。
「・・・?」
「大丈夫か」
ヒル魔のではない声と腕に、まもりはぱちぱちと瞬きをする。
見上げれば、そこにはガタイのいい男がうっそりと立っていた。
「あ・・・ありがとうござい、ます」
「ん」
まもりを手のひらで軽く支えた腕も、太く逞しい。落ちた駕籠と踏み台を拾おうとすると、それを制して彼が持ち上げる。
「あの、私が持ちます」
男は飄々とした様子で口を開く。
「いや、いい。それよりも、ヒル魔を呼んで欲しいんだが」
「は、はい!」
まもりは駆けだして、そしてそのままの勢いですぐに彼の足下に戻る。
「すみません! あの、おきゃくさまのお名前を教えて頂けますか?」
少し目を見開いた彼は、その後静かに笑う。
「ムサシが来た、と伝えてくれ。俺は客間にいる」
勝手知ったるという風情の彼にまもりは頷くと、今度こそヒル魔の元へ走っていく。それを微笑まし気に見送った後、ムサシは客間へと足を向けた。

「おう、ジジイじゃねぇか。なんの用だ」
顔を見るなりこの一言。相変わらず口の悪い男だ、とは思うが口にはしない。
口にしたところで流されても揚げ足を取られてもろくな事にならないのはいつものことだ。
「あの子供はなんだ」
「山に落ちてたから拾ってきた」
簡潔な言葉にムサシはため息をつく。補足を求めると面倒そうに口を開いた。
「ここのところ地上が干ばつだったのは知ってるだろ。口減らしで山に捨てられてた。ったくあの雷神野郎め、すーぐ手ェ抜きやがる」
「仕方ねぇだろ、そういう時期なんだから」
「テメェもだジジイ!」
仲がいいのか悪いのか、険悪そうなそうでもないような雰囲気に、困ったようにまもりは戸口でうろうろしていた。
と、後ろからやって来た犬―――ケルベロスという名だそうだ―――がぐいっと扉を押し開けた。
「ん?」
「あ、あの・・・お茶をおもちしました」
「ああ、すまないな」
ちいさな身体に不似合いな盆で茶飲み道具を運ぶ手つきが危なっかしいが、思わず手を出そうとしたムサシにヒル魔の視線が刺さる。
黙ってやらせろ。
そう目で言われると何も出来ず。じっと給仕を待つ。
まもりは卓に盆を載せると、その後は手際よくお茶を用意して二人の目の前に並べた。
「お前も一緒に休憩しろ」
「はい」
ヒル魔の隣にちょこんと座る彼女の姿を見て、ムサシは顔をほころばせる。
それが優しそうで、まもりもつられてにっこりと笑った。
「ロリコンか、ジジイ」
「お前だろ、それは」
二人の様子をからかうヒル魔の足下にはケルベロスがうずくまっている。
「嬢ちゃん、名前はなんていうんだ?」
「まもり、です」
「まもりか。いい名だな」
「ありがとうございます」
「で、なんでここにこの子を置いてるんだ?」
まもりと穏やかな会話をしていたと思ったら、不意にヒル魔へと言葉を投げかける。
「いい加減屋敷が狭くなったんで、掃除させてるんだよ」
「ほう。お前が、ねぇ・・・」
にやにやと笑われて、ヒル魔の眉間に皺が寄る。二人の会話が途切れたのを見計らって、まもりがムサシを呼ぶ。
「あの・・・ムサシさま、お聞きしてもいいですか?」
おずおずと掛けられた声にムサシの視線がまもりへと戻る。
「ああ」
「ムサシさまも、仙人様なのですか?」
「ん? ・・・いや、俺は仙人ではない。まもりはこの天空の世界のことは知ってるか?」
「いいえ、何も知りません」
ムサシが呆れたようにため息をついた。
「教えてやれよ」
「小間使いに教えてもしかたねぇだろ」
確かに小間使いなのだけれど。ヒル魔にあからさまに軽んじられて、まもりはしゅんと俯く。
「小間使い、ねぇ」
ムサシがまたにやりと笑った。
「お前の屋敷の物に触って無傷なのはこのまもり嬢ちゃんだけじゃないか?」
「え?」
その指摘にヒル魔の眉間の皺が更に深くなった。
「どういうことですか?」
「ヒル魔は片づけが壊滅的にダメでな。部屋は常時荒れ放題なんでたまに俺とかもう一人の数少ない友人が掃除しに来るが、大抵侵入者用に設置してある罠がひどくてあまり片づかないんだ」
数少ない、に力を込めたムサシにヒル魔は湯飲みを投げつける。が、ムサシは難なくかわす。
湯飲みが割れる音にまもりは首をすくめた。
「無駄話するなら帰れ、ジジイ」
「図星差されて怒るなよ。でな、今日もそのつもりで来たらお前さんがいるじゃないか。やっと弟子を取ったのか、って嬉しくなってなあ」
「弟子?」
「ジ・ジ・イ!」
ジャコン。
目の前に現れた黒光りするそれに、まもりは目を見開いた。
それって、銃というやつではないでしょうか。
地上には存在しない最悪の武器だって聞いたことがありますけど・・・!
「相変わらず物騒だな」
「余計なことばっかりゴシャゴシャ喋るからだ! 帰れ!!」
「弟子として登録するならちゃんと神殿に連れて来いよ。後見人になってやろう」
「黙れ!」
とうとう発砲しようとしたヒル魔に、まもりは慌てて抱きついて止める。その様子を見て銃口が目の前にあるにも関わらず、ムサシは大笑いして立ち上がった。
「そろそろお暇するか。まもり嬢ちゃん、茶ぁありがとな」
「あ、はい・・・」
ヒル魔の腰に抱きついたまま、まもりは律儀に頭を下げる。そんなまもりを張り付かせていてはヒル魔も動きがままならず、忌々しげに大きな舌打ちをしてムサシを見送ったのだった。

「・・・そろそろ離れろ、まもり」
「あっ! ごめんなさい」
唐突に来て唐突に去っていったムサシのマイペースさに唖然としていたら、ため息混じりにヒル魔に名を呼ばれて慌てて離れる。
「あの・・・」
まもりに上目遣いに見つめられて、ヒル魔はまた眉間に皺を寄せた。
「弟子、って何ですか?」
嫌そうな顔をしつつもヒル魔は教えてくれる。なんだかんだでまもりには優しいようだ。
「・・・仙人見習いの事だ。仙人の下について修行する。その間師匠の世話をすることが多いから、あのジジイは勘違いしやがった」
「私もなれますか?」
やっぱり来た、とばかりにものすごく嫌な顔をされたが、まもりはめげそうになりつつも言いつのった。
「私が、仙人になれたら、セナたちのこともヒル魔さまに頼らなくても助けられますよね?」
セナ。まもりの弟。
まもりがここでがんばる切っ掛けとなった大切な子。
「お前に素質があればなれるかもしれないが・・・どうだかな」
「なりたいです!」
間髪入れずに帰ってきた返事に、ヒル魔はため息をつきつつ立ち上がった。
黒い衣装の裾を翻し歩く先は庭の片隅。
「仙人になる基本は雲に乗ることだ」
「雲って、これですか?」
お布団みたいな大きさの白いふわふわしたのが目の前に浮いている。地上から見上げると大きくて、あの上で眠ったら気持ちいいだろうと思ったことがあるけど、目の前のは綿菓子みたいで美味しそうだ。
「言っておくが、食えないぞ」
「な、・・・食べません!」
「どうだか」
見透かされたのが恥ずかしくて大声を出してしまったが、ヒル魔はそんなまもりを放っておいて雲を手のひらで軽く押し下げてからひょいと乗った。
ヒル魔が術を使ったり仙人らしく振る舞うところは数日の間でもほとんどなかったから、やっと仙人らしいところを見てまもりは素直に感嘆する。
「・・・すごーい」
「基本だ、き・ほ・ん。これができりゃ弟子にしてやろう」
「本当ですか!?」
まもりも近くを漂っていた雲を捕まえようと手を伸ばす。
「まーでも普通の人間のガキには到底無理・・・」
だから諦めろ、と言おうとしたヒル魔の目の前で。
「わ、わ! すごーい、ふかふかー!!」
あっさりとまもりは雲の上に乗った。
ヒル魔は予想外のまもりの潜在能力と自分の迂闊さに、ただただ呆れるしかなかったのだった。


「弟子、ですよね!?」
目をキラキラと輝かせてこちらを見上げるまもりに、ヒル魔は正直頭痛を覚えたが約束してしまったことはしょうがない。
「何をしたらいいんでしょうか、師匠」
「師匠はヤメロ、気色悪ィ。今まで通り喋れ」
「はーい」
「とりあえずこの屋敷が片づくまでお前に教えることはねぇ」
「わかりました」
妙に聞き分けがいいな、と思っていたら、まもりはにっこりと笑う。
「片づけたら教えてもらえるんですよね!」
がんばります! と言うなり屋敷に駆けていったまもりにヒル魔は渋い顔をする。
あの分では一週間くらいで片づいてしまうのではないだろうか。
そうなったら何をどう教えようか。
弟子なんて取ったことがない上に修行も普通の段階を踏まなかった自覚のあるヒル魔は、今後の展開に頭を悩ませるのだった。

***
ご要望を頂いたので調子に乗って続きを書いてみました。
ヒル魔が名称に『糞』を付けないのは一応仙人だからです。そしてまもりに対しても多少甘い。
次は西部のあの人たちを出す予定。
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